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販促コンペで学んだ、アイディアの育て方、馴染ませ方

販促コンペ出場を通して、アイディア出しにはコツというかポイントがあることを知った。それらを押さえておかないと、筋の良くない考えをこねくり回し続けてしまったり、脳をどう使えば良いか分からず、何も生み出せない時間をずっと過ごしてしまったりする。

一般的に良いアイディアは、異なる二つのモノの掛け合わせだとも言われ、上の記事の後半に書いた「他で人気だった手法を適用する」という手法が使われる。元のアイディアの切れ味が良いから他の分野でも使われるわけだが、その一方で他の分野に単純に移植すると唐突感が出てしまうことが多い。

この記事では、その唐突感への対応方法というかアイディアの馴染ませ方を提案する。生まれたてのアイディアをどう育てるかというプロセスの提案とも言える。これは今年の販促コンペにて私が資料提出の直前まで実際に悩んだ経験に基づいている。まだ販促コンペの結果が公開されていないので、私が提出した事例を使うことはできないが、別の具体例を使って説明してみる。


Step1. アイディアを幅を持って捉える

適用できそうな良いアイディアを見つけた場合、移植前の実例に執着してしまい、そっくりそのまま使おうとしてしがちだ。しかしながら初期のアイディアには、まだまだ多くのバリエーションがあり得る。つまり単に大方針の候補が出た程度に捉えた方が良い。

例えば、「商品に可愛い花が添えられると買いたい気持ちが高まる」という他分野の事例があったとする。それを使って別のアイディア出しに適用する場面を考える。適用先として、例えば商品のパッケージに可愛い花を描けば、顧客が増えるだろうといった感じだ。

この時点では、どんな花をどんなタッチで描いて、箱のどこにプリントするかのパターンは無限にある。だから最初に可愛い花柄の箱というアイディアが気に入っても、それはまだ大方針でしかなくて、その案の集合の中に、キラッと光る案もパッとしない案も混ぜこぜになっている段階だと言える。その中の最も筋道の通ったキラキラしたアイディアをこれから見つけ出す。

Step2. その商品が持つ本質と関連づける

アイディアを馴染ませるには前の記事の前半にも検討した「その商品やサービスの本質」に再度立ち返ることが重要だ。例えば、アイディアの適用先が肉や魚の冷凍食品の通販サイトの顧客増のための施策だとする。

このサービスの本質を考えてみると、通販で自宅まで配送されることで表面が一度も溶けることなく、自宅の冷凍庫に入れられるというのは、本質的な提供価値の一つかもしれない。なぜなら実店舗で買ったら帰宅時に溶けて、その部分だけ焼いても水っぽくなってしまう可能性があるからだ。

ただ、このままでは温度管理の価値と商品パッケージへの花柄の印刷が結びついていない。その二つを繋ぐ理屈を作り、筋道の通ったアイディアに仕立てていく。例えば、温度管理の質を証明するためにパッケージで表現するといった形だ。温度が高くなると変色するインクで花を描けないかという感じに具体化していく。つまり花の色が変わっていないことで、消費者に鮮度が保たれていることの証明になるというアイディアだ。ここまで検討が進んで初めて、描くべき花やその特徴を特定できる。鮮やかな色の花びらを持つ花で、花びらの大きい方が差が分かりやすくて良いだろう。

この作業は、アイディアと本質的価値を繋ぐイメージである。本質的価値は言語化されていないことも多いので、アイディアとつなげるために、あえて言語化して明確にするようにする。一つでないこともある。これがピタッとはまると、なんで今まで思いつかなかったんだろうというくらい自然なストーリーラインができる。逆に頑張っても繋がらないアイディアは、誰が聞いても強引に感じるので、アイディア単体が良くても見送った方が良い。

Step3. 本質的価値の検討とアイディア出しを往復する

実際には、本質的な価値を考えているうちに、花のプリントよりもっと良さそうな案が出てくることが多いと思う。逆に、気づいていない着眼点が見つかり、全然違う別の案の適用に興味がいくこともあるだろう。こうして行ったり来たりしながら、アイディアの案出しと本質の捉え直しを繰り返す。じわじわとドンピシャな案に近づけていく感じ。このステップは時間がかかるし、辛抱強さが求められる。ここにかかる時間やエネルギーを見積もっておかないと、このプロセスを乗り越えられず、筋は良さそうなのにもう一歩何かが足りないという状態で終わってしまうので注意が必要だ。

様々な思考回路を持つ人との会話でアイディアを育てる

今回3人のチームを組んで、人はそれぞれ得意な脳の使い方があるのだと知った。他の分野からアイディアを持ってくるのが得意な人もいるし、本質的な価値と繋ぐのが得意な人もいる。ズバッと新しい方向性を出すのが得意な人もいれば、細かな工夫点やオプションを積み上げるのが得意な人もいる。刺さるキーワード作りや、掛け言葉やダジャレを思いつくのが得意な人もいる。これらのスキルは、広く言えば、どれも発想力なんだけれど、脳が活性化するタイミングはそれぞれ違う。だからこそ、このアイディア作りというプロセスを複数人のチームで進める価値があるし、得意分野に異なる人が集まる多様性のあるチームが力を発揮する。異なる特徴を持った人たちが集まって、異なる場面で発想力を発揮するから、多くの人を惹きつけるアイディアに仕上がるのだとも思う。

この記事を通してアイディア出しという人間の脳の神秘的なプロセスを、私なりに少し紐解けた気がして、とても面白かった。日頃コンペに参加する機会はなかったのだけれど、こんなに多くのことを学び、満足感を得られるのならば、これからも積極的に色々なコンペに出てみようかなと思えた。コンペは手段、学びが目的にはなってしまうが。改めて、この企画に誘ってくれたメンバーとともに戦ったメンバーに感謝。ありがとう。

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