誰かのエゴがうまくはまって社会が回る『ラストマイル』をみた
物流業界最大イベント、ブラックフライデーの前夜、大手ショッピングサイトの配送段ボールが爆発する。日本を震撼させる連続爆破事件に発展する中、巨大物流倉庫のセンター長に就いた舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と事態を収束させようと試みる。
塚原あゆ子監督と脚本の野木亜紀子がタッグを組み、TVドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界線で展開するノンストップサスペンス。
アンナチュラル、MIUどちらも熱心に追っていた者として(野木亜紀子作品はすき)、公開初週は逃したくなくて映画館へ。
彼女ら彼らの登場、各話ゲストの出演などなど、ずっと見ていても飽きない良さがあるのはさておいて、今回のラストマイルチームもめちゃくちゃ良かった。
キャストが良かったのはもちろん、ストーリーも個人的にはぶっ刺さり。
満島ひかり演じる新任のセンター長エレナの決して泥くさく映らないのに、頭フル回転で最良の現場判断が下せるところとか、(別脚本作品ながらカルテットのすずめちゃんを思わせる)芯が通ってるはずなのにそうは見せないおどけた姿とか。
本人は「いろいろ」あった後だけれど、ものすごく魅力的だった。
そういう映画では全くないのだけれど、あ〜なんかこの現場のヒリヒリ感たまんないな、わたしも頑張ろ、と思えた。
エレナがニューヨーク市場がひらくまで耐えることを選んで、とんでもないエゴだ、と思うけど、それは彼女たちの持つ大きな物流市場を止めないことが彼女たちの会社でいうところのお客さまのために、につながるのだとその言葉に悔しくなった。
人命より利益を追うことが結果的に自分たちお客様のためにと回収されてしまうのか。
世の中きっといつもそうだ。
どこかの会社誰かのエゴが、誰かのためになってそれが当たり前になって、
配送会社みたいに皺寄せがいって、誰かが天狗だって言われて、でもそれなしでは暮らせなくて。
社会すぎるよ。
本編、本筋、
山崎佑と筧まりこの関係は深くて、深い。
ふたりとも自分の身をもって実験していた。
最悪死ぬかもしれないのに、そんなことよりもう何も見えなくなって/覚悟が決まっていて。
自分がどうにかなっても/なったらそれが止まれば/遂行されれば成功だから。
こんな覚悟、物語だとしてもあまりにリアルで息が浅くなった。
結局みんな自分のことは多少可愛いんだから、相当自分なんてどうでもいいと思わないと実験台になんてなりたくないはず。
それでもやり切った覚悟、褒めちゃいけないけど無駄にもしちゃいけない、絶対ダメなことだったって周りが気づいてあげないといけない。
まだ何回だってみたい、何回だって気づいてあげたい。