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【ITブログ #4 新技術】IT技術に新しい技術はありません

今回は、ITの新しい技術についてのお話です。

1.はじめに

私はユーザー企業でシステムを構築する仕事をしています。皆さんがシステムに障害が発生した時や新しいシステムを導入する時に、対応や研修をしている社員がいると思いますが、そのシステム部門を担当しています。
良く言われることですが、新しい技術を理解していくのは大変だろう、移り変わりが早いし、新しい技術がいくらでも出てくると言われます。中には、ついて行けるのはすごいとまで、言っていただけます。私も、大変なんです、いつも情報を収集していますと、話を合わせて答えることにしています。
情報を収集しているには事実ですが、本音を言いますと、IT技術に新しい技術はありません。過去の技術が形や使い方、呼び名を変えて、何度も登場しているだけです。
むしろ最近は、特定のIT企業による寡占が進んでいるので、簡単になっているとさえ思っています。昔みたいに、多くのメーカーがいくつもの規格を提唱して、規格が乱立していることはありません。むしろ、昔と比較すると単純化しているのです。

2.IT技術の移り変わり

私が、システム構築の担当を始めて、すでに34年が過ぎました。いろいろなシステムを構築してきました。異動した当初は、汎用機とそのオンライン端末が全盛期で、パソコンはまだスタンドアロンや汎用機の端末として存在していました。その後、LANが導入されて、パソコンがネットワークでつながるようになりました。その後、ネットワーク上にサーバーが構築されると、クライアント・サーバーのシステム(いわゆる、クラサバ)を構築しました。そして、インターネットのホームページが増えてきて、htmlの技術が普及してくると、イントラネットのシステムを構築しました。電子メールや電子掲示板、電子キャビネットを導入したこともあります。
また、企業のアプリをクラウドに構築したり、企業のSNSの導入、ネット広告の出稿、ネット販売も担当したことがあります。当然なことですが、業務システムや会計システム他を構築したこともあります。

このように、私は関与したシステム構築に使われている技術は、確かに多岐にわたっています。
でも、基本となるのは、パソコンが動く仕組みであり、ネットワークがつながる規格(プロトコル)と仕組みなのです。この、パソコンとネットワークの仕組みが理解できてさえいれば、後は同じことの繰り返しや応用です。ただ、パソコンとネットワークの仕組みが理解するのが難しいかもしれません。ITという木には、いろいろな葉や枝が出たり、いろいろな形や色をした花が咲きます。でも、幹や根は、あまり変わりません。
比較的、新しい技術で説明していきましょう。

3.クラウド

クラウドについては「【ITブログ #3 クラウド】クラウドを理解するのは、なぜ難しいのか」で詳しく解説しています。よろしければ、読んでみてください。
https://note.com/a305/n/n47167b5b46ee

クラウドの基本技術は、仮想化です。仮想化されたコンピュータを仮想マシン(VM)と言います。仮想マシンの技術が登場したのは、1960年代と言われています。当時、高価だったコンピュータを複数のユーザーや業務で利用できるように開発されました。当時のコンピューターは汎用機が中心でした。汎用機とは、企業の基幹業務システムなどに用いられた大型コンピュータのことです。別の呼び方としては、メインフレーム、ホストコンピュータ などがあります。メーカーは、IBM、富士通、日立などがありました。

1980年代までの汎用機は、パソコンと同じように、DOSマシーンでした。Windows以前のパソコンに搭載されていた、MS-DOSと同じDOSです。ディスク上に、オペレーティングシステムが保存されていて、そのOSが起動してアプリケーションソフトを使用することができるようになります。オペレーティングシステムとは、Windows10のようなソフトのことを指します。
1台の汎用機の上に、3個のDOSの区画を設定して使用する、3DOSマシーンが多かったです。3の区画には、2のオンラインを立ち上げて、残りの1区画はバッチ処理として使用するのが一般的でした。オンラインは、CICSと言われる、IBMが開発、販売している汎用機で使用される、オンライントランザクション処理用のミドルウェアを使用していることが多かったです。
これが、1990年代になると、IBMが販売したOS/390には、MVS(Multiple Virtual Storage)の機能がありました。これは1台の汎用機に論理的には255個のDOSを立ち上げることができるようになりました。これも、仮想化の技術を使用しています。

このように、仮想化の技術は昔からあるものです。動く基盤(プラットフォーム)や動くソフト、動き方を変えて、時代に合うように形を変えているだけです。

4.コンテナ技術

コンテナ技術は、なじみが少ないかもしれません。これも仮想化の一つで、コンテナ化仮想化技術と言います。皆さんがよく使われている、LINEなどのSNSで多く使われている技術です。
クラウド上に仮想マシン(VM)を立ち上げるためには、OSやミドルウェア、アプリケーションソフトを予め、インストールしていることが必要です。実際のサーバー(物理マシン)と、まったく同じ手順を実行します。SNSのように、アクセスが急に増えるサービスに場合は、予め、仮想マシン(VM)を何台も立ち上げて、準備しておく必要があります。これをホットスタンバイすると言います。
コンテナ技術とは、サーバーのOS上に、コンテナと呼ばれるアプリケーションソフトを導入して、コンテナ空間を構築して、コンテナごとに、サーバーと異なるOS環境を構築する技術です。コンテナを構築することにより、サーバーOSと異なるOSで動作するアプリケーションソフトを導入して実行できる、魔法のような技術です。コンテナを導入していれば、アプリケーションソフトだけでサービスが実行できるので、急なアクセスの増加にも対応できます。

コンテナ技術の歴史は、1979年にリリースされたNIX OSの開発途中で生まれた、「chroot」というコマンドの開発が始まりでした。chrootとは 「Change Root」の略で、ルートディレクトリを変更するときに使うコマンドです。ルートディレクトリとは、コンピュータがディスク(外部記憶装置)やシステム全体の最上位のディレクトリのことです。chrootは、アプリケーションのファイルアクセスを特定のディレクトリ以下に限定することによる、コンテナ型のプロセス分離の起点となりました。つまり、特定のディレクトリの範囲内
で、アプリケーションが実行されることが、あたかもコンテナの中に荷物を詰め込んで運ぶ様子に似ているので名付けられました。
コンテナ技術も仮想化の変化形です。仮想化が理解できれば、コンテナ技術も理解できます。

5.RPA

RPAは、ロボティック・プロセス・オートメーションの意味で、ソフトウェアロボットや仮想知的労働者と呼ばれる、作業プロセス自動化技術の一種です。最近、よく聞かれると思います。ロボット(ボット)で作業効率を向上させる技術です。

自動化の技術は、コンピューター自体が自動化のために作られたのですから、かなり昔より存在しています。私が、初めて自動化の技術を知ったのは、1980年代でした。その頃に、IBM製のパソコン(PS/55)で動作する、IBM製の自動化ソフトが存在していました。IWS(インテリジェント・ワークステーション)という名前で販売されていました。パソコンのキーボード・エミレーションによる自動実行だけではなく、CICSのオンライン接続状況(ステイタス)を把握して、自動的にログオンやログオフをしたり、アプリケーションソフトを実行したりすることが可能でした。私もIWSを利用して、オンラインからホストにログオンして、パソコンのファイルをホストに転送(send)して、ファイルの送信を確認した上でログオフする、バッチファイルを作成したことがあります。

6.最後に

いかがでしょうか。新しいIT技術についてのご理解は進みましたでしょうか。
IT技術を理解するには、4つのポイントがあります。

1つ目のポイントは、よく、アイデアに関する本に書かれている「新しいアイデアはない、今までのアイデアの手直ししたものか、アイデアを組み合わせたものである」は、IT技術にも言えます。

2つ目のポイントは、新しいIT技術は、必ず、新しい商品と一体になっていることです。メーカーは商品を売り込むために、新しい技術を過大にプレゼンテーションします。このプレゼンテーションが、新しい技術を理解しにくくしているのです。その上、メーカーによっては、新しい技術の呼び名が異なっている場合が多いです。このメーカー間の競争が、さらに理解を難しくしているのです。

3つ目のポイントは、システムは見えないことです。最近、多くの自動車に搭載されている、自動ブレーキで説明します。車を止めるブレーキという装置は、100年以上前から存在しています。これにABSが追加されます。ABSは、ブレーキをロックさせることなく、車の安定性を保ち、ハンドルを操作することによって危険回避能力を確保する装置のことです。これに、センサーやカメラを追加して、人や物があると、自動的にブレーキがかかるようになります。これが、自動ブレーキです。それを進化させたのが、誤発進抑制機能です。車が動き出す時に、障害物があれば、自動ブレーキだけではなく、アクセルの抑制も行います。これをさらに発展させると、前進だけではなく、後方にセンサーやカメラを設置すると、後進時にも同じ機能を持つことができます。
普段は機能することがない技術ですので、よくテレビのコマーシャルで、紙の壁を用意して、車が前進しないことを見せることによって、新しい技術を理解してもらっているのです。
システムは見せることができない、概念的なものですので、理解が難しいです。

4つ目のポイントは、システムにはフロント系とバックオフィス系の2種類あることです。システムは、利用者が接することができるフロントと接することはないバックオフィスに分かれます。クラウドやRPAは利用者が見ることができますが、バックオフィスであるコンテナ技術は見ることがないので、理解が難しくなっています。ですので、新しいIT技術に接した時に、見ることができるフロント系と、見ることのできないバックオフィス系に区別することが大切です。

この4つのポイントを理解して、新しいIT技術に接すると理解が深まるかもしれません。

このように、ITに関する情報をブログ形式でアップしていきます。
今後もお読みいただけるとうれしいです。

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