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#バディ
太陽の仮宿と月光の姫君
高度に体系化された魔術は科学と見分けがつかない。
リンゴを投げれば落ちるように、決まった手順で杖を振れば風が吹く。そういう風に出来ている。
〈座の一端/贖罪の木片/西から東〉
「黙れッ!」
俺は入り組んだ都市迷宮の上方、辛うじて詠唱の聞こえた方角へ一喝した。怒声は俺たちを狙う魔力の流れを遡り魔術師を卒倒せしめた、ハズだ。姿は見えないが、遠くで魔力の群れが消えた。
「やりすぎだよマハル!」
「
俺と元俺の国喰いのススメ
★
「ひったくりだね」
「……捕まえろって?」
「勿論」
俺の隣の小さな影は長い髪を波立たせ、軽く頷いた。
俺は、背を押す風めいた銀色を視界の端に見て、両手の暗器グローブをぎちりと嵌め直す。黒い革が指を締め付け、瞬間、血が巡る感触が強くなる。
「焼き肉屋の路地。突き当りの右、質屋の裏口への階段前」
つま先で地面を叩く。重く硬く、仕込んだ金属はいつも通り頼もしい。
「一発殴ったら、懐から銃