筆圧

ぼーっと勉強してたら高校時代を思い出した 

わざわざとなりに座るくらい仲良しだった、メイクの濃い女の子の丸っこいギャル文字と筆圧の濃さが好きだった 気だるい授業中、よく見つめていた とにかく無気力だったワタシは彼女に憧れていた 毎日のように恋愛相談してきたり、たまには一日中落ち込んでいたり、授業中に泣いたり、爆睡したりしていた そんな彼女のいちばん近くに寄り添いながらもワタシは遥か遠くから眺めていたような ワタシも彼女も生きていた 今も、生きている それは心臓の話でしかなくて ワタシの脳ミソは死んでいた 彼女の脳ミソは「生きている」と毎日せまい教室でうるさいくらいに叫んでいた 笑い声も大きかったが、それ以上に 早弁してても遅弁してても、食べ物をしっかりと噛む彼女の真面目な咀嚼が好きだった 雨でヨレた前髪にヘコむ表情がステキだった 小さなニキビを気にする仕草がステキだった 筆圧の濃さが好きだった 私はじっと見つめていた 彼女の折れたシャー芯が、くちびるを掠ったとき、幽体離脱よりもぼやけた憧れを知った


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