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第十八話「初めての支給」2024年6月7日金曜日 快晴

 健康食材カフェのアルバイトの帰りに山手線沿線の飲屋街に降りた。
 ワインバルチェーンで独立した相棒の店に立ち寄るためだ。(『第七話「相棒?」2024年5月9日木曜日 雨のち曇り 晴れ』を参照)
 ワインバルチェーン本部と健康食材カフェでのアルバイトのシフトが固まり、その隙間に彼の店に立つことになった。まずは6月に2回入る。7月以降は未定だ。
 鍵の受け渡しの段取り、ちょっとした引き継ぎ、給料面での打ち合わせを終えた。
 もう一つこの街で用事があった。
 友人がやっていた飲み屋に行くことだ。
 その店は健闘虚しく閉業することにしたそうだ。肉料理に特化した店だった。美味しくて店主である友人のキャラクターもあって楽しいお店だった。残念だ。
 大きな火傷を負う前に適切な判断をしたらしい。それが何よりだった。
 とりあえず楽しく飲もう。赤星を手酌しながら、キムチ、ポテサラ、手捏ねハンバーグをツマミにして飲んだ。彼にもご馳走した。私がワインバルの店頭にいた時、彼からもよくご馳走になったものだ。
 楽しい夜だった。支払いはQRコード読み取りのキャッシュレスとした。キャッシュレス残高が足りないので、その場でチャージした。
 支払いを済ませ、彼との別れの挨拶をした。と言っても彼はもう1店舗持っている。そちらは健在だ。いつでも会えるのだから、別れの挨拶と言ってもただのじゃれ合いだ。
「遊びに行くよ!」
私は言った。
私が相棒の店を手伝うことを知っている彼も、
「サトウさんの夜に飲みに行きますよ!」
と言ってくれた。
 閉業する友人。失意の中にも明るさや強さがあった。よい友達を持ったものだ。胸の中で礼を言った。

 帰り道、念の為インターネットバンキングアプリで残高を確認した。
 増えている。
 明細を見ると、シヨクギヨウアンテイキョクから振り込まれていた。

 74,904円

 初回の失業手当。想像以上に少なかった。

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