私が「国産」和漢にこだわる3つの理由_前編
和漢のセルフケアブランドMEGURIEを運営してる株式会社ハピラボ代表の瀬戸と申します。MEGURIEでは国産の和漢原料にこだわりお茶やスキンケアなどの商品をつくっています。
国産なんて別に珍しくもないと思われるかもしれませんが、こと和漢原料という分野でいうと国産にこだわるのは非常にハードルが高いのです。
このnoteではその理由と、それでもなぜ国産にこだわるのかについてお伝えできればと思います。
国産和漢は2割程度しかない
漢方薬の原料にもなる生薬(和漢植物)は、主に植物の草根木皮を乾燥させつくられます。薬としてしか扱えない専ら医薬品の生薬と、食品としても扱うことができる生薬(食薬)と少し用途が異なりますが、国内で流通している生薬の8割は外国(主に中国)からの輸入に頼っています。
国内で賄えているのは2割程度ということになります。
国産生薬の歴史_なぜ国産は増えないのか?
今は自給率2割程度ですが、かつては日本の生薬栽培は盛んで様々な品目を輸出していたそうです。
例えばオタネニンジン。朝鮮半島から渡ってきた朝鮮人参は、徳川吉宗の命で幕府により栽培が奨励されるようになり、「将軍より賜った種」という意味でオタネニンジンと呼ばれるようになりました。
それまでは大変な貴重品だったオタネニンジンを、幕府と指導と農民の努力によって輸出できるほどの品質までに向上させ、かなりの量を輸出していたそうです。盛んな国産生薬の栽培状況は戦後も続き、1950年-1960年頃にピークを迎えます。
ところが、1972年の日中国交正常化以降、安価な中国産生薬が大量に輸入されるようになり、国産は競争力を失い急速に衰退してしまいます。現在のオタネニンジンの栽培戸数は当時の18分の1程度まで減少してしまっているのだとか。さらに、日本固有の品種であった生薬の種苗が持ち出されて中国で生産され逆輸入されるといったことも発生しているそうなのです。
日本では明治維新の際に漢方を医療と認めず、漢方が衰退してしまった歴史がありますが、1976年に医療用漢方製剤が保険適用されるようになり、日本国内での需要は急速に増加してきます。
ところが需要が増加したときにはもう、日本の生薬栽培は衰退していて中国産に頼らざるを得ない状況です。
別に安い中国産に頼っていればいいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、もはや中国産も安くはありません。中国国内でもニーズが高まっていたり、乱獲などで稀少になっているものがあったり…輸入価格は年々上昇しているのです。
こういった経緯により、国産生薬を増やしていこう!という声は10年ほど前からあるものの、なかなか進んでいない現状があります。その理由は大きく2つあります。
薬価の壁
まず大きな理由として薬価の問題があります。
薬価とは、医療用医薬品(医師が処方する医薬品)の公定価格のこと。保険が効く薬の値段は全て国が決めています。医療用漢方製剤が一般的に用いられるようになった一方で、薬価は年々引き下げられてます。
薬価が下がり続けている中で、生薬メーカーや卸売業者も利益を出さないといけない。となると、仕入れ価格を下げるしかありません。結果的に生産コスト以下の価格で販売しなければいけなくなり、生薬栽培では成り立たなくなってしまう。
生産コストよりも流通コストの方が掛かってしまう、というのがまず大きな原因です。
ノウハウやサポートがない
一度衰退してしまった生薬栽培を昔のように盛り上げよう!というのは容易ではないようです。
農作物としては特殊ですので栽培のノウハウが必要になりますし、薬として出荷するなら日本薬局方に適合しなければいけません。(有効成分の含有量が○%以上など決められた成分の決められた量以上を含む必要があります)さらに、そもそも作ったところで売り先がなければ意味がありません。
課題解決に向けた取り組み
こういった様々な課題の解決に向けた官民の取り組みとして、生薬・薬用植物の産地化に向けたブロック会議や生産者と実需者のマッチングなども行われています。
3年間に渡り行われたブロック会議の参加者は年々増加傾向で、耕作放棄地や山間地の活用、地域の産業育成などの目的で生産に関する関心は高まっているようです。ですが、これらの取り組みが行われていたのは2016年頃。6年たった今もあまり状況は変わっていないように見えます。
2018年に起業したとき、国産の和漢原料を探していた私はご縁あって、一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構(JFPPA)の代表理事で千葉大学の渡辺教授と知り合いました。
JFPPAは国産生薬のさまざまな課題を解決すべく、漢方医師、薬学者、農学者、生産者などが横の繋がりを持ちながら生薬を含む健康・機能性植物を安定して供給できる仕組みを推進しようという団体です。
課題解決のために弊社が出来ること
弊社ができることは薬以外での生薬の活用です。私は薬剤師でもありませんし、生薬メーカーでもありません。「薬」としての漢方には立ち入ることはできませんし、立ち入るべきでもないと思っています。
私にできるのは、化粧品原料として使ったり、食品扱いできるものを活用しお茶にしたり、たくさんの方に興味を持っていただけるように活用方法や魅力を発信したりすること。漢方は薬を飲むことだけではありません。食や睡眠、入浴など暮らしの中の全てに活用することができるし、生薬や機能的な植物の力を借りて私たちの暮らしはもっと豊かになるはずです。
正直、まだまだコストが高い国産生薬ですが、それを使うことに意義があるし、国産が増えることこそが漢方がもっと暮らしに身近になるために大切なことだと信じています。微々たる活動ですが、国産生薬の生産・消費の循環の中で少しでもお役に立てればという気持ちです。
終わるかに見せかけて後半に続きます。
タイトルにある3つの理由について実は書いていませんが(笑)後半でまとめられたらと思います!
<参考文献>
薬園から学ぶ漢方生薬の国産化―薬用植物の効率的栽培とその将来性
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