見出し画像

長く続ける

 高校で数学を教えている。日本評論社から出ている月刊誌『数学セミナー』に「エレガントな解答をもとむ」と題した問題が毎月2題ずつ掲載されている。正解者の名前が出題者の解答とともに掲載される。特に、賞金などもなく、名前が掲載されるだけだが、数学好きには解くこと自体が報酬になっていると思う。
 数か月前から問題を真剣に解きはじめ、解けるときもあれば難しすぎて手も足も出ないときもあるが、挑戦している。解ける(解答が発表される前までは解けたと自分が思っているだけだが)には自分の力では1題につき毎月、ほぼ3週間ほどかかる。毎日の生活の中で、数分の空き時間でもあればその時間を使って考え続けてだ。考えている時間は幸せな時間であり、解けなくても実際構わない。ちなみに解けたと思って解答をみると、正解者として名前を載せて頂いているにも関わらず、自分の解法とはまるで異なる解法であるときがいつもだ。学ぶことがまだまだある。
 人間の集中力が低下しているというニュースを目にすることがある。その理由はスマホなどの普及が原因のようだが、研究などが存在しているかなど真剣に調べたことはないので、どれほどの信憑性があるかわからない。もし、研究があればどなたか教えてください。しかし、高校の教壇にたっているものとして、肌感覚からも集中力は低下しているような気がする。「エレガントな解答をもとむ」の正解者は年代でカテゴライズして発表されるが、回答者の平均年齢はおそらく50~60代だと思う。30~40年前の同問題の解答者の平均年齢は20~30代ではなかろうか。きちんと調べていないが、この平均年齢の推移は集中力の低下とリンクしているような気もする。
 集中力を要して、長く考えることが人間にとってどのような効果があるかを今考えることは置いておくとして、長く考えることを楽しみとする人は減っているのだろうか。大学入試問題など数分から数十分で解ける問題ではなく、数週間単位を要する問題に取り組むこと。目先の結論に満足するのではなく考え続けること。楽しみにする人が増えてほしい。
 数学セミナー編集部の皆様や、「エレガントな解答をもとむ」の出題者の方々には毎月楽しい時間を過ごさせていただいているので感謝です。数学教師として将来出題者になるような人間を育てることも責務だと感じつつ、これからの教育にあたっていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?