【妊活】子供たちの絵

わたしは、実家から離れた場所で暮らしている。
だから当時、父や母とは、1シーズンか半年に1度くらいしか会わなかった。
 
周りの友達が、みんな「おばぁちゃん」になっていく中、なかなか孫の顔を見れない母は、
わたしに何度か子供について質問してきた。
最初は、親とあまりそういう話をしたくなくて、のらりくらりとかわしていたものの、
しつこく聞かれることをしんどく感じ始めたのと、
心配かけているんだろうな…という申し訳なさとで、
『病院へ通ってるよ』ということは伝えていた。
 
それ以降、母はあまり、そのことについて聞いてこなくなった。
 
あるとき、帰省していると、母がわたしを展覧会へ誘ってくれた。
チケットが安くで手に入ったし、わたしが美術館や博物館といった場所を好きなのを知っているから。
 
一緒に行くのが母だということもあり、どこの美術館なのかだけを聞き、それ以外は何も聞いていなかったわたしは、
美術館の入口に立った途端、呆然とした。
 
『世界の巨匠が描く子供たち』
 
確か、そんなようなタイトルの大きなポスターが貼られていた。
 
棒立ちでポスターを眺めるわたしを追い越し、母が美術館へ入っていく
慌てて追いかけるわたし。
 
受付にチケットを渡した母は振り返り、
「いつも一緒に美術館とか行くお友達は、子供が居なくてね。だからなんか誘いにくくて!」
そう言うと、意気揚々と進んでいった。
 
「子供がいないのは、わたしもだよ?」
そう思ったけど、
それよりも、
《あぁ、よかった。わたしはまだ、お母さんの目にツラそうには映ってないんだな》
そう思うと、すごく安心した。

巨匠の描く子供たちは
どれもこれも生き生きとしていて愛おしく
可愛らしかった
 
でもやっぱりちょっとツラくて、
美術館へ行って初めて
ポストカードも何も買わなかった。
 

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