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タッパン・ジー・ブリッジ Tappan Zee Bridge

ニューヨークを流れるハドソン川にかかる橋と聞くと、殆どの方がイメージするのが、マンハッタン島のワシントンハイツとニュージャージー州フォート・リーを結ぶジョージ・ワシントン・ブリッジ(GWB)ではないでしょうか。マンハッタンから見ると、ハドソン川は川幅が広く橋がGWB以外に架かっていません。その代わりマンハッタンとニュージャージの間にはいくつものトンネルが掘られています。皆さんが知っているホーランド・トンネルやリンカーン・トンネル以外にも鉄道専用のトンネルがいくつかあります。
では、GWBより北側は、どうなっているのでしょう。GWBから北にある橋は?トンネルは?
実はジョージ・ワシントン・ブリッジから北に30Kmにあるタッパン・ジー・ブリッジまでハドソン川を渡る手段はないのです。今回はこのタッパン・ジー・ブリッジを紹介します。

タッパン・ジー・ブリッジは1955年に開通しました。ハドソン川でももっとも川幅の広いところにかかる5キロという長い距離の橋です。この橋によりニューヨーク州の北バッファローとニューヨーク市を結ぶニューヨーク・ステート・スルーウェイ(インターステート87号線)が完成しました。
名前の由来はネイティブアメリカンの地名とオランダ語の海を意味するジーをあわせて命名されました。1992年から第50第ニューヨーク州知事のマルコム・ウィルソンという名前が追加され、正式名称は「マルコム・ウィルソン・タッパン・ジー・ブリッジ」と言いますが誰も呼んでいません。通常地元民はタッパン・ジー・ブリッジかタップと呼びます。

旧タッパン・ジー・ブリッジ

建設当時は朝鮮戦争の最中で建築資材が足りず耐久年数が50年しかない橋として架設されました。なので、早めの立て替えが必要でした。1995年に耐久年数を超え、交通量の増大も深刻化してきました。しかし立て替えにはかなりの出費が予想されたため崩壊の危険があるにも関わらず必要最低限の修繕で維持していました。
そんな状態が続く中、1999年に立て替えの議論が本格化しました。現在の橋を大規模改修する案と根本的に立て替える案の2つのどちらがいいのか、さらには車線の数や鉄道を敷設するかなども議論されたそうです。2011年、最終的に新しい橋を作り直すという案が採決されました。車線は4車線×2の8車線となり鉄道は見送られました。旧橋は3車線×2で交通量によりセンターの車線を動かす方式でしたが、新橋は車線が増え路肩や歩行者用道路も整備されるので道幅はかなり広くなります。デザインも変更されます。トラス型の橋は撤去され新しい橋はケーブル・ステイという構造の美しいものになります。総工費は39億ドル(4000億円)となりかなり大規模な工事となります。

プロジェクト・タイムライン

2013年の秋から基礎工事が始まり、橋の直ぐ北側に新しい橋を建築します。そして新しい橋が稼働したら古い橋を全て取り壊します。そして2016年には新しい橋が開通する予定でした。2014年の橋の通行料金は5ドル。1990年代は2.50ドルでした。新しい橋になるとさらなる通行料金の値上げが予定されていました。

旧橋(奥)と新しい橋の建築

ロックランド郡、オレンジ郡の住人にとっては毎日の通勤路での渋滞緩和が恩恵となりますが、通行料金が上がるのは辛いところです。さらに鉄道でマンハッタンに通勤している人は今まで通りニュージャージー経由でしか通えず、橋に新しく作られる鉄道とMTAのハドソンラインを使っての時間短縮も不可能となりました。このあたりは残念なところです。
マンハッタンやウェストチェスターからロックランドのモールに行く人やアウトレットモールに行く人にとっては便利になるはずです。とにかくここ数年は渋滞が激しかったので、その解消だけでも大きなメリットになることは間違いありません。

古い橋の爆破解体。後ろ(北側)には新しい橋が完成している。

工事は難航し、何度か期日が延期されました。橋は片側から変更して運用されたのでしばらくは新旧2つの橋が使われていました。並行して2つの橋が見える光景はとても奇妙でした。最終的に、北/西行きが2018年8月16日、南/東行きが10月6日に開通しました。

2017年11月からは古い橋の解体がスタートし、大きなトラス橋の爆破解体はテレビのニュースで中継されました。今でもYouTubeなどでこれら工事の過程を見ることができます。

夜の新ブリッジ

料金は、7.48ドル、EZ-passを使うと5.75ドルとなります。

ニューヨークは、マンハッタンを訪れる人や通勤客だけでもかなりの渋滞になるのですが、この地域を通過する車や貨物も大量です。特にボストンなどからワシントンD.C.にかけてはアメリカの大動脈となっています。この大量の住人と貨物はハドソン川を渡る必要があります。GWBは慢性的な渋滞で、これ以上キャパを増やすことができないので、Tappan Zee Bridgeは、これからのニューヨーク・メトロポリタン・エリアの経済に大きく貢献するでしょう。

2024年になり、新しいタッパンジー・ブリッジは渋滞が緩和されました。車線も車幅も増え事故も減っています。
しかし新たな問題が勃発してしまいます。船が通過する部分はワイヤーケーブルを使った斜張橋なのですが、設計ミスで強度が十分ではないことがわかりました。今後速やかに全てのケーブルを張り替える必要があるそうです。ただちにケーブルが切れて橋が崩落することはないという発表がありましたが、一刻も早く安全を確保して欲しいです。

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