記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

偏差値の断絶は55と60だけではない...?(塾講師による「二月の勝者3巻」読書会②)

自律学習サカセルの講師一同は、週刊ビッグコミックスピリッツに2018年より掲載されている漫画「二月の勝者」を愛読しております。
この漫画、綿密に取材され、中学受験業界を面白おかしく、とてもリアルに描写しているから塾講師が読んでもおもしろい。

そこで、自律学習サカセルの講師、三宅、増田、K・Mの3人によるこの漫画の座談会を通じて中学受験と中学受験塾業界についてご紹介したいと思います。(各講師のプロフィールは自律学習サカセルHPよりご覧ください。)

前回はこちら

灰谷みたいな講師の授業はうまいのか?

ーそれではここでキャラクターに焦点を当てていきたいと思うのですが...

増田:はい、はい、俺言いたいことある。

ーはいどうぞ。

増田:灰谷みたいなタイプは申し訳ないけど授業下手。

増田:僕、授業の準備一生懸命頑張ってますみたいな雰囲気が外に出ているやつは、基本的に授業みんな下手です。

増田:このタイプで授業上手かったらビビる。まともな人間一人も見たことないレベルだよ。もし自分はそうだっていう人がいたらサカセルに連絡ほしい。

ー授業準備をいっぱいしているアピールと授業が下手なことの論理的な繋がりはあるのですか?

増田:まず、「僕、これを日課にしてるんです。」みたいな感じで問題解きまくってるやつはアリバイ作りだったりとか、僕一生懸命やってますみたいなことを間接的に伝えるためにやってるやつが多い。皆さん見たことありますか?

K・M:うーん...あ、いました1人。

K・M:ちょっと色々問題がありましたけど...

三宅:授業準備ってもちろん最低限はするんだけど、むしろ授業中の対応力の方が大事だと思うし。まあ、でもある程度の準備だったり、今年のトレンドを把握しておくということは話の引き出しとしては大事かなあとは思う。

増田:やってる前提なんですよ。こっちは。それを。

増田:俺こんな解いててさ。みたいなことをしないんですよ。

三宅:まあ彼はたまたまファミレスで見られちゃっただけ、っちゃあだけだけどね。

ーちなみに塾講師の中でこういう講師同士のライバル意識みたいなのはあるんですか?

増田:ありそうだけど全くない。

三宅:うーん、まあ、授業の上手さ、下手さが点数化されるもんじゃないし。もちろんアンケートとかはあるけど、それは子供受けを狙ったかどうかという話にもなるんですよね。で、担当しているコースの平均偏差値とか、合格率とか出てくると思うけど、それも母集団によるものだしね。

増田:だからこの漫画、講師は現実味よりむしろケレン味を優先していると思うけど、実際登場させたらまずい人たちばっかりだから登場させてないのかもね。

中学受験の偏差値に潜む大きな断絶?

ーちなみにまた作品内のフレーズで聞きたいことがあるのですけど、「偏差値55と60の断絶した崖道」というのは現実でも実感できることですか?

K・M:これは私的にはとてもしっくりという感じですね。四谷大塚系の模試で算数が55でピタッと止まっちゃう子って結構見てきたんで。

三宅:SAPIXでも5刻みで、50,55,60,65,それ以上と。その壁っていうのは明確にある。

ー壁を乗り越えるために必要なものって何なのですか?何が鍵なのでしょう?

三宅:例えば、SAPIXの算数の話をすると、55までは努力でどうにかなる。元々の成績が悪くてもどうにかね。60の壁になると、厳しくなってくる子がいて、そうではない子は計算の正確さか、その場での発想力か、それともスピードか、どれかが伴っていれば60まではどうにかなる。でも65になると、そのスピードだったり、正確さだったりそれらのうち2つを備えていなくてはならなくなって、それを超えてくるとなると才能の世界になってくる。

三宅:どうしても5ずつくらいで、まず一定数が脱落し、次にスピードとか正確さとか処理能力の組みが脱落し、それよりも上の段階で、頭がいいか普通かの組みで脱落していくという壁があるよ。

K・M:ありますね!絶対にありますね。四谷系の模試でも。

増田:国語もありますね。

増田:記述真っ白にする生徒で偏差値60以上の生徒はいません。で、記号問題を正解できていても、人間だから全問正解を毎回できるわけではないんですよ。SAPIXで言うところの12中の△3点とかで偏差値58くらいを取ることができるんですけど、60以上になると今度、あれだけ抽象的な答えを求めるSAPIXで△3点だったところにしっかりしたものを書かないといけない。

増田:結局それって、文作ったりする能力もそうなんだけれど、元からあるものが関係するんですよね。

三宅:でもうちではどんな子でもSAPIXで偏差値55までは取らせてあげるよ。

増田:三宅先生その辺プロですよね。5年の後期55プロですから。

三宅:最初どんな成績でもそこまでの夢は見せられる。

三宅:実際この55の壁はどのテストのどの科目でという所は注意が必要かな。

K・M:首都圏模試とかだったら話が別ですよね。

増田:一応作品内では渋谷大崎の合格不合格でしたっけ。

ーしかし、漫画に登場した断絶に追加して50にもあるんですね。

三宅:そこはそもそも勉強しているかどうかの断絶。

K・M:そうですね、ちゃんとまともに勉強していれば、50は超える。

三宅:50の断絶は50cmくらいの幅しかないで。

増田:国語だと漢字できない子とかですね。やっても覚えられない子もいるので何とも言えないですけどね。自分でやっといてほしいことができない子は50いかないですね。いろんな理由があるんだとは思うんですけど。

三宅:この断絶、はじめは50cmで次1m50cm、次2m50cmという感じで段々幅が広くなっていく。で、最後はどうあがいても飛び越えられない断絶があると思う。

三宅:この話も但し5年生後半くらいまで...

三宅:6年生になったらまたちょっと違うんだけど、言い出すとキリがない。

ー大内さんと福島さんが成績が下がったり、前の巻で気持ちが切り替わった生徒の成績があがりましたが、この6年の前期に成績が落ちた時に気を付けないといけないパターンはありますか

増田:例えば6年の最初にクラス落ちするのは別にいいんですよね。 ただ、早稲田アカデミーで言うなら6年の夏期講習の時にクラス落ちするのはまずい。一回クラス落ちるなら、この段階くらいで落ちておいてほしいかな。

三宅:成績落ちる要因というところの話をしていくと、ここははっきり言って地力の差が出てくる時期。なんでかというと、5年の後半までは覚えたら成績が作れる時期、でも6年に入ると今までに理解したことを前提にして、そこから各単元を深堀していくことが多い。ただ、掘り下げていくだけの能力がない子はついていけなくなっていく。

増田:算数はそういう感じでしょうね。

K・M:まあでもボス女子の今川さんは単純に勉強してなさそうですけどね(笑)

増田:あ、彼女はこのままだと落確!

K・M:自分のそう思います!0%(笑)

増田:他の生徒は今のところ掘り下げが無いから因果関係が分からないまま、成績が落ちましたってだけで、よくわからないかな。

ーそういえば作品に出てきた「1点きざみのクラス分けの方がクレームが来ない」というのは本当なのでしょうか?

増田:これは本当にその通り。

増田:うち点数で切ってますと言った方がクレームは来ない。

三宅:親御さんにとっても何よりも明確な基準じゃない?

K・M:政治的理由が入るとめちゃくちゃ電話来るんですよ。ごね得だから。

三宅:「この子は頑張ってるから上のコースに残してあげよう」とか、本当は役に立たない。

増田:電話にはどこも会社で基準があるからしょうがないと言って終わり。

K・M:早稲アカだったら例えばSS資格が点数で切られて、どうしようもないですよね。むしろその時、成績をあげるためにどうすればいいですか?という内容の電話は来ますけどね。

ーちなみに点数を刻んだクラス分けにすることによる生徒側の変化はあるのでしょうか?

増田:上にあがりたいみたいな気持ちよりも、上の成績取ってる生徒がなんで上のクラスにあがらないんですか?ということはあるかも。

増田:例えば3クラスあって、偏差値60取ってる子が、2番目のクラスのトップにいたとします。その人が「60取ってるのになんで2番目のクラスなんだ」みたいなということを言ったりはしますかね。ときどき、クラス分けの点数出してない時は後何点足りなかったんですか?とかある。

増田:あと、名前違うコースに入った時が多分生徒としては一番うれしいんですよね。SAPIXのαとか。だから多少モチベーションにもなっていると思う。

増田:ここでクラスの基準が曖昧だと、生徒のケアしているように見えて首絞めちゃうんですよね。

三宅:先生の主観が入っちゃうからな。

増田:面接で試験落とされたみたいな気分になるんですよ。だからごねるんですよ。

---

ということで、今回は偏差値の断絶、クラス分けの方法などについてサカセルで話した結果、

偏差値による生徒の成長の断絶は存在するが、それは55から60の間だけではない。そして、その断絶ごとに断絶の理由が異なる。
クラスを1点きざみで分けるとクレームが減るというのは本当!先生の主観がそこに入らない方がよいのではないか。

ということになりました。皆さんはどうお考えでしょうか?

次回からは4巻の内容についての読書会の内容に入ってゆきます!


個別指導・家庭教師の
自律学習サカセル

〒154-0001
東京都世田谷区池尻3丁目4-2 SSビル池尻901
Tel:03-5787-5563

HP:https://sacacell.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?