#9 ポケットの中の戦争

 唐突だが、自分の好きなアニメ作品を1本、紹介しようと思う。

ぽけ戦

「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」


 1989年に制作された、全6話からなるガンダムシリーズ初のOVA作品。「なんだ結局ガンダムかよ」と思った方にも、毛嫌いせずに是非見て欲しい。個人的にはガンダムを見たことない人にまず勧めたいのがこの作品、通称「ポケ戦」である。

(一応あらすじ)

ある日、少年は”戦争”と出会った...

地球連邦軍とジオン公国軍による戦いが熾烈を極める宇宙世紀0079年末期。連邦軍の開発したニュータイプ
専用モビルスーツ・ガンダムNT-1 アレックスを巡る戦いが、宇宙に浮かぶコロニー・サイド6で展開する。惹か
れあいながらも、お互いの素性を知らぬまま戦うアレックスの女性テストパイロット・クリス、アレックスを狙うジ
オン軍の青年パイロット・バーニィ……。少年アルは彼らの戦いの目撃者となる。

 …まあ専門用語が多いので適当に流してもらって構わない。超簡単に説明すると、「互いを敵同士と知らずに惹かれ合う2人のパイロットとその真実を唯一知る少年が繰り広げるお話」である。分かりにくいか…。

 ポケ戦のテーマは「戦争」。そもそもガンダムはほぼ全部戦争の話なのだが、ポケ戦は特に戦争というものが強く、深く描かれている。「スーパーロボット同士のカッコいいバトル」ではなく、「軍事兵器を用いた戦争」として、考えさせられる描写が随所に見受けられる。また物語の構成やサブタイトルには、ヘミングウェイをはじめ戦争文学作品からの影響を受けている。どうやらそこらへんの映画を意識して制作したらしく、確かになんというか「文学作品っぽさ」を感じる。うまく言語化するのが難しいのだけれど、細かい描写がなんか文学っぽい。(文学作品に明るくないので、専門家に言わせたら全然そんなことないかもしれない。あくまで個人的なアレ)

 また、主人公の視点も面白い。ガンダムシリーズは基本的にガンダムのパイロットが主人公だが、本作の主人公(2人)は「ガンダムを壊しに来た人(バーニィ)」と「そこに住んでいた少年(アル)」というなかなか特殊な設定である。2人は訳あって共に行動することになるのだが、「新型のガンダム」という巨大な相手を前に、戦争を知らないアルがさまざまな経験を通して成長していく。この「戦争を知らない」という描写が、個人的には本作の見どころだと思う。舞台となる町の学校では、戦争は憧れの対象であり、男の子たちは皆本気で「戦争ってすげえ、兵隊は超カッコいいヒーロー」だと思っている。現代に生きる我々は過去の凄惨な歴史から「戦争は繰り返してはいけない過ち」という教訓を今日まで(辛うじて)守れているが、いつかこの世界のようになる日が来てしまうんじゃないか、と考えさせられる。

 初めてこの作品を観た時、最終話でちょっと泣いてしまった。この世には戦争をテーマにした映画や本、舞台などがたくさんあるが、今まで見てきたどんな作品より「戦争とはこんなにもひどいものなのか」と悲しい気持ちになった。所詮アニメ、架空の世界なのだが、この作品は平和な時代を生きる我々人間にとって、大切なものを教えてくれていると思う。


 最後に、本作のOPも紹介したい。名曲だ。

いつか空に届いて /椎名恵

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