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2019年前半の美術展感想まとめ

twitterやインスタでぽちぽちと呟いていた、2019年前半に行ってきた博物館、美術館などの感想まとめです。


2019/6/22 Meet the Collection ーアートと人と、美術館 展

4/13〜6/23 横浜美術館

ふと期間が明日までだと気付いて、急いでその日の夜行ってきた展覧会。
横浜美術館の所蔵作品から絵画、写真、彫刻、版画などの多岐に渡る400点余りの作品+4人のゲストアーティストの作品の展示、最高でした

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セザンヌとピカソとブレッソンとキャパとモローとダリとカンディンスキーと鏑木清方と駒井哲郎が一緒くたに観られる機会なんてそうそうなく、最初から最後までとても楽しんで観れました。

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横浜美術館のコレクションの幅広さに改めて吃驚。欲を言えばもう少し写真作品が観たかったな。

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今津景さんとシュルレアリスムコレクションの展示の部屋がほんとよい空間だった。

展示の一部(1〜5章)は「Meet the Collection ―アートと人と、美術館」展終了後も9/1まで展示されるようなので、現在開催中の「原三溪の美術」展のついでに観ることも可能です。もう一度観れるの嬉しいな。


2019/6/6 ルート・ブリュック展

4/27〜6/16 東京ステーションギャラリー

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フィンランドを代表するアーティストの一人であるルート・ブリュックの素朴な絵柄の陶版作品からセラミックタイルを組み合わせた幾何学的なスタイルまで、200点近い作品が観れて大満足の内容でした。

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個人的に好きなのは陶版の家シリーズにレリーフ(イコン)のシリーズ、代表作の一つでもある《都市》、展示の最後にあった《春の雲》と《レリーフ》。インスタレーション要素が強くなった後期の方が好みですが、斜めや横から見たときの陶板の厚みや柄もよくて、どの作品も様々な角度から眺めて楽しめる展示でした。

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この厚みや質感。写真では味わえない実物の魅力がたまらない。

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会期前半は全フロア撮影OKだったようですが、シャッター音の苦情などが出たようで、自分が行った時は撮影できるのは3階の陶版作品のみになってました。


2019/6/1 ドービニー展 

4/20〜6/30 損保ジャパン日本興亜美術館

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初期から晩年までの風景画60点、版画集の原板、関連画家の風景画に加え、彼が改造してアトリエに仕立てた小舟「ボタン号」の模型もあり充実した展示でした。(ちなみにモネのキッチン2巻の8話でモネが欲しがっていたアトリエ舟は、ドービニーに倣ったもの)

ドービニーの作品をこんなにまとめて観れる機会は大変貴重なので、ドービニー展やることを知った時は本当に嬉しかった…。穏やかな水辺の風景を描いているのは初期からだけど、60年代頃からタッチが生き生きしていく変化が見てとれて興味深かったです。「ボッタン号」や「森の中の小川」が特に好き。あと「オーヴェール(略)の鷭」の板の木目を活かした絵も面白かった。

会場の一階でも流してたこのアニメーション見るとドービニーがどんな人か、彼が活動した時代がどんな感じだったかがわかりやすいです。絵もかわいくて素敵。モネや印象派の画家たち(かわいい)やナポレオン3世(かわいい)もちょっと出ますよ。

入り口にあったドービニーとカエルのパネルも可愛かった。

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2019/5/16 女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし展

4/6〜5/26 渋谷区立松濤美術館

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江戸時代に生きた女性の「くらし」の様相を、美人画や春画、着物や化粧道具などからみていく展覧会。

浮世絵などを通して見る江戸時代の女性たちの暮らし、というコンセプトの展示でありながら、キャプションや図録で浮世絵に描かれなかった人々(士農工商の下に置かれた被差別階級の人々)や、ほとんど描かれることのなかった光景(近世期では穢れ、不浄ととらえられていた「出産」※)についてもきちんと触れられていたのがとてもよかったです。

「浮世絵」という商品の中で「鑑賞、購入する価値のあるもの」として描かれた、華やかで美しい女性像。それらを見つつ、その裏で描かれなかった数多の女性たちの姿に思いを馳せる展示でした。

※出産の光景は描かれたとしても、華やかな調度品に囲まれ、妊婦はほんのりと笑みを浮かべる、という極度に美化された形だった


2019/5/6 印象派への旅展

4/27〜6/30 Bunkamura

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海運業で財を成したウィリアム・バレルが収集しグラスゴー市に寄付したバレル・コレクションの中から西洋近代絵画を中心に73点、ケルヴィングローヴ美術博物館から7点、合わせて80点の作品(そのうち76点は日本初公開!)が一堂に展示された展覧会。

クールベ、ブーダン、ドガ、マネ、ルノワール、シスレーなどの19世紀フランスの静物画と風景画が中心と渋めのラインナップだったけど、印象派の絵画以外にもメルヴィルやクロホールの素晴らしい水彩画がいくつも見れて満足。

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ブーダン『ドーヴィル、波止場』

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ブーダン『トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー』(部分)

開幕から間もないので、連休中でも混雑してなくて見やすかったです。いつもは1、2点しか見れないブーダンの作品がまとめて観られて満足でした。


後日、展覧会の公式サイトにコメントを寄せさせていただきました。

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_burrell/topics/photospot_nishiura.html

記念講演会のレポートもブログに書きましたのでよければどうぞ



2019/5/2 写真の起源 展・戦禍の記憶 大石芳野写真展

3/5〜5/6、3/23〜5/12 東京都写真美術館

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「写真の起源」展はその名の通り、18世紀末から研究が始まり、1839年に最初の技術が発表されることで幕を開け、文化として広がっていった初期写真の歩みを捉えた展示。

19世紀英国で発明されたカロタイプを始め、写真黎明期の貴重なプリントやネガの実物をたくさん観れてよかった。ダゲレオタイプの実物をちゃんと見るの初めてだったけど、細部まですごく綺麗に撮れるんですね。金属板に焼き付いた170年前の精緻な像、本当に美しかった…。


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「戦禍の記憶」展は報道写真家の大石芳野さんによるベトナム、カンボジア、コソボ、スーダン、広島、長崎など世界各地の戦争に巻き込まれた市民たちの姿を捉えた写真展。

戦争は終わった後も、人々の心や体に傷を残し、彼らの人生を大きく変えてしまうことをまざまざと見せつける写真たちに圧倒されました。

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2019/2/21 インポッシブル・アーキテクチャー展

2/2〜3/24 埼玉県立近代美術館

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タトリンの《第三インターナショナル記念塔》に始まり、20世紀以降の様々な理由で実現しなかった建築プロジェクトの図面や模型、資料などを集めた興味深く濃い展示。建築の知識が殆どない自分でもとても楽しめた展覧会でした。

展示のラストには、記憶に新しいザハ・ハディッド+JVの新国立競技場の資料も展示されているのですが、模型や映像以外だけでなく膨大な量の申請書類や構造性能の評価書も一緒に陳列されていて、「綿密に設計され、実現可能だったはずの案を不可能にさせたのは何だったのか?」と問いかける熱がすごくて圧倒された。

また、常設展のMOMASコレクションでモネが17歳の時に描いた油絵《ルエルの眺め》を観てきました。ブーダンの《ノルマンディーの風景》と並べて展示されていたんですが、比べてみると植物の描き方や水面の反射などブーダンからの影響が絵の所々に見られて面白かったです。

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購入したポストカード。左がモネ《ルエルの眺め》、右は《積みわら》

MOMASコレクション、新収蔵品のシニャックも瑛九特集も良かった。瑛九の作品は初めて観たけど《花》がとても好き。自分で光量をコントロールして観れる《田園》も今までにない体験で面白かった。

優れたデザインの椅子を収集し、常時数十種類を館内に展示しているのもこの美術館の面白いところ。

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これはアーヴィング・ハーバー&ジョージ・ネルソンによる『ネルソン・マシュマロ・ソファ』なんと実際に座れます!
(2020/8/2追記:現在はコロナ対策のため、座れる椅子と見られる椅子を限定しているそうです。詳しくは公式サイトで確認してください)



振り返ってみると、2019年は頭から春頃まで原稿続きで引きこもっていたので、1、2月の展示を色々見逃してしまったのが心残り…

海外も国内も、機会を逃すとそうそう観に行けないものが多いので、気になった展示はなるべく足を運ぶようにしたいです。