初恋はずっと大切にしておきたい

私の初恋は他の人に比べると遅かったのかもしれない。

20歳の時、さみしくて友達づくりのアプリをインストールしてた。そこで出会った1人の人に私は恋をすることになる。

今思うと、そんな勇気がよくあったなと思うけれど、そのころは生きることに必死で、自分を取り繕うことに対しても必死だった。とにかく、安定している人間に思われたくて、嫌なことがあっても友達に相談することもできなかった。

そんなときアプリに居る人には、弱音とか愚痴とか聞いてもらうことができた。それはよく考えると今も一緒なのだけど、そこで出会った自分より2つ上のお兄さんに恋をした。

恋をしたといっても、そんなすぐに恋をしたわけではなく、いつも学校が終わると家に帰るまでの道のりを電話してもらい、日常についての会話をしているだけ。すごく居心地が良かった。

お兄さんは、社会人になって上京してきていて、特定の友達がいるわけでもないし、毎日暇だからといって私の話に付き合ってくれた。学校で起きた嫌なことにも真剣に相談に乗ってくれた。

そんなある日、会ってみようという話になった。人見知りな私は会う勇気もなく、このままの関係でいたいと思っていたのだけれど、お兄さんの方から、「1人じゃ怖いだろうし友達も一緒にご飯でもどう?」と誘ってくれたのだ。

私にとってはすごくうれしい言葉だった。私のペースで許してくれて、私の気持ちを汲んでくれる。なんて素敵な人なんだろうと、感動していた。実際に会えるようになるまでも半年くらいかかっていたので、半年間電話だけで過ごしてくれていたのだ。

半年間たくさんの話をした。好きな趣味の話や、家庭の話など、こんなにたくさん人に自分のことをざっくばらんに話すことはないのではないかというほどに。

お兄さんに会った日、最初は本当に緊張して何1つ自分から話すことができなかった。1時間くらい友達とお兄さんの会話についていくのがやっとで、お兄さんが「これ以上自分で話さないなら、俺は帰るよ?」と声をかけてくれて、やっと少しずつ自分で話せるようになった。

その日は結局ご飯を食べて、少しお茶をした。友達は最寄りが違ったので、駅まで送ってから、お兄さんに家まで送ってもらった。男の人と家まで帰るのは初めてだった。

すごく緊張したし、ずっとドキドキしっぱなしだった。少し夜も遅くなっていたし、街を歩いている人たちを見ながら、あの人はどうだとか、この人はどうだとかくだらない話をしながら歩くことがこんなに幸せだとは思わなかった。たまに肩が触れて、またドキドキが増していた。

すっかり、その日で私はお兄さんに恋をしていたんだとおもう。こんなに居心地のいい人は初めてだった。触られて嫌だと思わない人も初めてだった。何より、もっとたくさん、いろんなことが知りたいと思うことが初めてだった。何もかもが初めてで、帰り道の思いですらキラキラしていた。

けど、そんなうまくいくはずもなかった。お兄さんには遠距離恋愛中の彼女がいた。別に遊ぶ相手を探しているわけでもなかった、ただご飯とかできる友達ができたらいいな、と思っているだけだと言っていた。

実際のところ、そんなことはなく、お兄さんはとってもチャラい人だった。フットサルに行けば、いい感じのお姉さんを連れて帰ってきて連れ込んだりしていた。

私は全然相手にされていなかったけど、お兄さんとお出かけができたり、ご飯を一緒に食べたりすることができるのがとても幸せだった。恋かどうかは正直よくわかってなかった。自分にお兄ちゃんができたみたいですごく幸せだった。

暇があるとお兄さんの家に入り浸るようになった。泊まることはせず、学校に行く前に遊びに行ってみたり、学校帰りに夜ご飯だけ食べに帰っていたりしたのだ。

そんなある日、「泊まりにくれば?」と誘ってもらえた日があった。すごくうれしかったと同時に、実家だったので外泊の許可をもらわなきゃいけないことに不安を覚えた。外泊禁止だったのだ。

結局この日お兄さんの家に泊まりに行くことはできなかった。次の日お兄さんの家に遊びに行くと女の人の髪飾りが机の上に置いてあった。

このとき私の中で何かが崩れた。

一緒に居れれば幸せだったはずなのに、この人に愛してもらえた人がいるんだ、本当だったらそこには私がおいてもらえるはずだったのに。色んな感情がぐちゃぐちゃだった。

お兄さんも意地悪で、その日あったことを私に話すのだ。ああ、私はまだまだ子供なんだなと実感した。この初恋は彼女がいるから実らない、実らないのに加えて、私はセフレにもなることができないんだなと、本当につらかった。

セフレになりたかったわけじゃない。でも、この人のそばに1番寄り添っているのは彼女の次に私であってほしかった。

このあと、私は初恋をセフレでもいいからかなえようと動きます。

初めてキスをした。初めてセックスをした。初めてデートをした。初めて一緒に寝た。なにもかもが初めてだった。すごくうれしかった。

一緒にお風呂に入ることも、その中でゆっくり話せることも。抱き着きながら寝れることも、朝起きて好きな人が目の前にいることも。幸せで幸せで仕方なかった。

けれど、私だけ幸せになるなんてことは、到底できなかった。

彼にはセフレが大量にいた。私には隠す気がないので、いろんな人が家に出入りしていることも把握していた。今思うと、ここで離れない自分がバカだったのだけれど、話してくれていることで特別を味わえていると思っていたのだ。

実際問題、彼のセフレは増えたり減ったりを繰り返していた。あ、またこの人のこと切ったんだな。あ、この人新しい人なんだな。そんなことを考えながらずっとそばにいた。

いつか私のことを好きになってくれるんじゃないか、なんて淡い期待を抱いていたんだと思う。

来る日も来る日も彼の気持ちが自分に向くことはなかった。

3年以上の月日を経て、私たちはバラバラに過ごすことになる。

きっかけは私が、この関係に耐えられなくなったから。そして、彼女が上京することになったから。

結婚を視野にいれて同棲することになったといわれ、私たちの関係は解消された。

幸せな解消だったと思う。彼女のことを好きな彼のことも大好きだった。他の人のものにならないのなら受け入れられるし、幸せになってほしいと思えた。

結局、彼は彼女と同棲後、結婚目前に別れることになり、そのあと彼と私は不毛な関係を1年以上続けた。

この初恋は自分にとってはかけがえのない時間で、本当に幸せな時間だったなと、何度思い返しても思うことができる。

つらいこともたくさんあったけど、彼に対して出てくる感情は感謝ばかりで、最終的に他の人と結婚した彼だけども、幸せに笑っていてくれたら嬉しいなと心の底から思う。

少しでも、彼の記憶の中に私がちょっとでもいいから存在していたらなお嬉しいなと思ったりもするけれど・・・

これからも、このさきも、この恋を思い出しては彼のような人に出会えるように(浮気とかは嫌だけどね!)頑張っていきたいと思う。

とっても、幸せな初恋でした。


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