見出し画像

前十字/後十字靭帯損傷 (解剖編)

膝のケガには半月板だとか、靭帯損傷/断裂であっても内側だとか外側だとかいろいろありますが、今回は前十字靭帯と後十字靭帯についてです。

まずは大まかな膝の解剖学から。

画像1

上の写真は右膝の骨格標本です。写真左が前面から、右が後面からみたところになります。下の写真は膝前面から見た際の各部位の名称になります。

画像2

Tendons (腱)

筋肉と骨を繋ぐ組織で、一般的によく知られているアキレス腱はふくらはぎの筋肉と踵の骨を繋ぐ組織です。腱に炎症が起こると腱炎となります。

大腿前面にある筋肉の大腿四頭筋が膝蓋骨(膝のお皿)を通り、膝蓋の下部から脛に付着している部分を膝蓋腱といいます。原理的にはからなので靭帯ともいえますが、大腿四頭筋の停止部が膝蓋骨上辺縁ではなく脛骨粗面であり、膝蓋骨はあくまでも腱の中にある種子骨であることから膝蓋腱という名前がついています。この標本にはありませんが、この他にも膝関節周りには多くの腱が走っています。

Ligaments (靭帯)

靭帯とは骨と骨を繋ぐ組織で、関節を包む関節包という組織とともに関節の可動域を制限して安定性を出している組織のことです。関節に大きく負担がかかるとストッパーの役割をしている靭帯に損傷もしくは断裂がおこります。いわゆる捻挫です。

膝の安定性に大きく関わる靭帯と言えば、内側/外側側副靭帯、前/後十字靭帯の4つです。

よく「内側(ないそく)切れた」とか「外側(がいそく)痛めた…」とかいうのは膝横にある側副靭帯のことを指しています。側副靭帯は関節の横のズレを制御しています。

前十字靭帯は膝蓋骨(膝のお皿)をちょっとずらして膝を曲げると…

画像3

脛骨の前面から出ているのがみえます。これが下の後面からみた写真でわかるように、大腿骨の外側顆後方にむかって付着しています。

画像4

後十字靭帯は逆に脛骨の後ろ側から大腿骨の内側顆前方に向かって付着しており、この二本の靭帯で十字に交差していることが名前の由来となっています。これらの十字靭帯は膝関節の前後と捻じれのズレの制御をしています。前十字靭帯は脛骨が前方にズレるのを制御し、また脛骨が内側に捻じれる(内旋)動きも制御しています。後十字靭帯は前十字とは逆に脛骨の後方および外旋のズレを制御しています。

Menisci (半月板)

半月板は半月というよりも三日月に近いですが、膝関節の間にある軟骨です。外縁が厚く、内縁に向かってカーブを描きながら薄くなっており断面は三角形のような形をしています。半月板はタッパーウェアのゴムパッキンのようにズレを減少したり、衝撃を吸収したりする役割があります。

画像5

内側の半月板は一部の内側側副靭帯とくっついており、内側側副靭帯を断裂してしまうようなケガをした際に、内側半月板も引き裂かれる形で損傷することがあります。


今回は膝の解剖について簡単にですがまとめました。次回は前十字靭帯や後十字靭帯の受傷機転(どのようにしてケガが起こるのか)と徒手検査(Special test)についてお話しします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?