見出し画像

TGS2018にいってきた・スクールパビリオン編

 前回のTGSから考えていたことがある。幸い都内在住で(今は引っ越したが)イベントや試遊会に通えなくない身である私は、何時間も並んで試遊するより、こういう場でしか見られないものを見に行った方が、得るものが多いのではないだろうか、と。
 その実前回は、大手メーカーのソフトやハードばかりではなく、それを取り巻く開発技術や、未来のクリエイターを目指す人々の力作を覗くことができて楽しかった。
 学生たちの作品なら、オープンキャンパスなどで見るのもいいが、いくつもの学校が一堂に会するこういう場は、いっぺんにたくさんの作品が見られるし、見応えがあるのだ。
 そう考えた一因を作ったのは、神奈川工科大学の展示だった。北の大地北海道と、本州の頂点青森という宿命のライバルの戦いを、描いてたのかどうかはわからないが、とにかく異彩を放ちまくった怪作『アオモリズム』にすっかりKOされた私は、5年ぶりに同校のブースを訪ねる。
 その時の記事はこちら。
 
 彼らの指導をされている中村隆之准教授は、ソニーやナムコを経てコンサル業を立ち上げ、同校の特任准教授になられた。
 ナムコ時代の代表作『ことばのパズル・もじぴったん』に聞き覚えはないだろうか?
 すらっとデカイ先生へのご挨拶もそこそこに早速展示作品を……

 さぁ出たぞ、一見してなんのゲームかわかるインターフェースと全くわからんインターフェース。これが大手には出せない学生の勢いなのだ。
 まず明らかに音ゲーでしかないほう『リクルートフィーバー』を試す。先生曰く、合同会社説明会に出店した社長が全く人が来ない自社ブースに学生を集めるべくダンスで人を集めるゲームだという。
 やはり何度聞いても聞いただけではわからない。とりあえずプレイ。
 自社の人気のなさに膝を折る社長がなぜか踊り出すところからスタート。画面に流れるマーカーに合わせてボタンとレコードを操作。するとの中の社長がフィーバーし(死語)、若者たちが社長の後をついていく。モーセに続くヘブライ人の如き一団を形成すると、ただの社長がプレスリー社長(勝手命名)に進化。晴れて会社に山ほどの若者を集めることに成功したのであった。
 ……うむ、変わらないこの生ぬるい達成感もいい!
 もう一方のゲームは何か?『ゴーストクリーナー』というらしい。じぶんの頭に住み付いた……もとい、棲み憑いたゴーストを、バキュームマシンで吸い取るゲームと。やはり聞いただけではわからないのでプレイ。
 左手のバキュームを頭に当てると、画面に拡大された頭皮(のCG)が出る。毛根にうじゃうじゃとゴーストがいるので、右手の方向スティックでバキューム!
 1画面分吸いきったらバキュームを別の場所に当てまたバキューム!湧くわ湧くわのゴーストを吸うわ吸うわ。道理で最近頭が重いと思った。
 リザルド画面では吸ったゴーストの数と、棲みついたゴーストの性質から性格診断までしてくれるという親切設計。頭も心も軽くなる素晴らしいゲーム。恐るべし神奈川工科大学!

 真面目に分析してしまえば、リクルートフィーバーは既存の音ゲーと何らかわらず、そのベースにどんな背景と演出を加えるか、という方向に重きを置いたものだろう。ゴーストクリーナーは「頭に棲む何かを吸い取る」という着想から広げたそうだが(最初は虫が住んでいるという設定だったそうだが、即却下されたらしい。英断である)、オブジェのインパクトが目を引いた。
 身もふたもないが、いずれもあと10歩足りないと感じずにはいられない。が、この伸びやかな発想と、その10歩の起点となる今の特異さは流石だと感心する。やはり神奈川工科大学おそるべし。

 と、そんな中村先生とお話ししていると。
「隣のブースのゲームは気になるんですが、忙しくて見に行けなくて……」
 とおっしゃる。見れば隣の学校のブースに、何やら見慣れぬディスプレイが。よし、では私が体験して先生にご報告しましょう。
 隣は日本電子専門学校のブース。先生が気になっていたというゲームを早速プレイ。

 千手観音……もとい、千『住』観音と題されたゲーム。千住観音を操作して北千住の平和とマルイを守るのが目的らしい。たぶん。
 観音様がトゥクトゥクで北千住を疾走するデモから、侵攻する南千住観音との戦いが始まる。大画面を縦に使ったディスプレイは全面タッチパネルで、画面に触れることで観音様を操作する。
 ここまでの説明で本作を完全に理解できた方がいらっしゃったらすごいと思うが、そうとしか説明できないゲームなのだ。まさに世界のどこにもないゲーム!
 中村先生の元に戻った私はとりあえず報告した。
「彼らときっと仲良くなれると思います(^^)」

 しかし毎年のようにメディアに注目される神奈川工科大もさることながら、学生ブースのバラエティの豊かさはすごいと思う。
 営利や流行ではなく、自分が作りたいものを実現するために技術を鍛えていくという、彼らにとって当たり前のような作品の数々が、リッチコンテンツに毒された我が目に少し眩い。
 自分の作品が毀誉褒貶に晒されるという経験が積めるのも、生徒らにとってTGSの大きな利点だと思う。
 諸君、心せよ。そこは戦場と楽園の際なのだ。戦い、学び、何年か後に100歩進んだ作品で遊べる日を楽しみにしています。

全ての現場は、宝の山。お客様がたくさんのことを教えてくれる。
(サイバーコネクトツー社長・松山洋)


****************************
お気に召しましたら投げ銭願います。


ここから先は

19字

¥ 100

この記事が参加している募集

イベントレポ

サポートお願いします。励みになります!