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アカシック・カフェ―全知と珈琲の案内人―

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人類は全知を手に入れたけれど、全能とは程遠かった。 少し不思議系、全知案内人喫茶のおはなし。
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2019年1月の記事一覧

アカシック・カフェ 【1-3 ハッピー・ルーイン】

アカシック・カフェ 【1-3 ハッピー・ルーイン】

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「常川辰真。私の兄のような人で、弟のような人で……恋人です」

チリチリと目元が軽く痺れる感覚。伊万里様。に、重なるように小さな女の子。テーブルがデスク……学習机になる。並んで、もうひとつ。やんちゃそうな男の子。机の上には教科書。

「五年前の今日、私たちは待ち合わせをしていました。地元の駅の、彫刻のところ」

行ったことも見たこともない土地。ちらりと見えた、初めて読む

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アカシック・カフェ【1-4  ベター・ルート】

アカシック・カフェ【1-4 ベター・ルート】

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二週間後、同じ時間に訪れた伊万里様は、何の偶然か、五年前のあの日と同じ服を着ていた。
……偶然なワケがないけれど、触れないことにした。決意したこと、それが大事であって、俺がどうこう言うべきじゃない。

「準備が出来ましたので、ご都合の合う日にご来店ください」

俺の案内の重みに触発され、五年ぶりに袖を通したそれは手入れも万全で、着用はしなくとも大切にされていたことが、全知

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アカシック・カフェ【1-epilogue】

アカシック・カフェ【1-epilogue】

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しゃんと背筋を伸ばし、涙を拭った伊万里様を見送った俺に、背後から常連の女子高生たちが声をかけてきた。

「やっちー、今から?」
「おう、休憩終わり」
「ラッキー!私スコーンとカフェラテ!」

文字通り姦しい先陣を切るのはシュウカ。いつも通りのご注文、なんだけど……いつもよりうるせぇ。声と身振りの大きさで五感のキンキン具合が二冠王だ。

「はいはい。ハヅホは?」
「……あた

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