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 久しぶりの帰省だというのに年末の大掃除に駆り出されてすっかりくたびれてしまった。自室で物置部屋の本棚にはぎっしりと本が詰め込まれている。
「こんなに雑にしていただろうか……」
おもむろに数冊の本を引き抜いてみるとドサドサっと数冊が足元に降って落ちた。

――卒業アルバム

ほろ苦い青春の思い出が胸に押し寄せる。思わずページをめくると一枚の写真が目に飛び込んできた。眼鏡橋。修学旅行で彼女と初めて手を繋いだ場所だった。

 ふと、彼女がどうしているのか気になってスマホのアドレス帳を探る。
「初詣に行きませんか?」
それだけ書いて、送信ボタンを押す。
「なんでメール?そばにいるのに……初詣、行こうね」
そう、妻が言った。

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