3DSを売った

New3DSLLを売った。2021年にバッテリー交換と画面の修理をしたばかりで、まだまだ元気だったと思う。それでももうNewを名乗るにはいささか古びすぎていたが。

私が2023年まで3DS を持ち続けていたのは、うごくメモ帳3Dというソフトウェアのおかげだ。パラパラ漫画方式でアニメーションを作ることができるソフトで、今も現役で作品作りに使用している人も一定数いる。
私も中学生頃からうごくメモ帳3Dで下手なりにアニメーションを作っていた。そこで出会った人たちとSNSで繋がりを持ったこともある。彼らの一部は今、映像作家として仕事をしている。
真剣に取り組めば私も彼らみたいなクリエイターの仲間入りができたかもしれないと思うと、3DSを手放すことができなかった。数ヶ月に一度、息抜き程度にしか触らないにも関わらず。
部屋の片隅に置かれた使わない3DS と、真面目にアニメーションに向き合う仲間のSNS。
3DSは息抜きにすらならなくなった。
惰性で残していたSNSのアカウントを消した。

そのまま数ヶ月を過ごした2023年の12月、大掃除を始めてしばらく経った頃にふと「本体も手放そう」と思った。
そこからは早かった。パソコンに繋いでSDカードの中身を全て消去し、本体を初期化する。初代DSの頃から使っていたボロボロのタッチペンをゴミ袋に入れ、3DSは充電器と一緒に鞄に突っ込んだ。

その次の日、買取店に向かった。
3DSと充電ケーブルを直に掴み、店内に入る。カウンターにそれらを置くと、差し出された紙にインボイスの事業者ではないことを示すチェックを入れたのち、査定が始まった。
その間、私は10分ほどデュエル・マスターズのカードを眺めていた。デュエル・マスターズは知人にデッキを2つもらって半年に1度くらいの頻度で勝負(対戦?バトル?デュエル?正しい呼び方もわからない)をしている程度なので、カードのことは全くわからない。カードの絵柄だけを見て「GRの猫 ニャンニャン」というカードを購入するか少しだけ迷い、私が譲り受けたデッキに光属性のカードがないことを思い出して諦めた頃、カウンターに呼ばれる。

500円くらいで売れたらいいなと思っていたボロボロのゲーム機に、4500円の値がついた。

いつか手放したことを後悔するかも、という思いは期待の9倍の現金を前に簡単に揺らいだ。揺らいだと思いたかったのだろう。
店を出て「売ってみるもんだな」と小声で呟いた。あっけなかった。

私の代わりにゲームを楽しんでくれる人の手に3DS が渡ることを願って、この文章の終わりとする。

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