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ヤンギャルの金魚のフン

ド平成、ギャル全盛期、私の友人はPopteenとRanzukiの愛読者だった。
小学生の頃から髪を染めていて、ネオンカラーのTシャツを着て、肌が白くて派手な子だった。学内では1個上のお姉ちゃんとセットで美人姉妹として有名で、野いちご(スターツ)から出版されたケータイ小説をいつも持っていて、眉は無く、Julietのシキラブを爆音で部屋中に垂れ流しながら、よくコムで電話を掛けてきた。

当時中学生の私は携帯電話を持っておらず、うちの固定電話は鳴りっぱなしだった。彼女はよく他校の男子と付き合っては別れ、付き合っては別れを繰り返してよく病んでいた。その度電話が掛かってくる。私はろくに恋愛をしたこともないくせに「それはその男が悪いよ!」なんて言いながらご機嫌取りをして済ましていた。

A4の大学ノートを究極にデコり、交換日記もした。一方的に突っ込まれ当たられ気まずい空気になると、私のごめんなさい爆弾は炸裂する。ノートいっぱいに自分の悪いところを書き殴ってごめんなさいごめんなさいごめんなさいと書きまくる。メンヘラの鏡である。トー横界隈とかそういった素敵な逃げ場所があるZ世代に生まれなくてマジでよかった。で、そういうことが起きる度、あっちが冷めて「ウザ、」となって、収まった。
しかし基本的には「ウチら、ズッ友だょ」といった類の言葉が散りばめてある。歴史遺産物だと思う。どこへやったかはもうわからない。

イオンに遊びに行ってプリクラを撮ると、必ず落書きの時に片目をグチャグチャな線で隠す。多分ポスカで書いたアイラインが当時のプリクラではちょうどよく盛れて可愛かった。バサバサの自睫毛に更につけまを重ねて、瞳はいづこという状態ではあったが。おまけのつけまと共に出てくるプリクラは、ちまちまハサミで切ってデカいやつを缶ペンケースに貼る。当時の私は化粧を一才しなかったのでコントラストの激しい一枚だったが、まあそれもよかった。

基本自己中なので、私の心労は察してはくれない。
なぜか意味のわからないところでキレられる。

レミオロメン「3月9日」の

ひとみを〜とじ〜れば〜あな〜たが〜
まぶたのぉ〜うらーにぃいるこぉとで〜〜〜

をリアルに想像した私が、「瞼の裏に人間張り付いてるのやばいね」と言ったらいじめられた。ウケる。

彼女は見た目に限らずやることも派手だった。
通学カバンの中身をみんなが見ている中廊下にぶちまけられた時は頭の中が真っ白になった。
まあ、でも、この子だし、仕方ないよね、
と自分の中で納得させていた。

他から見れば私はあの子の金魚のフンで、
なんであんなことされてまであの子と一緒にいるんだろうと、俯瞰して見れば思う。ただ、実を言うと簡単には切り離せない位の同情心(当時はかわいそう、なんて思っていたが簡単に人をかわいそうがってはいけない)が、「一緒にいたくない」を余裕で上回っていた。

大体今日みたいなダルくてぬるい季節になると思い出すのだ。鬱っぽい人が心に遊びをつくるとこういった類の記憶が大量になだれ込んでくるから、頭の中は基本的にいっぱいにしておくのがいい。

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