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回復期リハ看護のための知識 〜視床出血の病態と看護〜

こんにちは。うなぎです。
自分の復習と学習も兼ねて、病態知識と看護についてまとめていきたいと思います。

今回のテーマ視床出血です。


視床の役割

間脳(視床、視床下部、松果体、脳下垂体)の一部。
種々の感覚伝導路の中継地。受け取った情報を分析統合し、大脳皮質へ伝える役割をもつ。
嗅覚は視床を経由しない、と言われていたが、近年、その一部は視床を中継することが報告された。
運動の発現や調整などに関する情報も、小脳や大脳基底核から視床を経由して運動に関連する皮質領野に伝えられる。

ポイント
・視床は間脳の一部
・運動や視覚、聴覚などの感覚の中継地点


視床出血

高血圧既往がある人に好発。
全脳出血の30%を占める。後大脳動脈から分岐する視床穿通動脈と視床膝状体動脈が破裂して起きることが多い。
頭部CTで視床部に高吸収域(白くなる)が見られる。
重症で予後不良。
視床の外側に内包があるため、一般に血腫除去術は対象外。水頭症により脳ヘルニアが切迫する場合、脳室ドレナージの適応となる。


症状(急性期)

頭痛
意識障害
対側の片麻痺
対側の感覚障害
眼球の内下方偏位(鼻先凝視)
縮瞳と対光反射の消失・減弱
視床性失語(優位半球が障害されたとき)


症状(回復期)

対側の片麻痺
対側の感覚障害(触覚、温痛覚、深部感覚の障害、異常感覚が多い)
視床性失語(理解や復唱は保たれるが自発語減少、声量低下、錯語、失名詞が出現)
失認
視床痛
半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害


視床出血の回復期看護

①血圧管理

リハや生活内での活動量増加により循環動態が変化するため、高血圧に要注意。
血圧モニター、排便コントロール、脱水予防など血圧変動要因を可能な限り取り除く。
JSH2019では、脳出血の降圧目標は130/80mmHg
訓練時の血圧にも配慮する。血圧の高値が続く場合は医師に報告し,降圧薬内服を検討する。
再発予防のための血圧管理や内服管理指導も必要。
患者自身で管理が行えない場合は、家族への指導も必要となる。


②運動障害に合わせた機能回復支援

麻痺や感覚障害の程度に合わせた自立支援。
麻痺が重度だとADL全般に介助を要することもあるため、患者の「できること」と「できないこと」の見極めが必要。
体力や痛みの程度に合わせ、できるところを増やしていく。

例)左上下肢麻痺によりトイレ動作に二人介助を要する場合
まず訓練内でPT、OTと一緒にトイレに座らせる。
介助が必要な要因を分析する。→筋力低下による立位保持困難なのか、重度麻痺により体を上手く使えていないのか、座位姿勢時の介助量から体幹バランスがいいのか悪いのか、高次脳機能障害により従命が困難なのか等
セラピストは障害に合わせたリハビリを訓練で実施。
看護師は分析した要因を踏まえ、生活内動作を実施する際に体の使い方や注意の向け方について繰り返し声掛けや補助をして指導する。


③高次能機能障害や失語の評価と支援

どのような障害が生じているのか、多職種と連携して評価することが必要。
理解力や認知力に合わせた支援方法を検討する。
失語の特徴としては理解力が保たれていることが多いが、注意障害により他者の話に注意を向けられないことにより理解ができない、ということもある。
その患者一人一人の症状を把握した上で援助方法を検討することが重要。



④安全管理

麻痺や感覚障害による身体機能障害
高次脳機能障害による認知機能障害
これらにより自身での安全管理が困難な場合がある。
前述した②、③を把握した上で、患者のADL拡大を促進し、かつ安全に生活ができる環境調整が必要。

例)自力での体位修正が困難だが、ベッド上で動いてしまい転落リスクがある場合
まず、なぜベッド上で動いてしまうのか、患者が何をしたいのかを把握する。
タンスの服が気になる、テレビのリモコンが欲しいなど、環境で調整できる理由であれば、患者が安全に活動できるような環境を整える。
痛みや不快刺激により激しく体動している場合は、不快刺激の除去に努める。
特に理由がない場合や意思疎通が困難な場合、環境を調整してもなお行動予測が困難で安全確保ができない場合は、離床センサーなどを使用して行動観察を行い、体動の理由把握に努める。


⑤メンタルケア

脳卒中後の患者の約30%がうつを合併すると言われている。
麻痺などによるボディイメージの変容に対するケアが必要。状況に応じて臨床心理士や精神科の介入も検討。
急性期からの早期転院だと意識レベルにムラがある。せん妄のコントロールや生活リズムの構築の支援を行う。



⑥退院支援と家族指導

患者の後遺症から、退院後にどのような生活を送るのかイメージし、退院支援を行う。

・退院先の確認
・主な支援者の確認
・自宅の場合、自宅環境の確認(写真や退院前訪問の実施)

これらは最低限必要。
患者の症状や家族の理解度に応じて、早期からの指導の実施も検討する。
特に運動障害が重くADL全般に介助を要することが予測される場合、ADL拡大を阻害する高次脳機能障害がある場合、失語症により特殊なコミュニケーション方法が必要になる場合などはこれに該当する。
可能であれば、退院前に外出・外泊訓練の実施も検討する。
また脳出血の再発予防には血圧コントロールが重要となるため、家族の支援を受ける場合は再発予防知識(内服管理や栄養管理、測定方法、緊急時の対応など)の指導を行う。



引用参考文献

高血圧治療ガイドライン2019.日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf
視床の機能とその臨床応用.嘉戸直樹.関西理学.6:47−49,2006
視床出血の高次脳機能障害.所和彦他.認知神経科学.5(1):14−18,2003
視床出血.岡庭豊.病気が見えるvol.7 脳・神経第1版:96−97.メディックメディア
脳出血.深町やよい.疾患ごとの看護実践が見える回復期リハディジーズ第1刷.和田玲編:77−90.学研

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