好きなものを好きに書くひと
わたしは書くことが好きなのだろうか?なんで書きたいと思うんだろうか?
最近、田中延泰さんが書いた「読みたいことを、書けばいい。」を読んだ。この本を読んでから、なんで自分が書くのか分からなくなった。
この本は、タイトル通りの内容で、あなたが読んで面白いと思うことを書けばいいんだよ、ってことをあらゆる言葉を駆使して伝えている。
なんで自分が書くのか分からなくなった理由としては、田中さんの書くことに対しての向き合い方がわたしの想像とは解離していて、理想のライター像が崩れ落ちて、どこに向かえば良いか分からなくなったからだ。
わたしは一度も書くことが好きだと思ったことがない、仕事がくるから書いているのだ。ライターは、自分の言葉が1割、調べたことが9割である。自分のことばかり書かれても、面白くない。
と田中さんは書いていた。
わたしの思っていたことと真逆である。なんでことだ。
真逆なのに、この人の書いていることに影響されてしまったのは、この本がたしかに面白くて、田中さんが書いた記事を読んでも、1万字以上もあるのにどんどん読めるぐらいに面白いからだ。
マキシム ザ ホルモンの新しいアルバムについての記事を読んだけど、わたしはこのバンドを全く知らないくせに、めちゃくちゃ面白かった。知らないバンドのアルバム紹介とか、読んでも興味は惹かれなさそうなのに、いつの間にか一緒に感動している自分がいた。
何が面白かったかというと、田中さんもマキシム ザ ホルモンを全く知らなかったのにこの記事を書いているところだ。なんで知らないバンドの紹介なんて書くの!!?っていう面白さ。その知らなかったことを隠して書く人もいるかもしれないけど、知らなかったところから曲を聴きまくって好きになる過程まで書かれているから、わたしも田中さんと一緒にバンドのことを好きになっていく感覚があった。
結果、田中さんもなんでもっと早くこのバンドを聴いていなかったんだってぐらい好きになってしまう。いや、二週間前まで全然聴いてなかったやん!?なんでこんなに好きになってんの!?っていう驚き。しかも、コアなファンぐらいの知識を得ていて、その素直さっていうか、ただ仕事で記事を書くだけなのにそこまで好きになる必要ある!?ってところが読んでいておかしかった。尊敬するって意味で、おかしい人だなって思った。
もうひとつ素敵だなと思ったところが、書く目線が対等だなと思った。どういうことかと言うと、難しい言葉ではなくて、偉そうに上から目線でもないし、誰かと話しているみたいな文章だった。田中さんの文章を読んでいて、文章のままの同じ雰囲気で話しているところが浮かぶ。実際はどうか知らないけど。
難しい言葉を使って、初めて読んでくれる人が読みづらいなって思うよりも、同じ立場で友達に話すみたいに書いている方が好感を持つ。
あと、好きなことに対する熱意というか今っぽい言葉で言うと、オタク魂みたいなものを持っていて好きだなぁって思った。
一瞬の風になれ、などを書いている佐藤多佳子さんも同じような、好きなものに対する熱意が大きい人だった。明るい夜に出かけて、っていうラジオに関わる小説も書いているんだけど、佐藤多佳子さん自身もラジオが好きなんだって。好きなラジオを小説の題材にしてしまって、しかも、ラジオに対しての知識もオタクのように持っているの。しかも、普段、ラジオを聴かない私でもラジオを聴き出してしまうぐらい、魅力的な小説なの。好きなものを他の人に影響を及ぼすぐらい、魅力的に書いてしまう佐藤さんに心底驚かされた。
田中延泰さんの本や文章は、同じぐらいの驚かされた。
こうやって、好きなものを語る大人になっていきたい。
田中さんの本を読んでからは、好きなものだけじゃなくて、今まで知らなかったことにも全力で興味を持って、それをも魅力的に書いてしまう人になりたいと思い始めた。
ぜんぜん最初の入りと違うことを書いているわ。
書いていて思ったけど、好きなものについて書いているときは書きたいことが次から次へと溢れ出てくるし、楽しいし、時間を忘れて携帯に打ち続けてしまう。
書くことは嫌いじゃない、苦にならない。
卒論を書いていて思ったけど、知らないことについて調べて書くことは楽しい。好奇心に従って、どんどん調べてしまって、どんどん知らないことが出てくるから、好奇心がずっと止まらずに楽しいよ〜って言っている感じ。
書くことが楽しいというよりも、知らないことを知ることが楽しくて、書くっていうことで自分の思いを飾らずに表現できるから、自分の発散みたい。普段、言いたいことを言えなかったり、周りを気にしてしまうから、誰にも構わずに自分のことを書けることが嬉しい。
きっと、こうやって書くこと自体が、自分らしく居られるひとつの居場所なんだと思う。
田中延泰さんの本はこちら
佐藤多佳子さんの本はこちら。この小説は、去年読んだ65冊の中で3番目ぐらいに好き。
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