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いつか僕たちが、この革命劇に名前を付けよう。

「ね、貴方は大きくなったら何になりたい?」
「いきなり何です」

赤と黒が入り混じる空を見つつ、女性は言った。感慨深げに目を細める女性と対称的に、少年は目を見開いている。時折ゴーグルを調整している姿には緊張感があるが、会話をする程度には余裕もあるらしい。

十人程度による簡素な山中のキャンプは暗い。いくつかの控えめな灯りも、すぐに消灯できるように全員が備えている。
彼の視界には、依然変わらない山の様子が映し出されていた。動物や一般人は隠蔽結界で避けている。警邏隊もいなければ、迷い込む旅人も、幻獣の類もいない。油断は禁物だが、現状問題はない。だからこそ、彼女の軽口にも付き合っている。

「いきなりかな。もう付き合いも長いでしょ」
「あの一件が春だから、半年ですか」
「そ、劇団生活にも慣れたでしょ。夢や希望のひとつでも持てたかなって」
「希望、ね。多少は慣れましたけど、そういうのは、まだ」

女性は、その答えに、あるいは半年前からほとんど変わらない素っ気ない口調に少しだけ気を落とした。

「そっか。……ごめんねぇ」
「なんで謝るんですか。謝るんなら座長も監視やってください」
「それはそれ、これはこれだ」

嘯く彼女はすっと笑みを消し、少年の物と似たゴーグルを装着する。こめかみ部分をとんとん、と細く白い指で叩くと、一瞬、仄かにゴーグルは光を帯び、間を置かず遠方の景色を映す。
座長の視界には少年の故郷の半年前と似た暴動が広がっていた。支配階級を襲う市民を率いるのは、以前から従来の管理に懐疑的な市警の青年である。彼が一声号令をかければ、怒りの波、あるいは炎雷の雨がその方向へ向かう。統率された蜂起。単に煽るだけでは成し得ない、描き導いた脚本通りのクライマックス。

「あたしには、あるよ。あいつと誓った約束。目標がさ」

ゴーグルをかけたまま、彼女は静かに笑った。

爆発がもうひとつ起き、闇を明かす赤と星を覆う黒がさらに勢いを増した。

【続く】

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