最初のポエム
初夏のさくらんぼ
私って顔より綺麗な身体の人が好きなんだよね
ぼくの頬を撫でながら彼女は言う
シングルベッドで無邪気な笑みをむけながら、悪魔のように優しい声で囁く
じっとりとした夜。明け方の雨が嘘のように引いて蒸し暑い
つけっぱなしのテレビからは、女性ニュースキャスターが、明日から梅雨明けです。と明るく言っている
そうなんだ…
ぼくの弱々しい声は彼女の声でかき消された
私ね、身体の汚い男は無理なの
優しい笑顔を張り付けたまま彼女は言放つ
ずっと一緒にいたいなら最高の男になってね
ぼくの不安な心を見透かすように、口の中のさくらんぼをコロコロと転がす
強くまっすぐで、誰よりも冷たい瞳でぼくの目をじっと見つめた
そう、ぼくの心は彼女の手の中にある、まるで糸の切れたマリオネットのように自由きままに踊り出す。クルクル、クルクルと踊り疲れて倒れるまで彼女の手の上で立派な道化でいるのだろう
最後はポイっとゴミ箱に捨てられても人形は彼女に泣いてありがとうと伝えるだろう
ゆっくりと優しい悪魔は微笑んだ
あなたって本当にバカだよね
彼女の口から移された小さな種は、蕩けるように甘くちょっとだけ酸っぱかった
ぼくの口からは、好きが漏れていた
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