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ちょっと疲れただけ…

名前はミーコ。
この家のキジトラミックスで、保護猫としてここにやってきてから早くも1年が経つ。
私の日々は、大体が窓辺で日向ぼっこをしたり、家の中を探検したりすることで過ぎていく。
けれど、今日はいつもと少し違った。

今日は3月18日、月曜日。

外は曇り空で、春を感じさせるような暖かさも、冬の寒さもない、どこか中途半端な天気だ。
人間たちはこの時期、花粉症に悩まされるらしいが、幸いなことに私は猫なので関係ない。
それでも、人間たちがくしゃみをしている様子を見るとなんだか気の毒に思えてくる。

特に今日は、いつも朝早くに出かけていく飼い主のおじさんが、会社を休んで家にいた。
いつもは見られない平日の彼の姿が新鮮で、私は少し興奮してしまった。
おじさんが言うには、「ちょっと仮病。
ちょっと心の病気である。
ちょっと息抜きしたかっただけ」とのこと。
私にはその込み入った人間の感情はよくわからないが、おじさんが少し元気なさそうに見えたのは確かだ。

おじさんはこのストレス社会に疲れているらしく、40代という年齢もあってか、何かと重圧を感じているようだ。
それでも、彼は私にいつも優しく、私がこの家にやってきてから、彼の表情が明るくなった瞬間も何度か見た。
私はそんな彼を励ますことができる唯一の存在かもしれない。

今日は一日中、おじさんのそばにいた。
彼がソファに座っていると、私はその膝の上に飛び乗り、ゴロゴロと喉を鳴らしてみせた。
おじさんが何か悩み事をしているときは、私のこの姿が少しは彼を癒してくれるのではないかと思う。
彼が私の頭を撫でると、その手が少し震えていたことに気づいた。
人間の心というものは複雑で、私には理解できないけれど、そんな時でも彼が私に触れることで少しは安心するのではないかと願っている。

午後になって、おじさんは久しぶりにデスクに向かい、何やら書き始めた。
私はデスクの隅に小さく丸くなって、彼の作業をじっと見守った。
時々、彼が私に目をやりふと笑顔を見せる。
その笑顔が、この家の小さな幸せの瞬間だ。

夜、おじさんは私に向かって「ミーコ、今日は一緒にいてくれてありがとう。
君がいるから、何とかやっていける気がするんだ」と話しかけてきた。
もちろん、私にはその言葉の意味するところはすべては理解できない。
しかし、彼が私を必要としていることだけはよくわかった。

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