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ムーミンの本に関すること

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ムーミンの本について書いた記事
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#トーベ・ヤンソン

青い鳥文庫のムーミンだけにあるもの

昨日、ブックオフに行きました。私が見るコーナーは漫画、人文系、歴史系、そしてやっぱり児童書です。リンドグレーンの『川のほとりのおもしろ荘』を見つけたので買いました。岩波少年文庫のリンドグレーンの翻訳本は今は古本でしか買えないので貴重です。増刷してほしい!! さて、児童書コーナーにムーミンの青い鳥文庫があったのでぱらぱらと中を見てみると、巻末に「新装版によせて」と書かれた短いエッセイが掲載されていました。 以前「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内でも書きましたが、ムーミンの本

ムーミンパパとニョロニョロの旅はいつのこと?

ムーミンの物語の7作目の『ムーミン谷の仲間たち』の「ニョロニョロのひみつ」を読んでいて、ムーミンパパはいつニョロニョロと旅をしたのか、と疑問に思いました。ムーミンパパがニョロニョロについていくことについて、これより前の本に書いてあった記憶があったので探して考えてみました。 『小さなトロールと大きな洪水』および『ムーミンパパの思い出』に、以下のように言及されています。 「ニョロニョロのひみつ」には、パパが出て行ったことについて以下のように書いてあります。 「スナフキンのい

ブックオフのウルトラセールでムーミン絵本を購入(ちょっと謎あり)

ブックオフにて、1/1~1/4に本が全品20%オフになるウルトラセールが行われていたので近所のブックオフに行ってみました。徒歩圏内にブックオフがあるって、ありがたい。 そこで、ムーミン絵本『さびしがりやのクニット』と『ムーミン谷へのふしぎな旅』の翻訳本を見つけ、購入しました!! 2019年版に刊行された新版です。表紙はスウェーデン語原書と同じく全面が絵になっていて(最初に出た日本語訳は空白が多かったような…)、タイトルはスウェーデン語で書かれています。 表題に記載した謎

「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#9 こぼれ話:ムーミンと『聴く女』のつながり

少し日数が経ちましたが、「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内 第9回を公開していただきました。 数回前より、ムーミン以外の本を軸に書くことになり、まずアンソロジー、次に年代順に紹介しようと考え、前回『彫刻家の娘』(1968)について書いたので今回は『聴く女』(1971)について書きました。 紹介の切り口に悩みました 紹介する本は決まっていたのですが、切り口に悩みました。ムーミン完結の次の本ということもあり、ムーミンとの比較という見方をまず考えましたが、ムーミンの本と『聴く

【スウェーデン語】『ムーミン谷の十一月』でスナフキンが歩いた場所とは?「ödemark」再考

以前、『ムーミン谷の十一月』で、新旧訳が異なっている箇所について書きました。スナフキンがムーミン谷を後にし、「ödemark」を歩きますが、ödemarkは新訳では「荒れ地」旧訳では「ジャングル」になっています。 ödemarkを辞書で引くと、「人間の存在や活動の痕跡がない土地」とあり、Google翻訳でも「荒れ地」と出たので、荒れ地なのかな、と思っていましたが、安易な判断でした。Google翻訳は非常に便利ですが100%正しくはありません。 この点については、投稿してす

『ムーミン谷の彗星』の改訂で変わったこと:スニフはナイフを持っていた

結構前に、『ムーミン谷の彗星』は3つ版があり(2回改訂されている)、タイトルも違って内容にも違いがあるという話をしました。 手元にある2版目(1956年)と3版目(1968年)を見比べて見つけた小さな改訂箇所をメモしておきます。最初の最初で、スニフが「あたらしい道」を見つけたところです。スニフは場所を忘れないように目印をつけますが、その方法が異なります。 日本語訳の底本にもなっており、現在流布している3版目では、小枝を使っています。2版目との違いを明確にするために、新版の

『たのしいムーミン一家』の沼にはまる

今週は『たのしいムーミン一家』を読みに読んだ一週間でした。あらためてじっくり読んでみて、今までいかにあっさり読んでいたか気づかされました。 前後の作品ともっとも関係を持った作品であるがゆえに、少し矛盾もありました。 モランについて、「ムーミン谷であの女のすがたを見かけたのは、これが最後でした」と書かれているけど、『ムーミン谷の冬』でもムーミン谷にくるよなあ、とか。(『ムーミンパパ海へいく』では島で会う) ムーミンパパの自伝が出来上がっているけど、『ムーミンパパの思い出』

【スウェーデン語】ムーミン谷の自然:荒れ地(ödemark)とジャングル(djungel)

先週、フィンランドセンター主催の文学サロンに参加したことを書きました。 そこでは、日本語とスウェーデン語(トーベ・ヤンソンの母語・創作言語はスウェーデン語)で『ムーミン谷の十一月』の冒頭の朗読を聞く時間がありました。日本語で朗読されたのは旧訳で、私は2020年に刊行された新訳を見ながら聞きました。 その時に、旧訳では「ジャングル」となっている箇所が、新訳では「荒れ地」となっていることが気になりました。 ↓ 旧訳 ↓ 新訳 原文を見てみると、該当する単語は「ödema

2022.02.28フィンランドセンター主催の文学サロンに参加しました。

今週は、2/28(月)にオンライン開催されたフィンランドセンターの「文学サロン」に参加しました! カレワラを絵画で考えるということをしたことがなかったので、とても新鮮な刺激を受けました。 『ムーミン谷の十一月』は何回も読んでいますが、原書と日本語訳、両方の朗読を聞き比べて気になったことがあり、また読み直しています。 気になったことはすごくちょっとしたことですが、今日これ以上書く気持ちの余裕がないので…続きはまた来週。

「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#5のこぼれ話:ムーミン翻訳本の版による献辞・解説の違い

こんにちは。 先日、連載「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#5 を掲載していただきました。恐れ多くも、ヤンソンとゴーリーについて書きました。 今回はヤンソンの本に書かれている献辞に着目して展開しています。 原稿を書く前の調べものの段階で、本文には触れていないムーミンの翻訳の版による違いがわかったので、記録を残しておきます。 『ムーミン谷の夏まつり』と『ムーミンパパ海へいく』の献辞 改めてヤンソンの本を確認する過程で、ムーミンの本の献辞の書き方が版ごとに違うことがわかり

ホムサ・トフトと一緒にがんばる!:『ムーミン谷の十一月』の話

『ムーミン谷の十一月』をペラペラめくっていたときに、とっても些細なことですが、その時にホムサ・トフトに元気づけられたことを書きます! ホムサ・トフトは、『ムーミン谷の十一月』だけの登場人物です。彼は、ムーミンママに会いたくてムーミン谷を訪れましたが、家にムーミンたちはいませんでした。この本では、ヘムレンさん、フィリフヨンカ、スナフキン、ミムラねえさん、スクルッタおじさんもそれぞれ目的があって同様にムーミン谷にやってきます。彼ら6人は、しばらくムーミンの家で過ごします。 ホ

映画『TOVE/トーベ』の感想:短編「世界でいちばんさいごの竜」のこと、マヤとトゥーリッキのこと

公開に先立って試写会で鑑賞させていただいた映画『TOVE/トーベ』ですが、公開から1ヶ月経ってようやく映画館に足を運ぶことができました。 試写会で鑑賞したあとに書いた感想&紹介はウェブ連載「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内の第4回として以下で公開しています。 上の文章を書くにあたり、映画を観てたくさん感じたことや考えたことがあって、何をどう文章にするかかなり悩みました。悩みながらこれから鑑賞する方に向けた文章を書くうちに、文章から削ぎ落としたものが頭から遠のいていってしま

映画『TOVE/トーベ』の紹介記事を書きました!+映画を観て読みたくなった本

10月1日、映画『TOVE/トーベ』がついに日本で公開されます。 ビネバル出版/北欧留学情報センターのnoteで連載している「『トーベヤンソンを知る』読書案内」にて、この映画の紹介記事を書きました。貴重な機会をいただき、たいへんありがたいです。 紹介記事は、以下の4つのポイントでまとめています。 ・若き日のトーベ・ヤンソンを多面的に描く ・二人の恋人とムーミン ・パーティーで表現されるトーベの感情 ・映画が伝えるもの 映画鑑賞の前後に、お読みいただけたら幸いです。 さ

最近感じたこととトーベ・ヤンソンの言葉たち:なくしたものはもう一度、よい出来事は何度でも

20代の頃は怒りっぽい性格でしたが、最近は負の感情を不要に抱きたくない、と思っています。もちろん、時には怒ることも必要ですが、それは本当に必要な時、「ここぞ」という時だけにしたいです。 そんなことを考えていたら、トーベ・ヤンソンの短編「嵐」(1971年)を思い出しました。 夜中の嵐を1人部屋で過ごす女性を描く、非常に短い作品です。作品の終盤で、嵐が吹き込んでめちゃくちゃになった部屋で誰かと電話で話します。描かれる視点は主人公側のみで、電話の相手が話した内容はわからない書き