日々、心を空にする

 朝は六時半に目覚ましが鳴る。自分と闘って、ようやくベッドから出るのは四五分くらい。そこから、もう心を空にする。ルーティン作業に集中する。食前の薬を飲む。暖房の前で服を着替える。眠っている犬にキスしてから、朝ごはんの支度をする。たまに昼用のおにぎりも用意する。歯を磨いて、申し訳程度のメイクを施し、水筒に水を入れる(水だと後で洗うのが楽なのだ)。

 最寄駅は自転車で五分。一番空いてる車両に乗る。下板橋駅で停まるとき、陽を浴びて白く光る花の木が好き。いつか、ここで降りられたら、とぼんやり思う。ポイントは、できるだけ何も考えないことだ。目に映る景色を見ているだけ。決めたどおり、動くだけ。間違えて、今日の仕事のことなんて考えてしまえば、喉が詰まり動けなくなる。私はいつからこうなってしまったんだろう。いつまで、こうなんだろう。

 電車では座れないので基本立っている。車窓から朝陽がたっぷり差し込む。光を浴びた私は、綺麗に見えることを知っている。今、ここにあの人がいてくれたら。まつげの暖かさで光を感じる私を見ていてくれたら。安心して目を閉じられるのに。でも、あの人はいない。だから今日も私は仕事に向かっているのだ。

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