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新涼

吹く風の涼しくもあるかおのづから山の蝉鳴きて秋は来にけり
源実朝「金槐和歌集」

以前と同様ではありますが、40数年あまり大河ドラマを観ていない歴を更新する身のため、

現作品で源実朝が出てくるのか、出てきたのか、誰が演じたのかは全く知らないのですが、

実朝は暗殺された鎌倉幕府第三代将軍で、その歌は万葉調ともいうべきおおらかで重厚味があり天才とも評される人だそうです。

冒頭は実朝の中でも名歌と言われている歌だそうで、解釈は特段難しくはなく今の時候にふさわしいものかと。

一方で小林秀雄は実朝を高く評価しているものの万葉調でおおらかなというような見方には懐疑的であり、

実朝を取り巻く
「奇怪な世相が、彼を苦しめ不安にし、不安は、彼が持って生まれた精妙な音楽のうちに、すばやく捕らえられ、地獄の火の上に、涼しげにたゆたう」(小林秀雄「モオツァルト・無常という事」)

そして
「その叫びは悲しいが、訴えるのでもなく求めるのでもない。感傷ももなく、邪念を交えず透き通っている。決して世間というものに馴れ合おうとしない天稟が、同じ形で現れ、又消える。」(同上)

として、
実朝に深く寄り添っていることにも感銘を受ける次第です。

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