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破:人生最高のデートについて

 最近出会ったサイコーな人間に想いを寄せ、約ひと月が経った先日、初めて彼と一日出かけた。目的地は千葉県のアウトレットモールだ。
 この日に至るまでに、私と彼は3〜4回ほど一緒に遊んでいた。2時間程度さく飲みをする日もあれば、終電を逃すまで飲んで喋ってともにタクシーで帰宅する日もあれば、共通の友人を交えてスポーツ観戦をする日もあった。
 たくさん遊んで会話を交わし、同じ時間を過ごすことで、彼に対する好意は増していた。し、話を聞いたり仕草を見ている限り、彼も私を好ましく思っているようだった。そんな状態で迎えたのがこの日だ。

 当日は、10時半ごろに待ち合わせをし、彼の車で目的地まで向かった。目的地までの道中に海ほたるがあったため、立ち寄って美味しいアイスを食べたり、暑い暑いと言いながら展望デッキに登り、海を見たりした。外に出た瞬間にアイスがどろどろに溶けて大慌てで食べたり、金属製のベンチを見てあんなの暑くて座れないよねと言ったりした。

 昼過ぎに目的地へ到着し、だだっ広い敷地内をぶらぶらまわりながら、お互いに欲しいものを物色した。お店の服にやいのやいの言ったり、気になる服があったら試着したり、面白い雑貨を見てあれこれ喋ったり。傍から見たら恋人同士のショッピングデートだっただろう。
 ショッピング中も、彼は優しかった。私は、さんざんっぱら悩んで無限に試着をし、そのくせ買わないという、同行者を苛立たせる服の買い方をするのだが、彼はそんな私に対して全く苛立った様子を見せず、私の気になるお店や服売り場に、とにかくついてきてくれた。口出しされることもなく、私のペースでゆっくりじっくり服を選べるのが、とても心地よかった。

 ショッピングの合間に、ハンバーガー屋さんで遅めの昼食を摂った。かぶりつけないほどの大きさのハンバーガーを見て食べ方をあれこれ考えたり、お互いのバーガーに入っている具材を交換したり、野菜について議論を交わしたり。美味しいご飯を食べながら楽しくお喋りをした。
 食後も残りのお店をまわったり、買った服の裾上げをしたりで、気づいたら夜の8時だった。夕方、まだ日が高いうちに買い物は終わるかなと思っていたら、ゆっくりお店を見るのが楽しすぎて、気づいたら空は真っ暗になっていた。

 駐車場に戻り、車に乗り、海でも見るかと言って、近くの海浜公園まで行った。夏の大三角形を探したり、星座なんてこじつけだよねと笑ったり、近くの空港から発着する飛行機を見えなくなるまで追いかけたり。何をするでもなくただ空を眺めてあれこれ言いながら、かなりの時間を過ごした。
 海浜公園から出たのが10時くらいだった。帰りも、特に目的はなかったが海ほたるに寄った。空いているお店が少ない中で煌々とあかりが灯っていたゲーセンに入り、ダメ元でUFOキャッチャーをしたらかなりの数のお菓子が取れた。次に彼が試した時は、何も取れなかった。
 またデッキに出て、昼とは違って涼しいねなんて言いながら、夜景や海や空を見た。ぶらぶら歩いていると、周りから「今日は流星群だ」という声が聞こえた。思えば、さっきまでいた海浜公園にも、芝生に寝転がって星を見ている人がかなりいた。気になって調べてみると、確かに今日は流星群だった。しかも、我々が海ほたるにいる今この時間が、流星群のピークらしい。
 そんな話をしながら空を見ていると、特大の流れ星が夜空を駆けた。周りからも歓声が上がる。この一体感が楽しくて、2人でデッキに寝転がりながら、流れ星の鑑賞をした。
 そもそも流れ星ってなんなんだろうと話しながら正体を調べたり、目の錯覚で見えた流れ星らしきものにも歓声をあげてしまったり、本物の流れ星が来たら「この短時間で願い事なんて言えないよ」と野次ったり、ここでも何をするでもない、ゆったりとした贅沢な時間を過ごした。

 周りから人がいなくなり始めた12時ごろに、我々は帰路についた。我が家と彼の家は近いため、車で家の前まで送ってもらった。

 降りる間際、私は彼に交際を申し込んだ。

 返事は保留となっているが、交際できたとしても振られたとしても、片思い中の相手と夏の晴れた日に海ほたるに行き、アウトレットを7時間ぐらい歩き回って買い物をし、寝転びながら流星群を見たというこの日は、一生忘れられないだろう。

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