フェミニズムを定義する

皆さんこんにちは。ふぃるです。
約一年ほど、twitterのフェミニストとアンチフェミニストが激戦を繰り広げる界隈にいます。

実は元々、余りジェンダーのテーマに興味があった訳ではありませんでした。
しかし、この界隈の論争には、強者と弱者、保守と革新といった、現代の政治哲学のエッセンスが詰まっています。

しかも、それがアカデミアで衒学的に語られるのではなく、どこかの漫画家が、社長が、弁護士や会計士が、主婦が、夜職が、科学者やエンジニアや工場労働者が、もちろん時には学者や作家も、喧々諤々と語るのです。

これ程、知的興奮を誘う環境があるでしょうか。

さて、簡単な自己紹介と、界隈のご紹介はこんなところで、本題に入っていきましょう。


上記では、さも魅力的な環境の様に書きましたが、実際のところ、罵詈雑言や屁理屈が飛び交う事も少なくありません。
いや、むしろ、その方が多いでしょう。知的な議論が成立する事は稀です。

先日私がとったアンケートでは、この様な結果が出ました。

私がアンチフェミニストである以上、「フェミニストである」という選択肢を選んだ方が少ない事は、余り重要な点ではありません。
(個人的にはフォロワーさんの傾向が知れて、有意義でしたが。)

問題は、フェミニズムへの賛否(選択肢1,2)よりも、フェミニストの振る舞いや、アンチフェミニストの振る舞いが気に入らない(選択肢3,4)という事に重きを置いた方が多いという事です。

では、何故議論が成立しないのでしょうか。
様々なレイヤーで、様々な要因があると思いますが、大きな問題の一つに言葉の定義で揉めるというものがあります。

そもそも界隈は肯定するにしろ、否定するにしろ"フェミニズム"を大きな軸として議論がなされている訳ですが、この"フェミニズム"の定義からして大変曖昧なのです。

そうすると何が起きるかと言うと
1. どう考えてもアンチフェミニズムな主張しかしていない人が、フェミニズムには反対では無いと言い出す。
2. どう考えてもフェミニズムな主張をしている人が、自分はフェミニストでは無いと言い出す。
3. 「フェミニストであればこう考えるべきだ」という批判が為されるが、本当にそうなのかは常に闇の中。
4. 「他のフェミニストはフェミニズムに基づいてこうだと言った」と言っても「フェミニズムは一人一派で、整合性は担保されない」と返ってくる。
みたいな事が起きます。

その状況では、つまりフェミニズムに基づくとか、賛成するとか、反対するとか、そういった言及は、全て無価値になってしまいます。

そこで私は思いました。「では、私がフェミニズムを定義しよう」と。
もちろん、フェミニズムを私の一存で定義しようという態度は、非常に乱暴です。
ただ、それが気になるならば「ふぃるのフェミニズム定義」と呼んで頂ければ良いのです。

そして、私が行いたいのは、"フェミニズム"を悪魔化する事でも、神格化する事でもなく、なるべく現在フェミニストを名乗っている方が違和感無く受け入れられる内容であり、且つ、賛否を示せる様な明瞭な内容として、定義することです。


では、早速。

1. "フェミニズム"とは、社会が家父長制の影響下にあり、そのせいで女性は特に被差別的な境遇にあり、それを是正すべきであるという前提を共有する思想である。
1.1. ここでいう"家父長制"とは、パターナルとカタカナ語化する事もでき、また以下の2つの別の事柄を同時に指す。
1.1.1. リーダーは一般に男性であるべきだという前提を持つこと。
1.1.1.1. 但し、フェミニズムの想定する"家父長制"の説明としてこの点は重要だが、その他の意図で家父長制、パターナルと言った場合、この意味を全く含まない場合もある。
1.1.2. 誰かが誰かの面倒を見て、面倒を見る側は相応に強い権利と責任を持ち、面倒を見られる側は可能な範囲で恩に報いなければならないとする関係構造を是とすること。
1.2. ここでいう"被差別的な境遇"とは、以下の二つの別の事柄を同時に指す。
1.2.1. 日々の生活に苦労が多く、経済的に豊かで無く、客観的に考えて不幸な身の上であるということ。
1.2.2. 自己決定権の低い存在であり、仮に客観的に豊かな生活を送っていようとも、自由の少ない身の上であるということ。
1.3. ここでいう"女性は特に被差別的な境遇にあり"とは、男性特有の困難があろうとも、それと相対化出来ない、一方的に不遇な状況にあると解釈される。
1.4. 但し、フェミニズムは以下の論争を内包し、何れかの態度が必ずしもフェミニズム的であったり、フェミニズム的で無い事にはならない。
1.4.1. 女性の中にトランス女性を含むか、否か。
1.4.2. 是正に当たり、パターナルと受け取られかねない様な女性保護を含むか、否か。
1.4.3. 社会全体や、その中での女性の在り方として、どの様な将来像を目指すか。
2. "フェミニスト"とは、フェミニズムに賛同する人々である。
3. "アンチフェミニズム"とは、フェミニズムの前提に賛同しない思想である。
4. "アンチフェミニスト"とは、アンチフェミニズムに賛同する人々である。

「上記の定義の論証を行うべきではないか」という意見もあるでしょう。
しかし、そもそものスタンスが「未定義なフェミニズムという語の定義」なのですから、論証のしようがありません。
単に、今後の健全な議論がし易い様に、符号化しただけです。

だとしても、これが妥当であると思った理由くらいは書くべきなのかも知れません。
反響次第では、その様な解説noteも書いてみようと思います。

では、今回はこの辺りで。

このnoteが皆さまの知的な考察、議論の一助となる事を願っております。

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