境界知能と「闇バイト」のリスク
闇バイトに応募する人々がいる。
犯罪と知りつつも関わる人もいる一方で、「そんなものに手を出すなんて」と、まるで理解できない人も多い。
しかし、この「闇バイト」に引き寄せられる背景には、境界知能という特性が絡むことがある。
境界知能とは、一般的な知能指数(IQ)の範囲にギリギリ満たないか、あるいは非常に低いIQを持つ人々が該当する。
そして、知能障害には至らなくても、社会生活が困難で、自己判断力が不十分なために、こうした犯罪に加担してしまう場合も少なくない。
たとえば「ケーキの切れない非行少年たち」という本では、認知機能の弱さが、非行や犯罪に至る要因として指摘されている。
認知機能が弱いと、現実を正しく把握し、適切な行動を取ることが難しい。
普通の人が「これは明らかに怪しい」と思うことも、彼らにはそのように判断できない場合があるのだ。
境界知能の特性と闇バイト
境界知能の人々は、知的障害までには至らないが、通常の社会生活で多くの困難を抱える。
彼らは、他人の言葉の裏の意味や皮肉、社交辞令を理解するのが難しい。
また、目先の報酬に強く引きつけられ、長期的なリスクや将来の利益よりも、すぐ手に入る利益を優先しやすい傾向もある。
このような性質が、闇バイトのような犯罪的な仕事に応募する要因の一つとなる。
彼らは、勧誘者の言葉を鵜呑みにしやすく、「高収入」「簡単に稼げる」などの甘い言葉に引き寄せられやすい。
勧誘者に「怪しい」と疑いを抱くことなく、無意識のうちに深みにハマってしまうことがある。
そして、実際にその場に入ってから、「違う」と気づくことができないために抜け出せなくなることもある。
詐欺や闇バイトが巧妙であるのは、こうした特性を狙っているからであり、彼らの判断力の甘さを突かれる構造となっている。
自分の経験と重なる部分
私自身、双極性障害で鬱が酷かった時期、B型就労支援に通っていた。
そこには、私と同じように社会生活が難しいと感じる人たちが集まっていた。
境界知能を抱える人や、統合失調症の人など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々がいた。
彼らの中には、言葉のニュアンスがうまく伝わらなかったり、皮肉や社交辞令が理解できない人もいた。
また、「目の前のご褒美を追求する」といった一面もあり、すぐに利益が得られる仕事や楽しみには、強く引き寄せられる。
今思えば「自分がもし、もっと状況が厳しい中で闇バイトの誘いを受けていたら?」と考えてしまう。
そうした時、果たして「危険だ」「怪しい」と判断できるだろうか。
現実を正確に見つめ、冷静に判断することができなかったあの頃であれば、そうした誘惑に対して自制できるとは限らない。
社会から見放されるリスク
多くの場合、境界知能の人々が闇バイトや犯罪に関わると、社会から一層の疎外を受けることになる。
「自分で選んだ道だから自己責任」「悪いことはわかっていたはずだ」という厳しい意見も少なくない。
しかし、彼らの特性や困難さを考えると、判断が難しいのが現実だ。
犯罪に手を染めることが彼らにとっても深刻な危機であるのは事実だが、その背後には、適切な支援や理解が欠如している状況がある。
支援の必要性
境界知能の人々に対する支援体制が充実することで、こうした犯罪への加担を防ぐことが可能になるだろう。
例えば、社会で必要な判断力を養う教育や、生活指導を受けられる場所を増やすことが有効だと考えられている。
また、闇バイトなどの犯罪的な活動に関する知識を提供し、安易に応募してしまうことを防ぐ仕組みも重要である。
社会全体が、彼らに対する理解を深めることが、犯罪に巻き込まれるリスクを減らすことに繋がるはずだ。
最後に
境界知能を持つ人々や、精神的に不安定な状況にある人々に対して、我々はもう少し理解を示すべきである。
闇バイトのような危険な仕事に対して、単純に「自己責任」と片付けるのではなく、その背景にある困難さや課題に目を向けることで、彼らがより安全に社会生活を送るための支援体制を構築することが求められる。
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