街角フロートマーダー
『さて、そんなこんなでもうお別れのお時間がやってきました』
ナイフは殺風景な部屋の中に入り込む街灯で幽かに輝き、蛍の如く尾を引きホルダーへ収まる。逆側に拳銃。傍目にはだらしなくレシートで肥えた財布を仕舞っているようにも見えるが、実態は無造作な二種類の死。
『秋も深まってこの時間から外が真っ暗。運転中の方もそうじゃない人も気を付けて』
ケーブルから抜いたスマホをスワイプし、標的を確認。ある区画で貧困層へ薬を捌く"西"から流れてきた小悪党。
『そんじゃ!今日もお相手はDJルルでした』
窓際のラジオはCMを流し始めたが、男は電源を切る。喧伝されるショッピングモールを造るとき、男は"東"の反対派ヤクザを数拠点消した。その前の諍いでは"西"の幹部一人を"海"に売った。経緯は忘れた。
「行くか」
何処つかずの請負殺人者は、今日もふらり、19時からの番組を惜しみながら家を出る。
【NEXT PROGRAM : 朝一朝市レポート 静毒の屋台】
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