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『関係の終末』は「あの地獄」の始まりに過ぎなかったのか③

ヨンキ作のWebコミック『他人は地獄だ』とその関連作である『関係の終末』。今回は、2作品を横断する形で深ぼり&考察の第3弾です!今回は、『他人は地獄だ』を中心に、登場人物たちの関係性を掘り下げていきたいと思います。

ネタバレがありますので、作品を純粋に楽しみたいという方は後ほどお会いしましょう!


大家のおばちゃんとハシラの関係性

『他人は地獄だ』で、ユウの下宿に入居している人物の中で最も付き合いが長そうで関係が深そうなのは、大家のおばちゃんとハシラと言えるのではないでしょうか。

もしかして親子??

おばちゃんは、初対面の時からユウのことを親し気に「青年!」と呼んでいますが、ハシラのことは「あの子」と呼んでいます。一見、気さくなキャラのおばちゃんですから、ハシラのことを自分が付けたあだ名で呼んだり、あるいは親し気に名を呼んだりすることがありそうなのに、です。

その上、ハシラとおばちゃんは目の雰囲気が似ていることもあり、読者の中にも「もしかして親子なんじゃ…?」と思ってしまった人は多いようです。

また、『他人は地獄だ』の中盤で、201号室にユウが入ってしまった時、女性に抱きしめられている幼いハシラの写真を発見します。女性は後ろ姿しか映っていませんでしたが、背格好などからユウはもしかしたらおばちゃんかも?と感じました。

『関係の終末』では二人の関係性のヒントが

『関係の終末』では、マサルと彼女のユイが訪れた民宿の先客であったハシラとおばちゃん。不穏な雰囲気からか、心中を考えているのではないかと危ぶまれているほどでした。

民宿の人間が心配していた通り、心中を図ろうとしたハシラとおばちゃん。その時、おばちゃんは「もし助かったら、好きに生きなさい」というような言葉をかけました。

ここからは私の推測ですが、おばちゃんもハシラも自分の中の異常性・加虐性に気づいており、それまでは何とか折り合いを付けようとしてきたのではないか。
でもどうしようもなく、自死に救いを求め、それが叶わなかったのなら(死ねなかったのなら)後は自分を解放しよう、と思ったのかもしれません。

事実、心中に失敗した後ハシラは覚醒し、マサルたちを惨劇の地獄へといざなうのです。

204号室の男は何者なのか

『他人は地獄だ』の舞台となった下宿でひときわ異彩を放っている住人と言えば、204号室の男ではないでしょうか。

メガネに無精ひげにボサ髪、そしていつもタンクトップに短パン姿、というなかなかにパンチの効いた出で立ちです。一言も発することなく部屋の扉の前からこちらをじっと見ていたりなど奇妙な行動が多いのも特徴。

『関係の終末』では『他人は地獄だ』の前日譚が描かれており、ハシラとおばちゃん、マルの出会いなどが描かれていますが、この204号室の男は登場しません。

度々刃物を持って他人の部屋の前に立っていることから、いちばん怪しい人物と思えますが、彼はどうやってこの下宿に流れ着いたのでしょうか…

ハシラの中の他住人たち

控えめに言っても、『他人は地獄だ』の下宿の中でボス的存在であることは間違いないハシラ。大家のおばちゃんでさえも、何かあるごとに「あの子が…」とか「あの子に怒られちゃう!」などと言って気を遣っている様子です。

そんなハシラの目には、他住人はどのように映っているのでしょうか。ユウのことは、「私はあなたのことが気に入っているんです…」なぁんて直接本人に言っていましたけど…。

ハシラとマル

仲間?それとも主従関係?

『関係の終末』では、ハシラとおばちゃん、マサルとユイが宿泊していた民宿の従業員がマルでした。長身細身の男性で、斜視と吃音が特徴的です。

ユウが下宿に来て間もない頃、マルが夜間に大きなゴミ袋を移動させている所を目撃しました。偶然(?いや、ちがうよな)後ろにいたハシラが、「マルさんはいつも、おばちゃんの手伝いをしているんですよ」と言っていましたが、それは(マル個人の)善意からなのでしょうか、何かそれとも他に関係性が??

ジュンの歓迎会?の時も率先して食堂に来てパクパク謎肉を食べていましたし、一見、ハシラとマルは下宿先の良い仲間同士に見えなくもありません。

・マルの発言や主張を快く思わないハシラ
カン先輩(ユウの会社の社長であり地元にいた頃からの先輩)の自宅を襲撃した時も、ジュンを監禁した時も、またそれ以外も度々マルとハシラは口論になっています。

マルがいきなり取り乱したり、暴言を吐いたというなら分からなくもないですが、冷静に自分の意見を言っただけなのに

「ずいぶん、良く話すようになりましたね?」だとか
「あなた、この仕事向いてないんじゃないですか?」など終始高圧的で聞く耳を持ちません。

・ハシラにとってはマルもただのコマの一つ

『関係の終末』で覚醒した後、ハシラはマサルの元に指示を仰ぎに行きます。その直前まで、マルと一緒にマルの上司であるオーナーを手にかけていたのに、何事もなかったかのように…

その後もマルはハシラに加担をし続け、下宿まで一緒にやってきますが、ハシラにとっては、あくまで(マルが)勝手にやったことであり、利用価値のあるコマの一つに過ぎないということなのでしょうか。「作品」ではなく。

ハシラとマルの違い

相手がマルであろうが誰であろうが、自分の支配下に置こうとするのがハシラのやり方です。それは、相手を気に入っていようがいまいが変わりありません。

一方、マルはと言えば、ハシラと似たような残虐性を持ち合わせていますが、それは自身の抑圧からくるものです。物言わぬ動物に害を加えたり、前職での上司を手にかけたり、ハシラに不満を募らせたりということもすべて地続きです。

生まれながらのサイコパスなのか、環境によって作り上げられてしまったものなのか、その違いが二人の違いなのかもしれません。

マルはなぜハシラに牙を向いたのか

『他人は地獄だ』のクライマックスでは、ハシラと主人公ユウの対峙が描かれますが、これまで虐げられ続けてきたマルのハシラへの逆襲も描かれます。

ハシラの言うところの「仕事」と「作品創り」にこれまで協力し続けてきたマルでしたが、徐々にハシラの支配的な態度と言葉に苦しめられていくようになります。

『関係の終末』では、連日のように暴力的なオーナーにヒドイ仕打ちを受け、抑圧され続けていたマル。
覚醒したハシラを見た時には、「僕を救ってくれる人だ!」と思ってしまったのかもしれません。

ハシラについていくことを決めたマルは、「きっと新しい人生が待ってる」と思ったかどうかは分かりませんが、結局、あの日の・これまでの自分と何ら変わらない毎日だったのです。

不満を募らせたマルが暴走してしまったのも、そういった心情の背景があるのかもしれません。


『関係の終末』は「あの地獄」の始まりに過ぎなかったのか④では、ハシラとマサル、ハシラとユウについて考察していきたいと思います!




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