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アメリカ ルート66を巡る旅 02 イリノイ州 北部

前回は、ルート66をスタートしてシカゴから郊外の街ウィローブルックまで走ってきました。今回は、いよいよルート66をGo West ! 西へ向かいます。(といってもイリノイ州内のルート66は南西向きに道路が走っていています。)

<イリノイ州>
アメリカ50州の中でも重要な州であるイリノイ州。日本人にはあまり馴染みのない州ですが、アメリカ3番目の町シカゴを有し、中西部でありながら進歩的な考えを持つ州です。奴隷解放をしたリンカーン大統領や有色人種初のオバマ大統領を輩出したこの州。都会シカゴでは、常に進歩的な考えが優先され、人種差別などはないように感じます。そんな大都会シカゴを出ると長閑な田舎の景色が延々と続きます。リベラル=都会というイメージとは異なり、イリノイ州はとんでもない平原に広がる田舎町なのです。

イリノイ州の旧ルート66

ルート66を走っていくと、イリノイ州はとても興味深い州であることがわかってきます。この地は、リベラルな州というイメージとはかけ離れた古き良きアメリカを色濃く残した土地だということに誰もが気付くでしょう。
シカゴを出ると小さな町が続きますが、どこの町でも旅行者に声をかけ、話をはじめる地元の人々にはとても驚かされ感動しました。そして質素ではありますが堅実に生活している真面目な人々に感心しました。我々日本人には、金銭欲と食欲が旺盛なアメリカ人のイメージがどうしてもすり込まれていますが、イリノイ州の人々のおおくは、心暖かく凛とした人々だったのです。一見保守的な住人は、教養を兼ね備えた静かな人でした。そんな実直で心優しい人々が暮らす場所をまわってみましょう。

今回はイリノイ州の北半分、JolietからLincolnまでを走ります。距離は210km。ノンストップで走ると約3時間となります。

<Joliet>
Joliet Rd.を南下するとJolietの街に到着します。この街はDes Plaines川の両岸に発展した町で、シカゴから60km以上離れているのにシカゴ商業圏に含まれる町です。この街には有名施設が2つ、大きな車のレース場「ルート66スピードウェイ」と今は閉鎖されている「ジョリエット刑務所」があります。「ジョリエット刑務所は映画「ブルースブラザース」やドラマ「プリズンブレイク」の撮影に使われたので、ご存知の方もいると思います。スピードウェイは、遠くから大きな建築物が見えるのでわかりやすいです。そしてスピードウェイの隣には大きな給水塔が立っていて、そこに町名が記されています。イリノイ州やカンザス州、オクラホマ州など大地が平な場所では水道水を家庭に配水するためにこのような給水塔が立っており、そこに町の名前が記されています。ルート66を走るとこの給水塔が目印になります。

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Jolietにある歴史博物館

<Launching Pad Drive In>
53号線(旧ルート66)を南下しジョリエットを抜けると、あたりは急に穀倉地帯に入ります。町は途絶え、トウモロコシ畑が広がります。そんな広大な畑の中に小さな町、Wilmingtonがあります。この町には、ショッピング・モールもなければ町の中心となるタウンスクエアも見あたらないのですが、ルート66上に有名なレストランが1軒営業を続けています(現在レストランは閉鎖中)。このレストランの前には ジャイアントという大きな人形があります。なんともいえないデザインです。ルート66のアイコンと化したこのスペースマン。この人形を間近で見ると、ルート66を走っているという実感が湧いてきます。
このような大きなハリボテの巨人は、あるメーカーが作ったもので、元々は同じデザインでしたが、購入者が加工をして店の看板にしています。ルート66上には、今もさまざまなデザインのジャイアントがいくつもたっていてとても面白いです。60年代に造られ、それをメンテナンスしながら守っている人々、そしてそれを支援する人々、なんとも微笑ましい光景です。

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このジャイアントはルート66では特に有名

ウィルミントンの街から次の街ドワイトまでは、典型的なアメリカの郊外の街が続きます。街は繋がっているわけではなく、小さな集落が森や畑の中にポツンポツンと現れます。これらの街は基本的に農業を営んでいる人たちが住んでいるのでしょう。なんとも静かで素朴な田舎の風景が続きます。

< Dwight>
ウィルミントンの町を南下すると州間高速55号線と旧ルート66は併走するように走ります。ここから暫くはルート66は、高速に塗りつぶされることなく今でも使われる生活道路として昔のままの姿を残しています。Wilmingtonから少し南下したところにドワイトというドイツ人が移民して作った小さな街があります。ドイツ移民だけあり街の建物はしっかりした石作りです。なんとなくドイツの田舎町のような雰囲気が漂っています。この街で見るべきポイントはドワイト銀行です。しっかりとした石作りの建築はこの辺りでは有名だそうです。この銀行、名前の通りこの街にしかないのですが、いったいどう経営が成り立っているのでしょう?私にはそれが一番気になりました。

<Memory Lane>
ドワイトからルート66をのんびり走ること約2時間、Lexingtonという小さな街があります。この手前にメモリーレーンがあります。何がメモリーレーンなのか?どうやらかつてルート66が輝いていた頃、ここで数々のイベントが開かれた場所のようです。でも今はただの公園です。ルート66の観光ポイントだという看板がなければ誰も気づかないでしょう。私たちが行った時期は雪降る12月下旬です。一応写真を撮ろうということで友人が公園内に入りシャッターを切ると、ミシッっと音がします。何だろうと顔を見合わせると実は氷のはった池の上にいたことが判明、氷が割れる前に慌てて陸に戻りました。池の氷の上に雪がつもり、そこはただの広場にしか見えませんでした。もし氷が割れていたら皆凍死していたかもしれません。そしてここは旧道、車はほとんど通りません。誰も助けてくれないのです。
メモリーレーンに冬訪れる際は、見えない池に十分ご注意ください。

<Bloomington>
レキシントンを過ぎると、比較的大きな街ブルーミントンが見えてきます。この街にはいくつか大学があり学生の街として有名だそうです。この町もそれほど大きくはなく、学生たちが街を歩いているのを見かける程度です。大学にはかなりの学生数がいるようです。興味があれば大学のカフェやブックストアを覗いてみるのも楽しいと思います。

コラム:大学の街
アメリカを走っていると、大学で成り立っている街にであいます。街は完全に大学を軸として成り立っています。大学の周辺には教員や職員が住む住宅、学生が住むアパートなどが並んでいます。そして小さいながら商店街があるのです。この商店街は大学に通う職員や学生のためのものです。田舎に行くほど、こういった大学の街は大きくなる傾向にあります。私の友人が通っていたノースカロライナ州にある大学の街はかなりの規模でした。ただ、近くに大きな街やモールがないので、街が閉鎖的になるそうです。街の中で人間関係が完結してしまうので、息苦しくなる人もいるそうです。日本ではあまり見かけない「大学の街」、こういう街を見かけたら立ち寄ってみるのも面白いかもしれません。

< Funks GrooveのPure Maple Sirup>
ブルーミントンの南にあるのがファンクス・グローブという街です。街と言っても街はなく数件の農家が点在するだけです。ここにメープル・シロップを作っている農家があります。とても上品な味のシロップを時間をかけて作ってるのですが売り切れの場合がおおく、なかなか買えません。もし、ルート66を走っていて、看板にであったら農家をのぞいてみてください。

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アメリカ版・トラック野郎の心の故郷

<Dixie Trukers Home>
ファンクス・グローブを過ぎるとすぐにMc Leanという街が見えてきます。この辺りは穀倉地帯なので、街の名前の書かれた給水塔が目印です。この街には長距離トラックの運転手相手のレストラン&ショップがあります。デキシー・トラッカーズ・ホームと呼ばれる店は、大きな看板を州間高速55号線(旧ルート66)に出していて、店の敷地は広大です。18輪トラックだけでも数十台止められます。併設するガソリンスタンドもトラック仕様です。そして店内にはレストランとコンビニ、そして小さなルート66博物館があるのです。
早速レストランに入って食事を注文してみました。味は日本人にとってお世辞にも美味しいとは言えません。ここは、ちょっと立ち寄ってルート66に関する写真展示を見たりする場所です。

コラム:トラック・ドライバー
ルート66のすぐ隣を走る州間高速道路にはたくさんのトラックが昼夜を問わず走っています。近隣の街を結ぶトラックだけでなく東海岸と西海岸を往復するトラックもたくさん走っているのです。そういったトラックドライバーさんの仕事は大変です。家に帰らないで仕事をする人も多く、トラックドライバーが集まるドライブ・インはいつも賑わっています。そんなドライブ・インには様々な人間模様が見られます。皆さん、よく話すのですが、それはトラックに乗っている時は1人だからでしょう。食事はかなりの大食漢が多いようです。いつもかなりの量の食事をしています。そしてドライブ・インにあるシャワーや床屋はいつも繁盛しています。
ルート66を走っていると、ところどころにあるトラックドライバーさん用のドライブ・インにはこのような世界が広がっているのです。

<Atlanta>
ルート66沿いの次の街はアトランタです。といってもジョージア州の州都アトランタではありません。ブルーミントンから次のリンカーンという街の間は、大きな街はなく、しいてあげるならマクリーンとアトランタくらいです。普通は通りすぎてしまうアトランタの街、実は見どころがおおいので、是非立ち寄って欲しいです。

<JH Hawes Grain Elevator>
アトランタにあるルート66上で重要な見所。それは昔使われていた穀物倉庫です。現在は歴史的な建物として保存されていますが、かつてはこのあたりに、この形の倉庫が沢山建っていたそうです。この倉庫の中にエレベーターがあり、穀物を一度上に引き上げ、貨車やトラックなどに乗せたそうです。今は駅のそばにポツンと建っていますが、この建物が活躍した時代は、列車が頻繁に到着し、シカゴに向けて小麦やトウモロコシを送っていたのでしょう。その雰囲気をとどめています。近年はこれを巨大化した物流システムが登場し、ものすごい量のトウモロコシを扱っています。それら大規模集積システムは州間高速55号線を走ると至る所で目にします。この保存された穀物エレベータを見ていると、古き良きアメリカの穀倉地帯の景色が蘇ってきます。

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こんな田舎に何故こんな洒落たカフェがあるのでしょう?

<Palms Grill Cafe>
アトランタの街には、とても素敵なカフェがあります。それがパームス・グリルです。こんな田舎町に、なんでこんな洒落たカフェがあるのでしょう?そして何故経営が成り立っているのでしょう?この謎は未だに解決しませんが、近くに大都市がある訳でもないのに、ニューヨークのダウンタウンにありそうな洒落たカフェは確かに存在していました。私が行った時間帯は午後だったのでお客さんはそれほどいませんが、きちんと営業しています。そして美味しいメニューを揃えているのです。おそらく近所の農場で働く人が食事をしにくるのだとは思いますが、これほど洗練されたレストランにどれだけの人が来るのか心配になるほど素晴らしいお店です。もし、アトランタに寄る機会があれば、是非このカフェに立ち寄って店の経営を支えてあげてください。

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アトランタのジャイアント

<Bunyon's Statue Giant>
パームス・グリル・カフェの道を挟んだ反対側に、また不思議なジャイアントが立っていました。これだけみると何のためにここに作られたのかわかりませんが、かなり大きく立派なものです。アトランタに立ち寄った際は是非記念写真を!

< Lincoln>
アトランタを出て30分。ブルーミントン以来久しぶりにある大きな街、リンカーン。ここも大学の街です。2つの大きな大学があります。町の名前はアメリカ大統領リンカーンから来ています。大きな町ではあるのですが、基本的に大学の街で、大学のためのビジネスで成り立っています。
10号線上にホテルやレストランが並んでいます。旅の途中に宿泊するには便利な街です。

<Railsplitter Coverd Wagon>
リンカーンには旧ルート66が走っていますが、それほど見るべきものはありません。してあげるなら、これまたジャイアントなのですが、大きなワゴンが立っています。おそらく看板ですが、あまり意味をなしているように思えませんでした。

<Pig Hip Restaurant Museum>
リンカーンのすぐ南にある小さな街Broadwell。ここにかつてPig Hip Restaurantというレストランがありました。ルート66を旅する人たちに愛されたレストランは、州間高速55号線の登場により客数が激減し営業を終了してしまいました。しかし、経営者はここをルート66の私営博物館として現在も維持しています。私営なのでたいしたものはありませんが、ルート66を愛する人のためにがんばっています。

*コラム*
シカゴというとマフィアという単語が出てくるほど、マフィアのイメージは強いです。現在ではマフィアは一掃され力はないと言われています。ただ禁酒法時代はシカゴはマフィアに牛耳られていました。詳しくは専門書に譲るとして、アル・カポネはじめシカゴ・アウトフィッターズと呼ばれるマフィアの勢力と歴史はとても興味深いものがあります。このマフィアに関してはさまざまな書物や映画があるのでご覧になってからシカゴを旅するのも面白いでしょう。特にアル・カポネが巨大な権力を手にし、その悪を一掃するために奔走した人々を描いた映画「アンタッチャブル」は必見です。
カポネはシカゴ郊外の墓地で眠っていますが、その墓地には彼が殺したマフィアたちも眠っているというのがなんとも奇妙に思えます。

シカゴを出発し、リンカーンまで進んできました。大都会シカゴを過ぎてからは穀倉地帯を南下し、小さな街に残るルート66の遺構を巡る旅でした。
このあたりは、シカゴの影響を受けているので、街は洗練されていて大学のある町もいくつか通りました。大都市が近いので農作物は大量に作られていて、その管理システムは最新式であることもあわかります。きっとシカゴの巨大な商圏の影響がある裕福な場所なのでしょう。それでも郊外に住む人々は人懐っこく、気さくに声を変えてくれました。きっと穏やかな住人が多いのだと思います。

次回はイリノイ州の州都を通り、ミシシッピ川までを紹介します。
お楽しみに。


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