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破天荒バンザイ*猫沢家の一族


故郷・福島から東京、そしてパリへ―
遠く離れたからこそ見える、
いびつだけど愛おしい家族の形。
ユーモラスでときにせつない
ブラック・ファミリーヒストリー! 

破天荒で 規格外な 家族の記憶

集英社 猫沢エミ 最新エッセイ 「猫沢家の一族」 


猫沢エミさんの「猫沢家の一族」の帯に書かれてるコピーは
「笑って、ゆるして」の一言だ。

帯の文句って購買意欲をそそるための言葉が書かれているけれど、
この場合「笑って」というのが大きな主張をしている。

次に来る「ゆるして」に漠然とした不安と期待を持たせてくれる。

著者は現在パリに在住。

その理由は「今こそ自分の人生を生きるために」と帯には結ばれている。

家族問題や自分の置かれた環境や、日々の暮らしの中で
悩み苦しむことがある人は読んだ方がいいかも。

笑えるかどうかは保証できないが、少なくとも、
(ちょっと世の中ってバカバカしいんじゃない?)と気楽になれるからだ。

気楽と言ってしまって、猫沢さんに失礼にならないだろうか・・・。

私も(それなりに波乱万丈な人生ではないか)とか、
(一族に振り回されることが多くないか)と疑ったことがあるが、
序二段位だと分かった。

猫沢さんちはもちろん幕内だ。

このエッセイは、ただいまの大相撲大阪場所でいうところの、
新入幕で絶賛驀進中の、尊富士のような渾身の家族の歴史だ。

しかも髷の結えない2番手の大の里なんて、インタビュー画像を見ると、
日本語話者としての聞きやすさ、爽快な語り口にも若さを感じ、
そのにこやかな笑顔と、素直さがまばゆい。

お手上げだ。

2人の若者の将来にバンザイ。

子供は親を選べないし、親も子供を選べない。

縁あって親子となったからには、それぞれの形は人の数だけある。

日本人と思えない個性的な顔立ちの家族。

それぞれが常識から少し離れたところにいるのは、
もちろん裕福であったがゆえと、
自分で進む道を選べない昔々の時代感も重なり、
今の時代よりも諦めや、悟り、不憫さや、窮屈さなど、
あらゆるタイプの理不尽が、日常に跋扈していたせいだと思う。

悟りとは言いすぎかも知れない。

たぶんその時代に持っていた「開き直り精神」が旺盛な猫沢一族だ。

ひとつひとつの、エミさんの子供時代の記憶が、面白すぎる。

激しすぎるというべきか・・・。

我が家は「真面目で律儀」が家風ではあるが、親戚の中には、
「小さい頃おじいちゃんは血を吐きながら、廊下を這っていた」とか、
「しょっちゅう遊郭に生徒を連れて行くので、先生を首になった」とか、
「新築の際に調べたら、家が7回抵当に出たり入ったりしてた」とか、
秘密を抱えてる人が散見する。

どこのどのお宅でも、一族の中にひとり程度は世間の話題にのぼるような
問題児というのは存在しているし、華々しい活躍のものも存在している。

開いた口が塞がらない猫沢家の歴史に触れると、
(生きてると面白いことがたくさんありそうだな)と希望すら湧いてくる。

そうか、希望が欲しくなったら、読んだ方がいいエッセイ、
辛い時こそ読んだ方がいいエッセイとお薦めした方がいいのかも。

子供の眼というのは本当に汚れなく、見ていると思う。

これでもかこれでもか、が終わった後に、
最後に大きな秘密の開示まであり、
自分の悩みがバカらしくなること限りなし。

それにしても、お父さんのセリフ、衝撃的でした。

(うちの親戚にもいるわ、こういう人)という納得の、デジャヴ。

病院の先生に、
「は!?俺は生まれてこの方、一度たりとも家族はおろか、
他人のことなど考えたことはない!?」と言い切ってしまう。

はい、いますいます、そんなタイプ。

こういう人は、本人は本当に幸せなはず。

しかもちゃっかり成功するタイプ。

周りはどれだけ振り回されて、人間力を試されることか。

本を閉じた途端、もっと開き直って生きるべきと思いました。

散る桜 残る桜も 散る桜



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