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第十四話「船長へのプレゼン」2024年5月24日金曜日 快晴 真夏日

 健康食材カフェでアルバイトも4回目になる。洗い物や調理補助から盛り付けへと学ぶことも増えていく。10年近く飲食業で働いているが、体系的に学んだことはない。その店その会社のやり方に沿って働いていただけだ。飲食のプロフェッショナルとはどうしても名乗れない。
 メインになる肉料理や魚料理を彩り鮮やかな惣菜で囲むワンプレートランチが主力商品だ。日々変わる食材と料理。食材の色がかぶることのないように配置を考え、原価に合うように、しかしボリュームをつけて盛り付けていく。個々の惣菜だけでなく全体の見栄えも重要だ。スピードも然り。冷たい惣菜は冷たいうちに、温かい惣菜は温かいうちに。モタモタとしていたら生温いプレートになってしまう。
 以上の作業がなかなかに難しい。まだまだ訓練が必要だ。
 しかし楽しいことも事実だ。この歳で新しいことを学べるのはある意味幸せなことだ。この後の人生がどうなるかわからないが決して無駄ではないだろう。
 昼過ぎにあがって、船長のキッチン兼オフィスへ向かう。 企画したイベント「直売所+ワークショップ」の船長へのプレゼンのためだ。
 船長のキッチン兼オフィスは、都心近くの住宅街のマンションにある。電車では何回か乗り換えなくてはならないところだ。5月というのに真夏日。移動にはきついが久しぶりに船長に会えるのは楽しみだ。
 インターフォンを押すとコックコートを着た小柄な船長が笑顔で迎えてくれた。まさに焼き菓子の製造中であった。アポイントメントはとっていたとはいえ恐縮してしまう。
 早速、話し合いに入った。
 私の企画は閉業したカフェの常連さんへ向けての物だった。船長のお菓子がメイン、私のコーヒーはサブ的な位置付けだった。参加費もそのように設定した。
 船長は、

①プロのバリスタが講習するのであれば参加費はもっと高くていい。この価格は地域の勉強会の価格だ。

②2時間1回定員10人ではなく、1.5時間2回定員5人とした方が集客しやすい。

とアドバイスしてくれた。何よりも嬉しかったのは、

③バリスタの講習をサブとするのではなく、少なくともコラボという対等の立場にすべきだ。有資格者のコラボのほうが、私(船長)サイドにも有益だ。

と言ってくれたことだ。私を認めてくれているということだ。素直に嬉しいと思う。

 そのほか細かな点で協力できることを提案してくれた。願ったり叶ったりだった。
 しかし、コラボということはそれなりの内容が求められる。船長のお菓子に肩を並べるに足る内容だ。
 企画の練り直しが必要だ。
 忙しくなりそうだ。

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