【短編小説】いちごジャムの食べすぎ【健全】
オリジナルバージョンが利用規約に抵触していたらしく、公開停止になったので書きました。自主規制バージョンです。利用規約は読みました。
(正直あんま釈然としない🫤)
オリジナルバージョンはこれ↓
「おくすり飲んで寝よう」と「アメリカ民謡研究会」を聴きながら書いた。
あと「意識の流れ」的なことにチャレンジしてみたかった。
心が弱い人の解像度が低すぎるな……🙄
ひとが「あなたのためを思って言うの。いつか絶対後悔するよ」とかほざくとき、私はその中を漂う傲慢のにおいにひどく吐き気を催してしまう。
「後悔するよ」じゃなくって「後悔しろ」でしょ? 貴方の思う「正しくないこと」をしている、私のことが気に食わないんでしょ? 下手くそな嘘つかなくていいよ。
「今は分からないかもしれないけど」「いつかは」? あーあーあー将来のこと将来のことってそればっかでくだらない! なんで合理的で効率的で無菌室的なにんげんってこうなの? 薄暗い部屋のベッドの上で腐っていくことが絶対悪かどうかなんてあなたに決められたくないんですけど
だってさ──いちごジャムの瓶のふたを空ける──貴方たちがいう「いい子」って、バカのことじゃん。
素直に言うことを聞くいい子。みんなと仲よくできるいい子。「ここじゃない場所に行きたい」とか言わないいい子。いちごジャムの食べすぎなんかしないいい子。
──よく飼いならされた羊みたいな、いい子。善良で、従順で、無力で、ひとを疑わない。傷つけない。みんなの顔色から空気を読んで、周りに迷惑をかけない。
そして何より、生きていくことを当たり前だと思っている。「命は何よりも尊い」と本気で信じている。
「ここじゃない場所に行きたいなんて──…言っちゃダメだよ……」
「あ、ごめん……きっとそんな風に思っちゃうくらいつらいんだ、よね?」
羊の道徳と生命維持欲求で生きている、周囲に利用されていることにも気づかない、家畜みたいな能天気バカ。頭ぱっぱらぱーなお花畑人間。
それが、みんなの考える「善人」の正体だよ。自分の価値観を持っている人間は、大勢の中で善人にはなり得ない。同意と共感が得られないからね。
「わたし、そんなにすごくないよ。いつもみんなに助けてもらってるし!」
「謙虚なんだね」
(助けてもらえること自体、有能さの証なのにね)
だからみんな、内心「善人」をバカにしてるんでしょ? そうじゃないヤツに「聞き分けがない」とか「クズ」とか何とか言っておきながら。
道徳は常に息苦しい。日のよく当たる、羊が過密した柵の内側にあるから。自由はいつも雪原の狼みたいに峻烈だから悪徳だ。狼嫌いのこの世界では、家畜じゃないと善人にはなれないんだ。
だって、善良であるためには、素直なお人好しじゃないといけない。素直なお人好しであるためには、ひとを疑わない無邪気さが必要だ。そして、ひとを疑わない無邪気さとは、家畜みたいに馴れる無垢な愚かさに由来する。
「すこやかだね!」
「子どもみたい、犬みたい、」
「なんてたやすくて、幸せな生き物なのだろう!」
だから、ひとが善人を見る目には、常に一抹の軽侮が含まれる。「あの子は何だか放っておけないんだ」「親切にしてあげたくなる」──そう言われる「いい子」は、たいていどこか侮られている。だって「危なっかしくてひとりにしておけない」なんて、一人前の人間に言うと思う、? ?
「放っておけないんだ「放っておけない「放っておけ「もうっ、わたし子どもじゃないんだからさ!──? ……??
言わないよね。言わない。いわない──ああ頭がふわふわしてきた。徹夜いちごジャムの好きなところだ。ことばが意味も喚起せずに反響しているよ。
石になったように重い。頭と背中も、手も足も。チョコレート、? オランダ?? ピンク色と灰色!
目をとじると、頭のなかがぐるぐるしている。コーヒーカップ、小学生、回しすぎたみたい。
冷たい錆びた鉄の床に倒れこむ。深夜、非常階段、煙草の煙。暖かい安酒の室内、繁華街。行き場をなくした重力が、頭のなかでたらい回しにされてるんだ。
ちょっと気分がわるい、気がする。でも気のせいだ。とにかくねむい。重い。まわる
「起きたらぜんぶ忘れてないかな」
………
……
…
ねていた。「ゔ」吐き気で目が覚めた。「うぶっ」洗面器に吐いた。「はぁ……」食べすぎた、1瓶? ももジャムも入れたら……2瓶超えかな。いま何時?
あーあ、後から気分最悪になるって分かってるんだから、やらなきゃいいのにね。まあ、食べすぎることくらい健康な人でも誰でもあるよね。吐き気がするのも、大学生の飲み会の翌日みたいなものだよ。
「お味噌汁飲みたい」
…お味噌汁飲めないよな。もうすぐバイトあるもん。
今日も明日も明後日も、結局私はお味噌汁を飲めないで暮らしは続いてゆく。
「うぅ、トイレいこ……」
ジャムを消化したらまた食べたくなってくるけど、糖分過多で頭がぼんやりする感じはしばらく残る。グレープフルーツ色の雲の上を歩いているのに、数歩下がって何かがついてくるあの感じ。
こんな気持ちだったのかな。なんで私ってバカなんだろ。
でも善人じゃない。ごめんなさい。こんな世界、まるごと滅んじゃえばいいのに。
あーあ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?