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夏枯れ

初秋
現在、ある外国語の授業を履修している。
あれは、後期が始まってからまだ日が浅い日の午前中の授業だった。


クラスの大半が問題に向き合っている。全問解き終わるには、もう少し時間が必要なのは明らかだ。
4年後期。必修科目。この科目を落としたら留年である。来年4月から働くことが決まっている企業からの内定も取り消されるだろう。
毎回の授業は真剣に臨まなければなと気が引き締まる。

「続きでもよいから回答を見ていきましょう」、教授が学生に伝える。

そしていつも通り、一問につき一人づつ解答を発表し、教授が解答を解説していった。

まだ、10問中6問しか解き終わっていなかった。
「Berapa banyak pertanyaan yang and benar?(10問中何問正解しましたか?)」答え合わせが終わると、教授は点数答えるよう学生に呼びかけた。

点数?
教授のいきなりの呼びかけに驚く。
最初に制限時間が決められていないにも関わらず、クラスの大半が全問を終えていないのにも関わらず点数ですか、、、、不満を感じた。
教授の演習の進め方に不満を感じたのは僕だけなのかな?
4問しか正解していないことに落胆する。時間がなかったから仕方ないか。言い訳を頭の中でこねる。

「Empat puluh! (40点です!)」と答える。

点数を報告するのは口頭での自己申告制。当然点数を偽ることもできたりする。
正直に答えた。自分には正直でありたい。偽った点数を報告したら何より自分の自分への信頼が揺らぎそうだ。
全員の点数を聞く限り、自分の点数はクラスで一番低かった。
実力不足。
去年は取りたい科目を履修することを最優先していた。
そのため、丸1年間インドネシア語に触れることはなかった。2年生までである程度固めた基本単語と文法で勝負するしかないと思いつつも実力不足を痛感する。

そもそもなぜこんなに間違ったのだろうか。

語彙力不足。文法知識の抜け。
いや、そもそも解き終わる時間がなかったからか。
解き終わる時間を予め知っていれば、もっとペース配分できたのではないか?
まぁ条件は全員同じか。
しかし、誰も終わっていないのにも関わらず、先に制限時間を伝えることなく解答を終了させた教授のやり方にはどうしても不満が残る。

自分が教授だったら、、、

あらかじめ問題を解く時間を学生に伝える。
学生の様子を見ながら、演習時間を臨機応変に変える。
少なくともクラスの半分以上が解き終わった様子が見られてから時間を切る。

あらかじめ時間が決まっていた方が、集中して取り組めるだろう。
解き終わっていない問題の解説を聞いても理解を得れないかもしれない。
学習の効果という面ではいまひとつだろう。

点数や評価という面では同じ条件で演習が行われた。評価は平等ではある。でも、学生のペースを無視した教授の進め方には強引さを感じる。シラバス通りに進めることが教授の責務ならばまぁ仕方がないかとも思うが。

とはいっても大学の一授業。
改善案を整然と話したとして、、、、
周りからどう思われようがなんてことはないが、自分に嫌悪を抱くクラスメイトも出てくるはずだ。今後の授業が受けづらくなるのかも知れない。何よりそんなエネルギーを使いたくもない。
教授も快く思わないはずだ。
教授はインドネシア人。和を重んじているのは、授業の進め方から明らかだった。
そういった授業スタイルは全然嫌いじゃないし、むしろありがたく思う。できることなら穏やかな気持ちで授業に臨みたいのが本心だった。

授業終了のチャイムが鳴り不満を噛み締めながら教室を颯爽と後にする。

なぜこんなに不満の感情が湧くのだろうか。
たかが、といっては何だが、大学の授業の一コマでしかない。
自分の心に耳を傾ける。
するとある理由が浮かんだ。

必修のこの授業を取りこぼしたら留年は確実。今年の4月から働く予定の企業から頂いた内定も取り消される。そういった現実を背負いながら受ける授業に対し、自分は真剣であったのだ。

合理的でないこと、理不尽なことには頭がくるようになった。誰がどう思おうが関係ないという自分もいたりする。
自分はいつからこんな非常な人間になったのだろうか。

そういえば最近MBTIテストを受けた。
結果はENTJであった。去年の自分はENFJ。
どうやらこの一年間で自分の感情がかなり薄くなったようだ。
心を失ったのだろうか?
原因はなんだろう。

就活か?できる人間であろうとしたその反動なのかもしれない。
あの頃はなんだかんだ自分を演じていた自分がいた。

心を取り戻さなければと直感的に思う。

腹が減った。

片耳にイヤホンを装着し駐輪場へ足を早める。
スマホをジャケットのポケットから取り出しSpotifyを開く。
曲をかけすぐにポケットへしまう。


預けらんない さよなら
君までも 朽ち果ててしまう気がした
幻みたいな滑稽を 探しまわった夏
今日で 乾いてしまうなら
君が返した 雫は僕を
困らせて 許してくれて
繰り返し目を覚ました 痛くなる度


ずっと真夜中でいいのに。

Have a great day.


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