第四話「途中下船」2024年4月30日火曜日 晴れ
私がこのカフェから退職する理由は、端的に言えば私の人件費が賄えなくなったからだ。
クッキーの供給とメニュー開発、コンセプトデザインは船長、そのサポートがN美さん。カフェのスペースとカフェスタッフとしての私の人件費はバラエティショップ側が持つ。このカフェはそのように始まった。
開業して半年。私はほぼワンオペで店舗運営を担当した。
順調にファンは着き、売上も右肩上がりであったが正直なところまだまだ赤字であった。
飲食店を創業して資金がうまく回転するようになるまで3ヶ月は必要、いや半年だとさまざまな意見があるが、私は1年は必要だと思っている。
全ての季節、地域のイベント、連休中のターゲット層の生活スタイルなどを経験して初めて回り始めるのではないかと思っている。都市部でない、郊外の住宅地なら尚更だ。
その一年をもたせられなかった。
誰のせいでもない。メンバー4人全員の読みが甘すぎた。
2024年4月30日付を持って、私はこの船を降りた。降りざるを得なかった。
元々のクッキーを製造する船長とN美さん、スペースと人件費を提供してくれた社長。私は自分の身体と労働力しか提供していない。船を降りるべきは私だ。
いや、途中下船だと自分に言い聞かせた。
どのような形になるかわからないが、またこの船に乗りたい。
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