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この本はこの本屋で

5月31日(金)

なんだかだるくて朝から家で仕事をしていた。このままではだめだと思い立ち、定時で退勤し夜の散歩に出かけた。出かけるまでには「家にいた方が安上がりなのでは」「夕飯の準備と掃除をするべきだ」「いや、土日にどうしてもあの本が読みたい!」という葛藤が。散歩ごときでも私は選択肢をたくさん並べないと行動に移せない、筋金入りの優柔不断だ。一人暮らしをするかどうか悩んでいた時、彼が一緒にメリットデメリットを裏紙に書いて整理してくれたことを思い出す。どうせ悩んだ時はやりたいことなんだから、やった方がいいのに。今日も頭の中をあらゆる選択肢と理由が渦巻き、どうしたらいいかわからずクローゼット前でうずくまって10分程してようやく立ち上がり着替え始めた。どうしても今日をいい日にしたかった。テレワークの日でもいつもコンタクトだけは入れるようにしている。「眼鏡だし…」というしょうもない言い訳をその日の私にさせないためだ。

最近推しの本屋さんができた。いわゆる独立系本屋さんで、フェミニズムをはじめとした私の好みにビシバシ刺さる本が揃っている。発売前からずっと楽しみにしていた柴崎友香さんの『あらゆることは今起こる』、行動圏内の本屋さんにはなくダメ元でkindleで購入しようとするとまだ電子書籍にもなっていなかった。数日後SNSで流れてきたその本屋さんの入荷情報にちゃっかりとラインナップされており、好き度と信頼度がマシマシになった。だから、どうしてもこの本はこの本屋で買いたいと強く思った。想いをもって個人で本屋を営む方々にちゃんと応えたい、と最近は本を買う場所も選ぶようになった。

満を持して到着すると定員オーバーで外で待つことに。その後もう1人仕事帰りであろう方が私の後ろに並び、ご近所さん二人組が通り際に「ここ本屋なのに列できてるよ、すごいねえ!」と驚いていた。お店の認知に貢献できた気がしてなんだかうれしいような。

店の中に入りお目当ての本を確保。この本屋さんの惚れポイントとして「陳列のセンス」を挙げたい。関連しているようなでも全く違うような、目移りがとても楽しくワクワクする。読みたい本、読まないといけない本が勢ぞろいしているが、2冊に収めてお会計。購入した本と一緒にちゃんと目を通したくなるような興味をそそるフリーペーパーを渡してくださる。それをきっかけに2,3言会話できるのがうれしい。店に着いてから出るまで、ずっと口角が上がっていたと思う。

なんだかこのホクホクを昇華するために、歩いたことのない道を歩きたくなった。行きとは違う駅へと歩いていると、こじんまりとした温かさ満載のパン屋さんを見つけた。明日の朝にいちじくパンとスコーン、そしてパンの耳でできたかりんとうを購入。いつもなら夕飯を食べている頃なので相当おなかが空き、ついつい帰宅するビジネスマンとすれ違いながらもかりんとうを食べる。食べる時にしてもないのにマスクをずらす仕草をしてしまい、恥ずかしくなってちょっと早歩きになる。外で何か食べながら歩くなんていつぶりだろうか。

先日山内マリコさんのイベントに参加しその御髪の美しさに憧れ、明日は久しぶりに髪をバッサリ切る。髪型も読む本もその本を買う本屋さんも、優柔不断な私だからこそ「ときめき」を大事にしたい。自分を形成するものに妥協はしたくない。


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