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《さばかれえぬ私へ》ー忘れえぬ企画展の備忘録ー

東京都現代美術館で2023.3.18-6.18まで開催されていた「さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」。会期末に慌てて行きまして。色々と考えさせられていたのに、この1ヶ月ほどで忘れてしまいそうになるので(加齢による記憶障害か?)、記録に残しておこうと書いております。

さばかれえぬ私へ」というタイトルですが、アーティストのお2人、志賀理江子さんと竹内公太さんが決めたということで。イチ鑑賞者としては「おぉ!」となりました。

展示作品は8つほどですが、4箇所ほどの展示室を贅沢にドンドーンと使っていました。

スタートは横長スペースいっぱいの志賀さんのビデオインスタレーション。ここまで大きい画面は見たことなかったかも。ダメになるソファがたくさん並んでて、ゆっくり座って見れました。ここの映像だけ撮影禁止でちょっと残念。でもこれはあの巨大横長スクリーンで見ないと意味ないっていう作品なのかも、って勝手に推測しつつ。画面と見る人の距離が近いため(スペースの奥行きがあまりない)、横長画面全体を鑑賞者がみることが不可能だからなのか、映像の人物がアップになる場所がところどころに分かれていて。文章で説明するの難しい。
内容は2011年の被災した人のその後のやるせなさや、その時亡くなって遺体がまだ見つかっていない人の死についてなど、重いテーマでした。


赤やら人名やら、はみ出てる

続いては、第二次世界大戦末期の「風船爆弾」(日本軍→米国)について、米国国立公文書館で調査して、風船が目撃されたり回収された場所を追跡している竹内さんの作品。


追跡した場所の写真を切り取って風船を作っている

もちろん私は「風船爆弾」なんて知らなかったし、作品をセンス良く丁寧に仕上げていて。以前森美術館での「六本木クロッシング2022展」で竹内さんの作品をみた時も思ったけれど、社会の忘れがちな現実をアートに落とし込むのが巧みです。

お2人とも忘れられた、もしくは知られていない社会問題を作品として鑑賞者に訴えかけてくる。強いジャーナリズムを感じました。その訴えから私自身が何を受け取ったか。
まずは、知らなかった現実を教えてくれてありがとうの感謝です。そしてタイトルにもあるように、さばかれえぬ社会問題って日々たくさんあるのですが、少しでも意識して自分なりに考えてみようって思いました。自分は活動家ではないし、日々のワークに奔走していてそれどころではないのですが、頭の中でぐるぐる〜体操〜してみたのでした。
そしてお2人の、作品にして提示する熱量は何なのか、知りたいと思いましたね。
そしてそして、自分が悩んだ時、少なからず社会問題が起因している悩みだったならば、今回のような展覧会を思い出したいですね。社会にはまだまだイシューはたくさんあり、自分も問題を抱える当事者であるんだという認識を持つことで、世界の中心は自分だーとか、悲劇のヒーロー、ヒロインだー、なんていう思いからは解放されるような気がしました。
まさにコスパの高い展示!そもそも無料だったからコストは交通費ぐらい。
展覧会をみるだけでなく、その後も何かあったら思い出して反芻しようとしているワタクシ。こうして、備忘録となったとさ。

 
※タイトル画像は竹内さんの作品より。作品リストより→2013年6月に福島県いわき市の古い劇場の解体されるスクリーンの位置にカメラを設置して、解体される劇場を内部から撮影しています。その後、劇場で使われた銀幕スクリーンと椅子、小型カメラを用いて映像インスタレーションを組み立てています。解体中の映像と映像を見る鑑賞者とが重なりあい、鑑賞者は自分が劇場に座っている様子を疑似体験できます。
私もベンチに座って参加しています。


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