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汚部屋掃除狂想曲

22年間まともに掃除されてこなかった汚部屋に住んでいる者だ。
今、必死こいて部屋の掃除と断捨離をしている。

が、掃除しても掃除しても、さっぱり綺麗にならない。
45Lのゴミ袋20袋分くらい?は捨てたが、まだ床にものが散乱している。
ドアからベッドに行くまでの通り道だけが空いていて、その両脇にはものが積み上がっているのだ。おかげで身内には「汚部屋のモーセ」とか呼ばれている。

思うに、世の中でいわれる「片づけのコツ」というのは、すでにそこそこ綺麗な部屋に住んでいる人間や、片づけの才能がある人間向けなのである。

「使うものと使わないものを分別しよう」
「使用頻度やカテゴリー別に収納しよう」

──言っておくが、マジの汚部屋ではそんなことできない。
効率的に分別や収納に取り組むことが、そもそもできないからだ。

第一に「使うもの」と「使わないもの」を分けて仮置きできるスペースがない。なにせ床には足の踏み場すらないのだ。
分別のためになんとか猫の額ほどの空きスペースを作っても、すぐに仕分け途中のもので埋め尽くされる。そして、どこまでが断捨離する前の荷物で、どこからが断捨離した後の荷物なのかが分からなくなってしまう。

「ものがない、仕分け作業用の床」と「荷物が置かれている床」の区別がない雑然とした空間の中では、何度も同じ荷物の山をチェックすることになる。
何度も同じ荷物の山の中から「捨てるもの」と「捨てないもの」を仕分け、「捨てないもの」を脇によけ──結局その「捨てないもの」は別の山の「捨てるもの」と混ざりあって区別がつかなくなる。

それに、使用頻度やカテゴリー別にするというのも、なかなか難しい。
かつての私の辞書に「整理整頓」という言葉はなかったらしい。おかげで英単語の小テストみたいなどうでもいいプリントの間から、写真やら一万円札やら借り物やらが出てくるという有り様である。
そのせいで「この辺の荷物は使っていないからまとめて捨てる!」といったことができない。捨てる山の中に、捨ててはいけないものが紛れ込んでいるかもしれないからだ。この点、過去の自分は全くもって信用ならない。

だから、地道にカテゴリー別に分けようとするわけだが……これが全然上手くいかないんだ。

「Aの山から連絡先のメモが出てきた。とりあえずここに置いておこう」

↓数分後

「Bの山からまた連絡先のメモが出てきた。さっきのところにまとめて置いておこう……あれ、『さっきのところ』ってどの辺だっけ? 荷物で埋め尽くされていて見えないな……」

こんなことの繰り返しなのである。

「カテゴリー別に分けておいたはずのもの」がおびただしい数の荷物に埋もれて行方不明になり、気づけばバラバラになって、また一から仕分け直し。
え? 「バラバラにならないようちゃんとまとめておけよ」って? それができる仕分けスキルと空間があるなら、そもそもこんな汚部屋には住んでいないんですよ。

結局のところ、ゴミとお宝のミルフィーユの上で暮らしている汚部屋の主は、地道に「これは捨てる、これは捨てない……」とやっていくしかないのである。

その途上で分別したはずの荷物がまたグチャグチャに混ざって、掃除したはずの床が再び荷物で埋め尽くされても、やるしかない。
自分がいかに非効率的な動きをしているのかを絶えず分からされ、自室のあまりに雑然とした様子に絶望しても、やるしかないのだ。

…うっわ、ほぼ使っていない引き出しの底に、とびっこ似の虫の卵が産みつけられているんですけど!?
謎の虫が二匹くらい死んでやがる!! ってかカビくせぇ!!

これはとてつもなく根気のいる作業だ。本当につらい。だから私は掃除中、友人に頼んでDiscordで監視してもらっている。
毎回一時間くらいは頑張って掃除する。え、もっと長時間やれ? 一時間以上集中して掃除に取り組める人間はね、そもそも汚部屋になんかしないんですよ。監視をつけても私なんぞは一時間が限界なのである。

はぁ、綺麗な部屋に住みたいなぁ……掃除するか……

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