見出し画像

007 No Time To Die イタリア マテーラ

007 映画「No Time To Die」のオープニングシークエンスで登場するイタリアの街、マテーラを紹介します。

映画では、マテーラでのジェームス・ボンドが愛した女性との恋愛と別れが描かれています。この2人の関係がこの後のストーリーに大きく影響を与える重要なシーンとなっています。さらにマテーラで実際に撮影した激しいアクション、そしてアストン・マーティンDB7のカーアクションなど、この町の美しい景色と共に007映画の名オープニングとして語り継がれるものとなっています。

今回は、そんなイタリアにある世界遺産のひとつ、マテーラを紹介します。
映画にも映る石作りの古い街並みはサッシと呼ばれています。サッシとは、古くから岩山を削って作られた洞窟住居のことです。昔の人は山をくり抜いて住んでいたのです。その後、この穴の外に石作りの家が作られました。無数の穴が集まり巨大な建築物のように見えるこの場所は、訪れた人を圧倒します。この街は1993年に世界遺産に登録されました。観光客はサッシを目指してマテーラを訪れます。

アクセス方法
日本からは直接行ける場所ではありません。何回か飛行機を乗り換え向かいます。近い都市はバーリです。バーリからは車で1時間ちょっとでマテーラに到着です。道は単純なのでレンタカーでもアクセスできます。バーリからローカル鉄道FAL線でもアクセスできます。所要時間は1時間から1時間30。
ローマからマロッツィ社のバスが出ています。(http://www.marozzivt.it )
ナポリからマリーノ社のバスが出ています。(http://www.marinobus.it)
不安な方はナポリからドライバー付きの車を1日チャーターしてしまうと便利です。ナポリから日帰りが可能です。

画像1

(映画「No Time To Die」では、この渓谷に橋がかかっているようにデジタル処理されています。)

歴史
マテーラの街の近くにある渓谷にはサッシが何層にも重なって築かれています。街全体を見渡すと無数のサッシが1つの山を覆い尽くしていて、規模の大きさに驚かされます。そしてサッシの古さに気づかされます。このサッシがいつ頃から作られたかは不明だそうですが、8世紀から13世紀にかけて東方からイスラム勢力を逃れた修道僧が住み着き、130以上の洞窟住居を構えていたといわれています。マテーラ周囲からは、旧石器時代の出土品も発見されているため、かなり古くから人々が住んでいたと考えられているようです。
20世紀初頭あたりに人口が急速に増加し、劣悪な衛生環境の住居が増えていったそうです。そのため行政はこの状態を放置できなくなり、1950年代に法整備を行いマテーラ郊外に新たな集合住宅を建設し、サッシ地区の住民を強制的に移住させたそうです。この結果、サッシ地区は無人の廃墟と化しました。
こんな歴史があるサッシですが、1993年に世界文化遺産に指定された後は、これを契機に訪れる観光客も増えました。そしてホテル、カフェ、土産物店などが増え、現在は洞窟住居の5分の1ほどが再利用されています。

マテーラという街
マテーラに到着して街を一望すると、この巨大な洞窟住居はいくつかに区分けされていることがわかります。
1)かつての洞窟住居群
2)現在も住居として使用されている洞窟住居地区
3)観光客が集まるショップやカフェなどが並んでいる地区
4)サッシの奥にある同じ色の壁なので繋がっているように見える新興都市

画像2

1)観光客は、かつての洞窟住居群を見学することになります。実際に歩いてみると階段が多く道が迷路のように張り巡らされていて、とても楽しいです。角を曲がると次々に現れる景色はどれも印象的で、全ての路地を歩きたくなります。殆どの住居は人影もなく寂しいのですが、所々にカフェがあったり博物館があります。そういったところを見て歩いていくのです。よく見ると住居を利用したホテルなどもあります。大きな看板などないので、散策していると様々な発見があってとても面白いです。
2)現在も住居として使用されている洞窟住居地区は、生活の臭いがして家の中から住人の声が聞こえてきます。子供の頃、田舎の町を歩いた記憶が甦るどこか懐かしい場所です。ここの住人はエレベータなど近代的な設備がないので日々暮らすのは大変そうですが楽しそうにのんびり生活しています。意外と若い方が住んでいました。おそらく毎日階段を上り下りしなくてはいけないので高齢の方には住み難いのでしょう。この地区は人のいる気配がしていて現役の街という感じが強いです。直ぐ隣にあるかつての洞窟住居とは全く違う印象です。但しこの地区にはカフェやレストランは少ないです。
3)観光客が集まるショップやカフェなどが並んでいる地区は、イタリアの田舎町といった風情です。サッシから同じ色の建物で繋がっているように見えますが、このあたりは洞窟ではなく建築物です。その中にレストランやお土産物屋が並んでいます。道には車が走り普通の生活場所として賑わっています。ここは、食事をするくらいで観光客が訪れる必要はないでしょう。
4)新興都市は、サッシからなだらかなグラデーションを歩いて行き着く場所です。引いた目で見るとひとつの固まりに見えるマテーラですが、人の住んでいない洞窟住居→人の住んでいる地区→商業地→新興都市となだらかな変化のある街になっているのです。新興都市は普通の街です。銀行があったりスーパーマーケットがあったりします。ここに住んでいる人たちは観光業に従事しているわけでもなく都市生活を送っています。

観光
マテーラのサッシは、数時間で全体を見て回ることが可能です。おそらく日本人の大人で3時間もあれば一周できるでしょう。食事などを考えると4時間程度で十分です。夜のライトアップなどを見るには1泊する必要があります。
見るべきところは、サッシがある岩山です。中には小さな博物館や資料館、教会などが点在していますが、まずは街を歩き尽くすのが面白いです。ちょっと離れた丘の上から全景を見るのも驚きがあります。実際に岩山に張り付いている街の中を数時間かけて歩き回るのも楽しいです。
・ヴィットリオ・ヴェネト広場Piazza Vittorio Veneto 
サッシ地区の入口です。この広場の先に洞窟住居が広がっています。この広場では様々なイベントが開かれています。
・バリサーノの洞窟の家Casa grotta del Barisano
かつてここに住んでいた農民の生活を再現した場所。人間と家畜が同じ穴に住んでいたとは驚きですが、当時の苦しい生活を空想せずにいられない貴重な資料館です。

宿泊
街は治安が良いですが、映画に出てきたような高級ホテルはありません。サッシ内にあるホテルが一番旅行地っぽさを漂わせているので、宿泊はサッシ内をお勧めします。ただちょっと薄気味悪いのでご了承ください。
Residence San Giorgio
Via Fiorentini, 259 - 75100 Matera - Italy
Tel. +39 (0)835.334583
Fax +39 (0)835.330021

映画「No Time To Die」で最も印象に残るマテーラ。日本からアクセスが良いとは言えないので、まだ日本人観光客にはあまり知られていませんが、南イタリアに行くなら是非足を運んで頂きたい観光地です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?