モグラとぼく
お前、本当にバカで容量悪いな
ここで働き初めて何度言われた言葉だろう
もっと、頭使えよ
小馬鹿にしたように店長は僕を罵る
うるさい、お前に何がわかるんだよ!死んじまえ
そう投げつけたかったはずの口からは
すみません
と出ていた
しかも、半笑いで…今の僕は誰がみてもかっこ悪くて情けない奴だろう
夜の街が好きだ。それは昔から変わらない
キラキラ輝く街中を、居酒屋帰りのサラリーマンが肩で風を切りながら歩いてる。若者がバカ騒ぎしながら武勇伝を語ってる。仕事終わりのカップルが静かに愛を育んでいる
同じ街でも昼間とはまるで違う顔。それは一種の異世界に迷い込んだかのような感覚を覚える
僕はそんな夜の街が好きだった
でも、そこで仕事をするとなると話は変わる。キラキラしてるのは先っぽだけで
真っ黒い大人たちの欲望がうす汚くとぐろをまいている
みんな自分の心を満たすために他人を犠牲にしていくのだ
そして、それは僕も変わらない
僕が幸せになるために誰かを傷つけている
モグラのように先の見えない真っ暗な道をただ突き進んでる
その向こうに光がありますように
それだけを信じ願って今は前だけを突き進む
いつか誰かを幸せにするために
いつか隣で笑ってくれてる子の手を引いて歩けるように
僕は今日も、鏡に映る下手くそな笑顔に見送られながらネクタイを強く締めた
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