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らんまん

【らんまん】

▶︎朝ドラ



【ちむどんどん】と【舞い上がれ!】は途中リタイアしたので【カムカムエヴリバディ】以来、久しぶりの朝ドラ。


主人公が男性なのも久しぶりで楽しみにしていた反面主人公が女性でこそ朝ドラという感じがあるのでおもしろいのか不安もあった。



まず気に入ったのがオープニング映像。
植物と植物の絵がとても美しくて朝にピッタリ(リアタイしていないけど)で素敵だったので初めからその綺麗な映像に惹かれた。
そして、あいみょんの「愛の花」も物語に寄り添った心に染みる曲で気に入った。



万太郎幼少期の第2週までは大きく心動くことなく視聴。幼少期はいつも子役ちゃんたちの可愛さにずっと見ていたいと思う恒例の時間。


第3週目に入って時代の大きな移り変わりとともに万太郎(神木隆之介)が植物学と出会い、恋を知りようやく物語が動き始めた気がする。

時代的に結婚が早かったこともあるからか
かなり序盤で登場人物それぞれの恋模様が描かれていて朝ドラってこんな感じだったっけ?と思った。
綾を演じる佐久間由衣と武雄を演じる志尊淳があまりにもスタイルが良くて美しいふたりなのでイマドキの若者という雰囲気が拭えず少し違和感はあったもののどんどんらんまんの世界に入り途中からはほとんど違和感を覚えなくなったかな。


半分ほどで退場するだろうと想像していたとおりにも関わらず、タキさん(松坂慶子)と武雄との別れは辛かった。
タキさんは命を全うしていなくなり、武雄は万太郎のそばにいるという役目を終えて自分の人生を歩くためにいなくなった。形は違うけれど、やっぱり万太郎にとっても物語にとっても、ものすごく大切なふたりだったのでタキさんの強いお言葉がなくなることも万太郎と武雄のやりとりが見れなくなることも寂しくてロスだった。


ただ、入れ替わりで万太郎の相棒となった寿恵子(浜辺美波)が本当にかわいくて美しくて救われた。
白無垢姿、似合いすぎて眼福だった。
そんな素敵な後半の始まりではあったけど結婚前夜にまつ(牧瀬里穂)が寿恵子を心配したように、寿恵子にはこれからたくさん苦しい思いをしなければいけない生活が待っているのだと思うとなんだか泣けてきたけれど。

植物学という当時としては未知の世界に飛び込んだ万太郎こそがたくさん苦しい思いをしただろうし、うまくいかないことがあったり辛いことがあった張本人だということはよくわかるのだけど、自分が女だからだろうか、どうしても寿恵子の気持ちになってしまう。
「愛の花」を聞くだけで泣けてしまう。
後半はそんなふたりの物語の始まりだった。

終わってみてわかったのは、生活は苦しかったけど寿恵子の心は苦しくなかったんだろうなってこと。
夫に尽くして家族を支えた妻だったのではなくて、大好きな人の力を信じて自分もその人を愛して応援し続けることを全うしただけ。万太郎から植物へ注ぐ愛と寿恵子から万太郎へ注ぐ愛は同じようなものだった。だから寿恵子にとって万太郎と駆け抜けた人生は自己犠牲でもなんでもなくてそういう意味では全く苦しくもなんともなかったんだと思う。ずっと自分の好きなものに賭け続けた万太郎の夢が自分の夢になっていた、ただそれだけ。



最終週に向かっての怒涛の子役出身者の出演ラッシュ。主役が神木隆之介だからこそだと思うけどなんか物語と切り離してもすごい感慨深い。(何者だよって感じですが。)
神木隆之介はもちろん、ちょっと出身は違うけど浜辺美波も小さい頃から頑張っている方で、そこに寺田心、濱田龍臣、本田望結そして中川大志という有名な子役出身者が続々と登場。みんな若いはずなのにすでに貫禄があって演技と存在感がずば抜けている。
そして最後の最後に宮崎あおいと再出演の松坂慶子。ナレーション俳優が出るのは恒例だからどこで出てくるか期待しながら楽しみにしていたけど、まさか松坂慶子が万太郎の祖母から娘として二役演じるとは。出てきて感動。




牧野富太郎という素晴らしい功績を残した世界的にも名を残す有名な人物をモデルにしているものの植物学者という世間的にはどうしても地味に見えてしまう分野の人生を描いていたから苦楽も内的なものが多くて物語としても、山は視聴者がわっと驚く発見ではなくて万太郎的にはすごい発見をしたことで表されていたし、谷は金銭的な家族の苦労とかで表されていて、ある意味ただの一家族の山あり谷ありレベルでしか動きがなくて最初から最後まで比較的穏やかで植物や家族はじめ愛に包まれた優しい物語だった。
峰屋での祖母の愛、母の愛、血の繋がらない綾の愛、ずっと側にいてくれた武雄の愛から始まり名教館で出会った先生や友との愛、東京に出てからの帝国大学で出会った人たちとの愛、十徳長屋で共に過ごした人たちとの愛、文通で繋がった人たちとの愛そして寿恵子と子どもたちへの愛。
それから寿恵子の大きすぎる万太郎への愛。
綾の夢を武雄が支えたり、田邊教授(要潤)の聡子(中田青渚)にしか見せない顔だったり、波多野(前原滉)と野宮(亀田佳明)の絆だったり、波多野と藤丸(前原瑞樹)の深い絆だったり…。
各所にあたたかい関係が描かれていた。
だからこそ、あたたかくて見ていてポロッと涙が出るのはいつも優しい涙だった。


寿恵子が万太郎と結婚したときに着ていた着物を千歳(遠藤さくら)が結婚するときに着ていたような家族特有の優しい繋がりとか、どこまで意図していたものかはわからないけれど物語と花言葉をリンクさせていたところとか演出に見える物語への愛も素敵だった。


史実では富太郎さんの研究のおかげで植物学が発展したことの代償として実家の酒蔵は廃業してしまったけど、物語では万太郎の繋いだ藤丸という新たな人との関係のおかげもあって綾と武雄の夢が実って素晴らしい新たな酒が出来上がった。
史実では富太郎さんは壽衛さんに植物図鑑の完成を見せることはできなかったし、壽衛さんが亡くなった後も長い間富太郎さんは生きて研究を続けた。でも、物語では万太郎と寿恵子はふたりで植物図鑑を完成させて寿恵子はそれを見届けることができた。見届けてから園ちゃんの元へ旅立って、それとともに物語も明るく幕を閉じた。
物語の中で万太郎と寿恵子に関して直接的に亡くなる描写はなかった。
これも演出に関わった人たちの富太郎さんと富太郎さんを生涯をかけて支えた壽衛さんへの愛だと受け取った。



朝向きの本当に素敵な物語で愛と平和に生きた万太郎と万太郎への愛を強い力に変えて生き抜いた寿恵子の生涯を覗き見た幸せな半年間だった。

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