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アメリカ ルート66を巡る旅 03 イリノイ州 南部

今回は、イリノイ州の南部を走ります。この辺りでは、旧ルート66は州間高速55号線と平行して走っています。一部55号線と重なり塗りつぶされていますが、比較的旧道は残っていて、そこには古き良きイリノイ州の小さな町が健在です。急ぐ場合は、55号線を利用すれば効率的です。

今回はイリノイ州スプリングフィールドからイリノイ州/ミズーリ州の州境にあるミシシッピ川までの157kmを紹介します。高速を止まらずに進むと1時間40分程度の距離です。

<Springfeild>
シカゴを出発して約200マイル。途中にブルーミントン、リンカーンという街はあったものの、久しぶりに大きな街に到着します。それがスプリングフィールドという街です。この街はイリノイ州の州都となっており、街の中心には立派な州庁舎が建っています。ダウンタウンにはヒルトンホテル等いくつかのホテルや商店街があります。人口は12万人で、大都市シカゴと比べるとそれほど発展している訳でもなくちょっと寂しい感じの町でした。この街は州の関連事業と大学で機能している街でした。大きな産業は見当たらず、ひっそりとしています。観光の目玉は、第16代大統領エイブラハム・リンカーンのお墓と、彼が住んでいた家です。街はそれほど大きくないので、数時間で観光できてしまいます。

*コラム*
スプリングフィールドという街はイリノイ州の州都というよりは、品の良いアメリカの片田舎の雰囲気がしました。シカゴから旅をしてきて久しぶりの街だったので、ちょっとホッとします。いくつかの鉄筋コンクリート造りのビルがありますが、町の建物のほとんどは木造です。それも2階建てくらいのものです。基本的にはアメリカの小さな田舎町なのです。メインストリート以外は人通りもなく、車の渋滞があるわけでもありません。
私たちが宿泊したモーテルは、アメリカのどこにでもあるHoliday Innです。部屋の内装もサービスも全米に渡って画一化されたつまらないものでした。ルート66を旅する者にとって唯一の不満は、この味気ないモーテルです。スプリングフィールドにはモーテルよりもマシなホテルが数軒ありますので、モーテルに嫌気がさしたら、少しだけ部屋をアップグレードし、この街に宿泊するのもいいと思います。

<Lincoln Tomb>
厳密に言うとルート66上ではありませんが、スプリングフィールドに入るとすぐにリンカーンの墓石があります。かなり立派なもので、せっかくスプリングフィールドに来たなら是非立ち寄りたいポイントです。リンカーンは、奴隷制の拡張に反対し、大統領就任時には国を二分するほどの議論を巻き起こし、結果アメリカ南北戦争に結びつきました。この過程はスピルバーグ監督の映画「リンカーン」で描かれています。戦争は北軍の勝利に終わり、奴隷制は徐々に崩壊しました。後に彼は「偉大な解放者」「奴隷解放の父」と呼ばれ現在でも尊敬され続けています。そんな彼の墓石で、アメリカの過去の歴史に思いを巡らすのも良い経験ではないでしょうか。

<Bill Shea Gas Stand
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ルート66の情報を調べると必ず登場するポイントです。ビルさんが集めたルート66グッズを展示しています。古い看板やら車やらが集められたガソリンスタンドですが、見方を変えるとガラクタ博物館です。でもルート66にまつわる貴重な看板などが所狭しと並んでおり、ルート66を旅する旅行者には思い出に残る場所として人気です。

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日本にあるアメリカグッズ店のよう。ルート66ファンなら欲しいアイテムばかり。

<Cozy Drive In>
旧ルート66にあるドライブ・インです。現在は街の主要道となった55号にあります。周囲は開発され大きなモーテルやレストランが建ち並んでいますが、Cozy Drive Inは、昔ながらの店を維持しています。ここは、あのアメリカンドッグ(アメリカではコーンド・ドッグと呼びます)が発明された店。是非衣のついたソーセージを食べましょう。

*コラム*
ルート66沿いには2種類のレストランがあります。ひとつはCozy Drive Inのように個人経営の店です。チェーン展開の話が来ても断り、自分たちの味を守り続けているタイプ。もうひとつはマクドナルドを代表する全米チェーン店で、どこで食べても同じ味のレストランです。アメリカを旅しているとチェーン店がとてもおおく驚かされますが、ルート66には、何十年も前から家族で経営しているレストランが生き残っています。そこには歴史、そして人とのドラマがあります。どちらが良い悪いではないのですが、このような個人経営のレストランに立ち寄るのがルート66を旅する醍醐味でもあります。

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アメリカンドッグ発祥のお店

*コラム*
ルート66を走っていると数々のジャイアントに出会うことはお伝え済みです。すでにスプリングフィールドに来るまでに数体のジャイアントに出会いました。そしてこの街にもいくつかのジャイアントがいます。下のジャイアントは、他のジャイアントと異なり、オリジナルのモデルです。私がルート66を走破して数々のジャイアントを見てきましたが、唯一これだけが他のジャイアントと違う形でした。おそらく60年代にジャイアントの宣伝が流行った頃に地元の人が自分たちで作ったのではないでしょうか。

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他では出会えないジャイアント

そして、バイヤンという通信販売で購入したジャイアントをアレンジしたジャイアントも健在です。これはスプリングフィールドのガソリンスタンドにあったジャイアントです。個性が出ていて地元でも人気があるそうです。

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典型的なジャイアント

<Historic Brick Road>
旧ルート66は、スプリングフィールドを抜けると2つにわかれます。1926年から30年までは州間高速の西側4号線がルート66でした。そこにレンガでできた道が残っています。まるで「オズの魔法使い」にでてくるような赤いレンガの道です。かつて舗装技術がなかった頃は、このあたりの道のおおくがレンガでできていたそうです。現在は、スプリングフィールドの南のこの辺りにちょっとだけ残っています。

<Litchfield>
1930年以降は、ルート66はルート変更されリッチフィールドを通るようになりました。現在の州間高速55号線のすぐ東側を走る道です。ちょうどスプリングフィールドとセントルイスの中間地点のこのリッチフィールドという街は、とても可愛らいい小さな街です。おそらくルート66が通った頃と景色も建物も同じなのでしょう。レンガ作りの小さな住居や個人商店が点在しています。車を降りて観光するほどでもないのですが、イリノイ州の美しい景色が詰まった場所です。

<Ariston Cafe>
リッチフィールドにあるカフェ。このカフェもかなり古くからルート66沿いで経営しているようで、現在も沢山のお客さんで賑わっています。ここは料理が素晴らしく、日本人の口にも合うレベルです。ルート66を旅する際は、是非ここで食事を採るようなスケジュールを立てるべきです。店内はきれいで洗練されて、アメリカの田舎にある品の良いカフェです。私が行ったのは日曜の昼でした。教会帰りのフォーマルな衣装の老夫婦や家族がこのレストランを訪れていました。客は皆顔見知りのようで、店の主人はひとりひとりに声をかけていました。私のような旅行客にも気さくに話しかけてくれ、知り合いの日本人の話や街の話、店の歴史などについて長々と時間を費やしてくださいました。なんとアットホームな場所なのでしょう。ルート66を旅すると、このように見知らぬ人が話しかけ時には長話になることが度々ありました。これこそがアメリカ中西部の魅力ではないでしょうか。

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是非、立ち寄ってほしいアリストン・カフェ

<Brooks Catsup Bottle Water Tower>
アメリカ中西部はほとんど真っ平らです。なので街の各家庭に送水する場合、一度水をくみ上げ、そこから重力の力で各家庭に水を流すのです。そのため、給水塔が街に必ず1つ以上あり、それが街のシンボルとなっています。イリノイ州では、ほとんどが1本足で丸い水溜が上についています。「i」みたいなかたちです。街により色は様々で個性を出しています。
私は旅をする際、この給水塔を探すのが楽しみになってきました。とにかく個性的で、給水塔には街の名前だけでなくニックネームやメッセージが書いてあったりします。
 セントルイスの手前、Collinsvilleには、とても変わった給水塔があると知りました。この街の給水塔の形はボトル型なのです。さっそく行ってみると写真で見るよりかなりインパクトがありました。何でボトルの形をしているか理由は突き止められませんでしたが、ボトリング工場かなにかがあったのかもしれません。

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ちょっと変わった給水塔

<Chain of Rocks Bridge>
イリノイ州最後のポイントです。このポイントもルート66を旅する上で必見です。かつてルート66は、ミシシッピ川を超えるのにこの橋を使っていました。ミシシッピの川幅はとても広く、いくつかの橋を繋ぎ合わせて川を越えていたのです。現在は、橋のすぐ北側に州間高速55号線の立派な橋がかかり、そこを通過します。この歴史ある方の橋は老朽化が激しく閉鎖されていましたが、現在はレストアされ歩行者のみ渡ることができます。ただし歩いて渡るにはかなりの時間がかかります。ほとんどの観光客は橋の入り口まで車で来て写真をとり戻っていきます。この橋に行くまでは、Chain of Rocks Rdを走りますが、途中の橋は一方通行なので注意してください。信号に気づかず、橋に侵入してしまうと、反対側から車が来て大変迷惑になります。あと、ルート66を旅する上で注意すべきことは、ルート上で唯一治安の大変悪い場所を通過します。それが、このあたりです。チェーン・オブ・ロック・ブリッジは周辺には街がないので大丈夫ですが、この橋の南にあるイースト・セントルイスは全米屈指の治安の悪い地域です。なるべく近づかないようにしましょう。特に夜間は行くべきではないです。

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旧ルート66のミシシッピ川を渡る橋

 <そしてミズーリ州へ>
3回にわたりお伝えしてきた「イリノイ州編」を終わりにしようと思います。直線距離にしてシカゴから300マイル、州間高速55号線を飛ばせばイリノイ州を縦断するには5時間ほどです。しかし旧道ルート66をゆっくり走ると4~5日かかります。寄り道をしながらアメリカの歴史を感じ、地元の人々と語らう時間はとても贅沢な時間でした。皆さんも急がない旅をしてみるのはどうでしょうか。
次回はミシシッピ川を渡り2番目の州ミズーリ州に入ります。この辺りから景色は一変していきます。そしてここからが真の中西部、かつての未開の土地となります。そして「怒りの葡萄」でスタインベックが描いたルート66が始まります。
お楽しみに。




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