#3飲食店が始めるテイクアウトについて考えてみた

巣ごもりによって、惣菜や冷凍食品、即席めんなどの販売数が急増しているとのニュースが流れる中、街角の飲食店の店先でテイクアウトを始めているところも多数見かけるようになりました。

テイクアウトによって、店内で飲食できない分の売り上げを少しでも補完しようという飲食店も少なくはないと想像します。

飲食店が始める外販事業は、付け焼刃で始めてしまうとかえってお店の負担を大きくしたり、今まで築き上げてきたブランド(信頼)を失いかねないもろ刃の刃でもあると思います。

そこで、飲食店が始めるテイクアウト事業の最低限の準備事項等についてまとめてみます。

■テイクアウトを始めるにあたって

テイクアウトを始めるにあたっては、
1.容器等の準備(入れ物、お箸やお手拭き、持ち帰り用ビニール袋等)
2.商品の作成(内容物、販売価格)
3.販売方法の決定(販促物、販売場所、時間帯など)
最低限3つの用意が必要です。

テイクアウト専門店の場合、おおよそ原価率は50%程度といわれます。
飲食店の場合は30%程度で回しているところが大半を占めていると思うので、この点でまず商品選定をしたり販売方法を考えたりしないといけないです。

容器はモノによって価格は様々ですが、お弁当用の容器の場合、中の仕切りが少ないものの方が価格は安く抑えられます。
なので、のり弁や鮭弁、親子丼といったように、ご飯とおかずを一緒に盛り付けてしまえるものの方が手間もかからず費用も抑えられます。
百円均一のお店などでも販売されている簡単な行楽用弁当容器でも始められなくはないでしょう。
初めから大量に注文したり、業者とやり取りすると、ロット数が合わなかったり価格面で支障が出たり、納品してもらった弁当箱の保管場所がなかったりすることもあるので、まずは少量から初めて軌道にのってきたら専門業者との連携をするという順序をお勧めします。

これからのシーズンは暑くなるので、持って帰るまでに内容物が傷まないような工夫や、販売商品の選定も必要になってきます。ワサビシートのように、弁当箱の中に入れて腐敗を防止してくれるような備品を活用するのも一つの方法。
お客様がお弁当を買った後、どのくらいの時間でお弁当を食べるかはわかりません。販売の際には必ず「消費期限」や「本日●時までにお召し上がりください」といった声かけやラベル張りも大事です。消費期限については5日以内に消費した方がよい食材・惣菜(牛乳や精肉、サンドイッチ等)を販売する際に表示しなければならないと決められていますが、賞味期限に関しては本来は科学的な実験結果をもとに表示するのですが、お店によっては実際に自分たちで試してみて、どの程度保管が効いて美味しく安全に食べられるかを確認した上で決めているというところもあります。

ラベル貼付は必須ではありませんが、もし作り置きタイプのお弁当(コンビニ弁当のような)の場合は、必ず貼付しなければならないという義務があります。また販売先が店先ではなくスーパーやデパートなどのイベントブースでということであればさらに厳しい条件が提示される場合もあります。
参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/130621_gaiyo.pdf

・名称:一般的な名称
・原材料名:原材料に占める重量の割合の多い順に記載
・アレルゲンの表示:特定原材料は表示必須(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)、それに準ずる21品目は明記した方が望ましい
・添加物:添加物に占める重量の割合の多い順に記載
・内容量:グラムなどの単位を明記。
・消費期限・賞味期限
・保存方法
・製造者
最低限、この内容は記載(対面販売の場合でも、口頭で伝えた方が望ましい)をしないといけないものです。

販売価格に関して。販売する商品をどこでどのように販売するかによっても変わってきます。
通常の店内営業をしながら加えてテイクアウトもするということなら、店内商品と同じものを同じ価格で販売しているお店が多いようです。
仮にコロナの影響で店内販売がストップしていてテイクアウトだけをやっているという場合、先にも触れたようにテイクアウト専門店の原価率50%にはなかなか勝てないと思うので、やはり店内価格と同等か、若干の商品価値を付けて高めに販売するか、を選んでいるお店が多いと見受けます。
飲食店が始めるテイクアウト商品は、単なる販売用商品としてだけではなく、店内飲食へつながる「食べられる販促物」という色合いも強いので、将来の店内飲食につながる宣伝投資として実行されているお店オーナーもいます。事実、テイクアウトを始めてから店内飲食の単価が上がったという声もあるほどです。

■初めから軌道に乗るものではないということ

何事においてもそうだと思いますが、外販事業も始めて1か月や半年でいきなり成果が大きく出るというものではありません。最低でも1年~1年半という長い目で「PDCA」を回し続ける根気強さも必要です。

始めるにあたっては、やはり戦略をもってどんなテイクアウト商品を取り揃えて誰にどこでいくら販売するのか?を考えてから取り組んだ方がお店のプラスになると考えます。

資金繰りが大変な今だからこそ、テイクアウトという販促をお店の武器ととらえて店舗運営の戦略に組み込み、将来の売り上げを描いた融資計画を書こうとしている飲食店オーナーもいらっしゃいます。今だからこそ、飲食店の未来の姿をいろんな風に描き出したいと思ってやみません。