見出し画像

本当と嘘

その1



今日もひとりで歩いている。
1日の終わり、旅の終わりにそんな事を思う。
後影に映る足跡はひとり分。
逃げて、離れて、
また強くなったら会いましょう。
立派になったら会いましょう。
そんな事を勝手に考えてはひとり歩く夜、星空に話しかけた。
素敵な女性になれるように頑張ります。

あれから数年。
強くなることも、立派になることも、
素敵な女性になることもないまま、
ひとり歩きを続けています。


その2



会いたいのに、ずっと会えない人がいること。
時々会いたくなる人が、もう瞳に映らないこと。
たくさんの人と出会い、たくさんの人が遠くにいること。
また会いたい人たちがこの街にいないこと。
あの人みたいに、
今、会えている人もいつか会えなくなってしまうのだろうか。
もう会えないなんて言われてしまうのだろうか。
それともなにも言わずに消えていってしまうのだろうか。
好きや嫌いがあるように、
会いに行ったり、会うのをやめてみたり、
いろんな人が存在する。



その3



ときどき、寂しさに埋もれて
ときどき、動けなくなってしまう。
でも、ずっと、誰かと一緒にいることもできない。
ひとりの時間も必要。
どうしてこんなに寂しくなるのか、不安になるのか、
私が可笑しいのだろうか。
どうしてこんな感情が生まれてしまうのだろうか。
気持ち悪い。


その4



今日もまた目が腫れて、
もう誰にも会いたくない。


その5



あの公園は度々行く公園。
もう何年も前、好きな人があの公園で泣いていたのを覚えている。
会いたい人に、僕のせいで会えなくなってしまったのかもしれない、と、
泣いていた。
寂しいけれど、守らなければいけない人もいるから
強くいないといけないとも言っていたような気がする。
なぜ、君が泣くのだろう。
なぜ、そんなに寂しがっているのか当時は理解できなかった。
私も同じような状況だったけれど、
周りにいた人が守ってくれていたからだと、今になって気がついた。
周りの人が私の寂しさを隠していてくれていたのだ。
もう遅いかもしれないけれど、
あの時の君の寂しさが今は理解できる。
それから、その公園で度々会うようになって、
近くの家で、近くのバイト先で、同じ時間を多く過ごした。
一緒にいれなくなる未来があると知りながらも、
当時の私たちはそれでも良かったのだと思う。
互いの寂しさを、互いで埋めた。
それから、数日。
君に会うのはやめたはずなのに、
あの公園に私はいた。
泣きながら月を探した。
この滑り台の上から眺める月がお気に入りなんだと、
君が言っていたのを覚えている。
君のことはもう忘れていたのに、
その言葉だけが私の中に残っていた。
それから数年。
好きな人が私の後ろをついてきて、
あの公園にたどり着いた。
私が見えている景色は、君には映っていないだろう。
ブランコの柵に腰をかける姿、
キャッチボールをして、Tシャツに汗が滲んでいる姿。
すぐそこに、数年前の私が映し出された。
あれから、私は成長したのだろうか。
幸せになれているのだろうか。
君に会うのをやめて、それから別の君と同じ時間を過ごして。
もう別れなんか経験したくないと思っていたのに、
またこうして涙を流しているのはなぜだろうか。
幸せになんかなれやしない。
あの時の君のように
寂しさに埋もれている。

その6



いつからか会えなくなって、
物心ついた時には、その存在も覚えていなかった。


その7



今日も、ひとり歩く。
寂しいのも、不安なのも、
全て会えないその人のせいだと感じるようになった。
その人がいないから、
私にはその存在がなかったから、
こんなに寂しくて、
不安になってしまうんだ。
そうやって、
誰かのせいにしないと
明日は生きられないような気がするから。
私は本当に、その人に会いたいのだろうか。
本当のところ、わからない。
いま、に満足できなくなった時、
これから、の不安を預けたい時、
みんなは、その存在に肩を借りて生きてきたに違いない。
そんな事を考えてしまう。
腐り思考。
鎖思考。


その8



明日は晴れてください。


その9



もういいや。
会えなくても。
悲しくても。
寂しくても。
諦め思考。


その10



どこかに居場所をつくろう。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?