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病床人間観察2  隣はアニメ声優ファン、病室でプライバシーなどないのだ 220209

 病室ではプライバシーなど、ほとんどない。名前も病状も全て聞こえてくる。
私以外の3人の方々にとってこの部屋はリビング兼トイレでもある。
きちんと食べて出すことは最も重要で、おならも「プー」ではない。
「プーー、プイッ」である。
この最後の「プイッ」
出し切ることが大切なことなのだ。
一人の時でも、してるかなぁ?
と考えながらも、
他人のおならの出し切り音を間近で聞いたのは初めてだ。3人分。



 その一人、向かいベッドの方はアニメ声優さんのファンらしい。
声優さんについて看護師さんと楽しそうに話していたが、なんて言ってたか聞き取れなかった。
聞き取れても知らないだろうが…。



歳のわかりにくい声だな。
何才やろ?
かすれてないし若いやろ?
声優ファンなら…


不思議な、ほんわかとした、音質いいけど、少しこもったスピーカーのような声。
訛りなし。
小さいおっちゃんと正反対。

でも手術後で、ベッドの横にはやはり尿瓶がある。歩くのも大変そうだ。
それでも、なんか明るそうな人。


う~ん…、どんな人だろうと想像していたら…、


昨日、たまたま出会ってしまった。

無料の給茶器前で、二人ともが点滴ぶら下げ無言のままで…。



少し小太りだが、普通の45~50才くらいのおっちゃんだった。

うん、まぁイメージ通りだった。
おっちゃん、よかったね。

あー、ファンの声優さん誰か聞いとけばよかったか…。
知らんけど…。

でも、
おっちゃん、よかったね。
今朝退院された。

私の骨髄検査前だった…。




病床人間観察3
いくたびも雪の深さを尋ねけり2/10

 次の隣ベッドの方、血液の病気の様だ。低血糖でナトリウムが減っていて何か手術されたようだった。
寝たままの体では向きも一人では変えられず、トイレも看護師さんにお願いしないといけない。


。。。。。。。
。。。。。。。!

看護師さんが頻繁に来るようになった。
急激に臓器が悪化しているらしい。
昨日より明らかに口数が減っている。


がん治療受けて落ち着いたので、この部屋に来られたのだが、明日からまた部屋を変わられる。

。。。。。。。

食事は、ほとんど手をつけられていない。

。。。。。。

「先生、リハビリしたい…」
と彼は言う。
自分で動きたい彼の気持ちが聞こえるが、
看護師さんが答える。
「〇〇さんもう少し…、また楽になってきたら始めましょうね」


。。。。。。

自分でやりたい。
動けないだけ。
動きたい。
やらせて。
いつから?
教えて?

聞こえてくる。


「先生、リハビリしたい…」
聞こえてくる。


出来るようになるよ。
私は隣で願うだけ。



いくたびも雪の深さを尋ねけり


正岡子規の句、思い出して震えて
涙が止まらなくなった。

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