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まるで交換日記*赤い色のびっくり箱

もはや半世紀も過ぎると、親しい人とのあれこれのやりとりは、
生存確認といってもいいのかも知れない。

「元気でやってるよ」
「あなたはどう?」の繰り返し。

友人から赤いレターパックが届いた。

厚み制限のない方なので、いつも膨らんでいる。

封を開けるのにドキドキする。

さまざまなおやつ。

地元のものや、出かけた先や、
いただきもののおすそ分けとか。

彼女が美味しいと思ったものを送ってくれるので、
ハズレがない。

包装が可愛いかったり、素敵だったりするコーヒーや紅茶やお茶のパック。

きっと笑顔になれると思ったんだよね。

ホッとした時間のお供になる。

私には珍しいもの。

自分では絶対買わないような、彼女のお気に入りや好みのもの。
(でも彼女の冒険の品もあったりして)

今日は「きな粉・オレ」が入ってた。

彼女のお陰できな粉が好きになり、
ヨーグルトのトッピングにもなるし、手作りパンにも利用する。

何か生活の彩りになりそうなものや、美味しいものが入ってくる。

買い物している時に、何かをいただいた時に、
私のことを考えてくれるスペースが、彼女の頭の中にあることに感謝する。

それから、キレイな藍色のかや織ふきんが一枚入っていた。

食器拭きの時に気持ち盛り上がる美しいイラストの植物の模様。

ちゃんと私の好みを把握してる感じ。

私は私の好みを優先するかもなのに、彼女は誰かの好みを考える。

お互いにキッチンにいる時間は、
( もう生きている時間の多くを占めているなぁ ) と感慨深いかも 。

それから本が2冊入っていた。

( そうか、この本を読んだのね )

まるで交換日記のようにして、私の世界を広げてくれる。

さりげなく、娘さんの活躍が分かるフライヤーも入っている。

( もう、私たちはお母さんだったものね )と、
現実の苦労や心配を想像する。

年を重ねるごとに、自分よりも、家族や回りの人の心配が増えていき、
私もその心配事のひとりなのかな、と不思議な気持ちになる。

踊りだすようなレターパックに書かれた文字や、
隙あらばと貼り付けたシールに、
彼女の真っ直ぐな性格や可愛らしさや、愛される理由を考える。

お喋りがなくても、彼女の代わりにトイボックスのように、
突然あらわれたびっくり箱のように、
私の目の前に飛び出したあれこれが、元気と勇気を届けてくれる。

美味しくて、楽しくて、可愛らしくて、心と体に優しいものたち。

私を形作る小さな何かの固まりが、こうやって言葉になって降り注ぐ。

乾いた心をじんわりと満たす春の雨。

春になると雨がようやく増えてくる。

彼女はさながら桜雨のように私を慰める。

あのね、河津桜がようやく満開よ。

なんだか幸せな春のはじまり。



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